テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
るか
157
※ほぼShozmです。zmさんがただひたすら可哀想なお話です。Shoさんがかなりキャラ崩壊してます。かなりヤンデレ気味。
赤い糸が見えたり、動いたり現実じゃありえないような話です。
ある日の放課後。
ゾムは教室の中央の席にぽつりと座り、自分の左手を見つめていた。
小指の根元から伸びる太い朱色の糸は、腕を幾重にも巻き上がり、喉元を蛇のように締め上げている。先ほどから糸の強張りが増しているのは、グラウンドで部活に打ち込んでいるシャオロンの「早くゾムに会いたい」という焦燥が、時間とともに激しさを増しているからだろう。
今日はシャオロンと駅前のラーメン屋へ行く約束をしていた。シャオロンの部活が終わるのを教室でゾムは待っていた。
静寂に包まれた廊下から、トントン、と遠慮がちな足音が近づいてくる。
教室の前扉が静かに開いた。そこに立っていたのは、図書室の返却用ブックカートを押した一年のショッピだった。
Syp「……あ、ゾムさん….?」
ショッピがゾムの姿に気づき、動きを止めた。
ゾムもまた、予想外の来訪者に目を丸くする。
Zm「ショッピ……? なんでここに?」
Syp「あ、すみません。図書室の整理で、この教室の棚に戻す本があったんで……ゾムさん、まだ残ってたんすね」
ショッピは手に持った数冊の単行本を教卓の脇に置くと、少しだけ歩調を緩めてゾムの席へと歩み寄ってきた。
(……好きやなぁ、やっぱり)
ショッピの落ち着いた声、少し伏せられた睫毛、自分に向けられる優しい眼差し。そのすべてが愛おしくて、ゾムの口元に自然と笑みがこぼれた。
——だが、世界はそれを許さない。
ぐっ、と首元に容赦のない衝撃が走った。
zm「……グッ!?」
ゾムは喘ぐような悲鳴を漏らし、思わず胸元をかきむしった。
ゾムがショッピに心を寄せれば寄せるほど、そしてシャオロン以外の誰かに愛おしさを抱くほど、シャオロンの無意識の嫉妬が反応する。見えない赤い糸が狂暴な綱と化し、ゾムの気道をギリギリと潰しにかかったのだ。
Syp「……ゾムさん!?」
ゾムの顔から一瞬で血の気が引き、苦しげに体を丸めたのを見て、ショッピの目が大きく見開かれた。
Syp「ゾム先輩、どうしたんすか!? 急に……!」
zm「だい、じょうぶ……っ、平気、やから……」
指先を震わせ、浅く短い息を吐き出しながら、ゾムは必死に笑ってみせようとした。
Syp「平気なわけないでしょう! 全然大丈夫じゃないっすよ……息、できてないじゃないですか!」
ショッピの声が、珍しく感情露わに裏返った。
ショッピは迷うことなく手を伸ばし、崩れ落ちそうになるゾムの肩と背中を抱え込んだ。
体重を支えるように、身体を引き寄せる。
まるで、ゾムを抱きしめるような体勢。
「っ……、あ……ぁ、っ!」
肌と肌が触れ合い、ショッピの体温と香りが至近距離でゾムの感覚を支配した。
その至高の幸福感と引き換えに、首の糸はキツくゾムの首を締める。肉に食い込み、喉骨が軋む音が頭の中に響く。酸素が遮断され、視界が真っ白に明滅した。
苦しい。痛い。死ぬ。
けれど、ショッピの腕の温もりが愛おしくて、離れたくない。
矛盾する激痛と快楽の中で、ゾムの目からぽろぽろと涙が溢れ落ちた。溢れた雫がショッピのブレザーの肩口を濡らしていく。
Syp「……ゾムさん泣いてるじゃないですか!どこが痛いんすか!? 保健室……いや、救急車……っ、立てますか!?」
本気で狼狽したショッピが、ゾムを力強く抱え上げようとした、その時だった。
ガラッ!!!!
教室の後ろ扉が、力強く音を立てて勢いよく開いた。
Sho「——ゾム?」
部活を終え、汗を拭うタオルを首にかけたシャオロンが立っていた。
シャオロンの視線が、教室の中央に固定される。
自分の愛するゾムが。自分の運命であるゾムが。
見知らぬ後輩の腕の中で涙を流し、身体を密着させて抱き合っている——ように見えるその光景を、シャオロンの瞳が捉えた。
瞬間。世界からすべての音が消え去った。
困惑、裏切り、そして沸点を超えた猛烈な怒りと、ゾムを奪われるという焦燥感。それらがドロドロとした黒い泥となって、シャオロンの全身から溢れ出した。
Sho『なんで?』
『俺のゾムなのに』
『なんで触れられてるの?』
『誰だよそれ』
『許さない』
目に見えないその負の感情の渦が、糸を伝って一気にゾムの首へと奔流となって流れ込んだ。
カチ、と音がした。
Zm「ゥガっ……ヒュー……ッっっ!!!!」
これまでの比ではない、圧倒的な絞殺力。
空気はおろか、唾液を飲み込むことすら許されない。ゾムの体がショッピの腕の中で跳ね、痙攣するように硬直した。
Syp「ゾムさん!? ゾムさん!!」
ショッピの叫び声も、もはや遠くの出来事のようにしか聞こえない。
視界の端で、シャオロンが足音もなく、ゆらりとこちらへ歩いてくるのが見えた。その顔には、笑みとも怒りともつかない、歪んだ歪曲した笑みが張り付いていた。
Sho「……ゾム? なにやってんの、そんな奴と」
地底から響くような地鳴りのごとき低音が、静まり返った教室に落ちた。
大股で詰め寄ると、乱暴な手つきでショッピの腕を弾き飛ばし、意識を失いかけていたゾムの体を強引に自分の方へと引き寄せた。
Sho「ゾムは俺のや。触るな」
力任せに抱き寄せられ、ゾムの頭はシャオロンの胸元へと埋もれた。
シャオロンの腕が、折らんばかりの力でゾムの背中と腰を抱え込む。
——その瞬間、ぎりぎりと喉骨を軋ませていたゾムの首を締める赤い糸が、一気に弛緩したのだ。
Zm「……ハっ、……ヒューーッ! げほっ、ゴホッ……っ!」
気道が開かれ、冷たい空気が雪崩のように押し寄せる。ゾムはシャオロンの胸の中で激しく咳き込み、落ちていた酸素を必死に貪り吸った。
シャオロンに抱きしめられ、彼だけのものとして収まるった瞬間。シャオロンの所有欲が満たされたその瞬間だけ、この糸はゾムを解放した。
Sho「ゾム……!? 大丈夫か!? どうしたん、苦しいんか!?」
さっきまでの冷酷な瞳が一変し、シャオロンの顔には焦燥と嘘偽りのない心配が広がる。自分の腕の中で小さく震えるゾムの頭を撫で、背中を優しくさすりながら、シャオロンは必死に顔を覗き込んできた。
抱きしめる強固な腕の温もりと、優しくかけられる声。
自分を殺しかけていた元凶が、世界で一番自分を愛し、案じているという矛盾。肺に空気が満ちていく快感と同時に、胸の奥を抉られるような凄惨な絶望がゾムを襲う。
Zm「……だい、じょうぶ……っ、ちょっと……喘息、気味なだけや……っ」
かすれた声で、ゾムは必死に嘘を吐いた。
シャオロンの指先が、ゾムの目元に触れる。
Sho「喘息って……泣いてるやんか、ゾム。……あいつに、なんかされたんか?」
シャオロンの鋭い視線が、弾き飛ばされた位置で立ち尽くすショッピへと向けられる。
シャオロンの瞳には、明らかに殺意と嫉妬が混じっていた。
Zm「……ショッピは、何もしてへんよ……っ
ゾムは首を振り、シャオロンの腕の中から、少しだけショッピの方へと視線を向けた。
ショッピは拳を固く握りしめ、言葉を失ったままゾムを見つめている。その瞳には、自分の無力さへの悔しさと、ゾムへの痛々しいほどの心配が満ちていた。
こんなところにショッピを居させたら、シャオロンが何をするかわからない。
何より、これ以上ショッピを巻き込みたくなかった。
Zm「ショッピ……心配させてごめんな。……俺は、大丈夫やから……はよ、帰りな?」
ゾムは必死で呼吸を整え、ショッピに安心させるような優しい笑みを向けた。
Syp「……そう、っすか……」
ショッピは低く呟くと、ゾムを抱きしめるシャオロンの顔を、射抜くような鋭い視線で睨みつけた。
シャオロンもまた、底冷えするような冷酷な瞳で視線を撃ち返す。火花散る沈黙の中、ショッピは諦めたかのように深く拳を握り直し、ゆっくりと背を向けた。
Syp「……失礼します」
引きずるような足音とともに、前扉が閉まる。ショッピの気配が廊下の奥へと消えていった。
誰もいなくなった教室。
ふたりだけの時間が訪れた。
シャオロンの抱きしめる腕は解かれない。それどころか、ゾムを自分の中に閉じ込めるように、より一層強く抱き締める。
Sho「……あいつ、誰?」
耳元で、暗い静かな声が降ってきた。
Zm「……後輩、やよ……図書委員の……」
途切れ途切れに答えるゾムの首元で、朱色の糸がギシギシと嫌な音を立てている。
Sho「ふーん……。随分と、仲良いんやね」
シャオロンのその一言には、ドロリとした嫉妬と、取られるかもしれないという焦燥感が凝縮されていた。
途端に、首の糸がゾムを締め付けるように収縮する。
Zm「が、……あ、っ……!」
喉骨が音を立てて鳴り、視界が明滅する。酸素が完全に遮断され、ゾムの意識が途切れかける。
シャオロンの嫉妬を消さなければ死ぬ。
ゾムは倒れるようにシャオロンの胸元へと深く身を寄せた。
首をシャオロンの肩口に埋め、すがりつくように彼の制服の裾をぎゅっと掴む。
Zm「……ただの……後輩、やよ……っ。俺には、シャオしか……おらん……」
偽りの言葉。生き延びるための、悲しい降伏。
すると、一瞬で首の糸が嘘のように弛んだ。
Zm「……っはぁあ! ガっ、ハっ……!」
大量の空気が気道を駆け抜け、ゾムはシャオロンの胸の中で激しく息を吐き出した。
シャオロンはゾムが自分に寄り添ってきたことに歓喜し、満足感に満ちた笑みを浮かべると、ゾムの頭を深く深く抱きしめ直した。
Sho「そうやろ? ゾムには俺しかおらんよな。……大丈夫、俺がずっと一緒におるからな」
愛おしそうに頭を撫でるシャオロンの腕の中で、ゾムは絶望の涙を静かに流した。
コメント
1件
うわ、これ…めっちゃ怖いし切ない。赤い糸が嫉妬で物理的に首絞めるって発想がもうダメだわ。シャオロンの優しさと狂気の振れ幅がエグいし、ゾムが「俺にはシャオしかおらん」って泣きながら嘘つく場面、胸がギュッてなった。ショッピも良いやつすぎて、余計に辛い。続きどうなるんやろ…😭