テラーノベル
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ニヤリ、と余裕に満ちた笑いに背筋が凍る。
「魔王サマを叩こうとした女は初めてだぜ。……気に入ったぜ」
「きゃーー!! やだっ、放してっ! 助けて、コランくんーー!!」
「兄ちゃんのバカーーー!!」
バタバタといきなり騒がしくなった亜矢の部屋。
だが突然、オランが立ち上がった。
「……さて、オレはそろそろ帰るぜ」
え? と、亜矢は拍子抜けたようにオランを見上げる。
「帰るって、魔界に?」
「ああ。魔界の王ともなると、ヒマじゃねえんだよ」
さっきと言ってる事違うじゃないっ! と、亜矢は心でツッコミを入れるが、それを口にしてオランを煽るような事はしたくない。
「あばよ、また来るぜ。その時は……覚悟しときなぁ?」
意味深な言葉を残して、オランは部屋のドアから出て行こうとする。
「人間らしく、玄関のドアから帰るとするぜ。ヒャハハハ!!」
一人で笑いながらドアの向こうへと去っていくオラン。
魔界の王ともなると、自由に人間界と魔界を行き来できるのだろう。
なんだか、嵐みたいな人だった。
亜矢はどっと疲れるが、ある事を思い出した。
「……コランくん、すぐ戻ってくるから、ちょっと部屋で待っててね」
「うん! オレ、アヤの言う事聞くぜ!」
素直なコランの反応が嬉しく、でもどこか罪悪感をも感じる。
亜矢は玄関を出た。
すると目の前には、腕を組み、壁に寄り掛かっている死神の姿があった。
じっとただ、こちらを見ている。
「ずっとここで待ってたの?」
亜矢が静かに歩を進めながら、グリアの正面へと近付く。
「いや? そろそろ来る頃だろうと思ってよ」
さすが死神である。何でこうも、亜矢の心を読んでしまうのか。
亜矢がグリアの正面に立つと、ようやくグリアは腕を解いて亜矢を見下ろす。
亜矢はどこか視線を泳がせ、何か照れているのか、目を合わせずに言う。
「……その、今日は……一緒に来てくれて……」
亜矢が助けを求めて学校に行き、オランに迫られていた時に救ってくれた事。
何も言わずに、学校をサボって一緒に家まで来てくれた事。
今日は色々ありすぎて正面から言えなかったが。
「死神……」
亜矢は少しだけ顔を上げる。
グリアは一切の表情もなく、一方的に紡がれる亜矢の言葉を受けている。
「ありが……」
そこまで亜矢が言いかけた時。
フっと、亜矢の全身から力が抜けていった。
亜矢の視界に映る全てが、色を無くしていく。
倒れかけた亜矢を、反射的にグリアは両腕で支える。
「亜矢っ!?」
すでに、亜矢に意識はない。生命力が消えかかっているのが分かる。
(しまった、オレとした事がっ……!!)
すでに、前に『口移し』をした時から24時間が経とうとしていたのだ。
今までなら、命が切れかかると何らかの前兆が亜矢に起こっていた。
だが、今回は色々な事がありすぎて、亜矢の体がその前兆すらも認識する余裕が無かったのだろう。
だから今、こんな極限の状態になるまで気付かなかった。
「チッ……!」
グリアは場所も構わず、亜矢の体を支えながらその唇に自らを口付ける。
果たして、間に合うだろうか?
命が完全に切れてしまってから口移しをしても、意味がない。手遅れなのだ。
亜矢の唇からは何の反応も感じられないが、グリアは命の力を注ぎ続けた。
亜矢を抱き支える腕に、自然と力がこもる。
やがて、亜矢の瞼がゆっくりと開かれた。
うっすらと開かれた瞼から覗く瞳に、グリアの瞳の色が映る。
それに反応して、グリアは唇を離す。
しばらく、鼻が触れそうなその距離でお互いの顔を見合わせていたが。
亜矢の身体を引き離したのは、グリアの方からだった。
「死……神……?」
亜矢はただ呆然と、目の前の死神を見返すしかなかった。
コメント
1件
もうオラン、キャラ濃すぎて草w「気に入ったぜ」ってニヤリとかされると逆に怖いわ…。でもそんな中で「ありが…」って言いかけて倒れる亜矢、一気にシリアスになった。グリアが咄嗟に口移しするシーン、めっちゃ焦ってるのが伝わってきてこっちまでドキドキした。助かった後の見つめ合いの空気、何か言いたげで続きめっちゃ気になる!
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