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#ベリアン・クライアン
ぷち
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MAKO
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結局雪山の天候が落ち着くまで4日かかった。
館内放送で起床、3食の時間のお知らせ、就寝の時間のお知らせがあったので、ついつい本に集中してしまって食事や睡眠を忘れてしまうフェネスも3食食べてしっかり睡眠を取る事ができて健康的な生活を送ることができた。
と言うか、必ず誰かがフェネスが「1食くらい抜いてもいいかな」と思うことがあるだろうと思ったので本を手放さないフェネスを引き摺って食堂まで連れていき、無理矢理口に料理をねじ込んだし、寝る時間になったら図書館の明かりを落として寝る他無い状態を作ったりして寝かしつけた。
フェネスは毎度「そこまでしなくても…」と言っていたが、食事を抜こうとしていただろう?寝る間も惜しんで本を読もうとしていただろう?と言われて黙ることしかできなかった。
確かに仮眠室に本を持ち込んで眠くなるまでデスクの明かりだけを頼りに本を読んだりして寝る時間が遅くなった結果、朝の放送で強制的に起こされて目をしょぼしょぼさせながら、もそもそとパンを齧ることになっていた。
依頼中で、本来ならば寒さに震えながら吹雪が収まるのを祈ることしかできない状況であるはずなのに、温かく快適な屋敷で本に埋もれながら眠るという贅沢をさせてもらっているのだ。もっとノワールに感謝して明かりが落とされたらちゃんと寝なくては雪山登山を再開した時に体調を崩して足手まといになってしまうかもしれない。
フェネスはそろそろ吹雪が収まりそうだと言われた日の夜だけは明かりが落とされる時間になったらすぐベッドに入って目を閉じた。
ここで寝不足で動けません、だなんて状態になってしまったら屋敷で過ごした意味がなくなってしまう。
N「よし、皆準備はできたか?」
サロンの壁にかけられた鏡には青空と氷柱がみっしりと生えた洞窟が映し出されていた。
暖炉の火を消して乾いたコートやブーツを身に着け、今からこの鏡を使って避難先の洞窟にワープするのだ。
🧸「毎日美味しい料理を3食食べられた上にハウレスさんと毎日トレーニングできて、本当にラッキーでした!」
✝️「俺も意欲的にトレーニングに付き合ってくれて楽しかった。今度は模擬戦もやりたいな」
⚔️「うまい飯をたくさん食べられたのがよかったな。ロノにも今度食わせて新しいレシピを考案させたい」
🦋「つい本に夢中になってしまいましたが、これからもこの図書館に来られるんですよね?読みかけの本もいくつかあるので続きが気になってしまって…」
N「あぁ、ちゃんとケイトにそのことは伝えて図書室同士を繋げてもらうから大丈夫だ。図書室から食堂とかサロンまではちょっと遠いから、飯のために行き来するなら厨房にも鏡設置するか?」
⚔️「ふむ…それならロノも食堂で気軽に知らない料理を食べて研究できそうだな」
N「ただ、ぶっ倒れる執事が続出しないことを祈るしかないのがなぁ…皆勉強熱心だから寝ないで研究とかに明け暮れそうで怖いわ…」
ノワールの言葉に皆それは確かにそうだなと思った。やはり夜になったら強制的に明かりを落とすなどの対策は行ったほうが良いだろう。
とは言え仮眠室には読書灯があるため執事達が大人しくベッドに入るかどうかは保証できない。
時間になったら強制送還する魔法も入れてもらおうかな、とノワールがぶつぶつと呟いている間に身支度を終えた執事達が天候の落ち着いた鏡の向こうの洞窟を覗き込んでいた。
そう、今からが宝探しの本番だ。
N「よっしゃ、準備はいいか?もう繋がってるから鏡に入るだけで雪山に戻れるからな」
執事達を先に行かせてノワールも鏡に入り、洞窟の座標を一旦削除して現在地をリアルタイムで追ってくれるように魔法を弄った。
N「これでいつでもあの屋敷に戻れるから。野営面倒だったら夜の間だけ屋敷で過ごしてもいいぞ?」
✝️「それはありがたいですね。野営で風邪を引くのも嫌ですし、何より風呂に入れるのがありがたいですから」
🧸「夕飯だけでも美味しくて温かい食事を摂れるのも嬉しいですしね!」
🦋「それならテントを張る手間も無くて効率的ですね」
⚔️「素振りもできるし、火起こしもしなくていいから楽だな」
N「最初からこうしてればもっと楽に行けたのに何で思いつかなかったかなぁ…」
🦋「まぁまぁ、そんなもんですよ。実際遭難しなければ必要なかったんですから」
フェネスにそうフォローしてもらって、ノワールはようやく安心したように笑って鏡の表面に触れる。
鏡は水滴を垂らした水面のように波紋が広がって光った。
N「よし、行こうぜ」
ノワールがそう言って鏡の中に飛び込むと、白銀世界の洞窟の中にノワールの姿が映り込んだ。
執事達は内心ドキドキしながら鏡の中に足を踏み入れた。
まず感じたのが顔が凍てつくほどの寒さ。
暖炉を消していたとはいえそこそこの気温があった室内から急に氷点下の世界に行ったのだ。寒くてたまらなくて当然であろう。
⚔️「……寒い……」
寒さに弱いバスティンはマフラーに顔の半分を埋めて震え始める。
N「身体動かせば大丈夫だろ!フェネス、こっからの道は分かってるんだよな?」
🦋「は、はい!この先どんどん登って行くのですが、その途中に大きな崖があるので橋がかかっているところまで迂回しなくてはいけません。その崖は雪で見えづらくて毎年何人も滑落しているので気をつけないといけません。橋を渡り切れば宝物があるという洞窟まで半日くらいで辿り着けるかと」
N「よし、ならとっとと橋まで行こうぜ」
一面真っ白な雪の中、道とも言えない道を杖をつきながら歩いていく5人。
吐き出す息は真っ白で、耳当てをしているのに耳は痛いし、鼻も凍りそうだった。
干し肉をかじりながらただひたすら歩みを進めて、ようやく視界に橋が見えてきた。
暗くなるまで黙々と雪山登山を続け、橋までは辿り着けなかったが、あと1日あればなんとか宝物のある洞窟まで行けるだろうというところまで来た。
✝️「さて、もう暗くなってきたから、これ以上進むのは危険だろう。野営とお屋敷どっちがいいか多数決を取る。まずはお屋敷…」
ハウレス以外の全員が屋敷に手を挙げた。
✝️「……ということで、今晩も泊めていただいてもよろしいでしょうか?」
N「おう、いいぜ。飯の支度にちょっと時間かかるらしいから先に風呂で身体温めようぜ。こんな寒いのに汗かいてるしブーツもズボンもびしょびしょだし…」
というわけで自分の部屋(と言ってもカケラから出てしまったのでリセット済み)に荷物を置いてベッドの上に畳んで置いてある寝間着とタオルを持って皆で大浴場に向かった。
🦋「何度来ても広いですね…お風呂の種類も沢山ありますし、管理するの大変じゃないんでしょうか?それに初日に来た時から段々豪華になってませんか?シャンプーとかの種類増えすぎて置く場所なくなってません?」
フェネスは最初2、3種類くらいから選べるシャンプーやトリートメントにお金をかけてるんだなぁくらいにしか思っていなかったが、いつの間にか少しずつ増えていき今ではシャンプーやトリートメントのボトルが洗い場の一角を占領しているのを指摘する。
N「あー……それな……ケイトが試しに買ってみて髪質に合わなかったり匂いが気に入らなかったりしたのを見つけては置きに来てるっぽい」
🧸「おもてなしとかではなく…?」
N「うん…多分……。使いかけのやつが少しでも減ったらラッキー、くらいに思ってるんだと思う」
✝️「ま、まぁ、折角主様が使って欲しいということで置いてくださっているのですから遠慮なく使わせていただきましょう」
⚔️「そうだな……とは言え選ぶのも一苦労な気もするが…」
執事達は雑多なシャンプーとトリートメントの中からペアを探し出して、とりあえず使ってみることにした。
✝️「これは…ちょっと匂いが甘ったるいですね…」
🦋「椿のオイルは髪にいいって聞いたんですけど…なんかギシギシします…」
🧸「泡で出てくるタイプとかもあるんですね!なんか楽しいです!」
⚔️「蜂蜜入りと書いてあるが蜂蜜の匂いがしないような…?」
N「うわぁカオスな匂い…俺の愛用してるシャンプーも匂いキツめだからなぁ…」
風呂場の洗い場は甘ったるくて爽やかでフローラルな香りが充満してしまう。とりあえず洗髪を終えて湯船に浸かると、硫黄の匂いでシャンプーの香りはあまり気にならなくなった。
N「ここの風呂、全部別々の場所の温泉からお湯を引いてきてるんだぜ。源泉かけ流しだぞ。贅沢だよなぁ。こういうメリットがあるからケイトの側を離れられないんだよなぁ」
全員で白く濁った硫黄泉に入るとノワールが身体をぐっと伸ばしながら衝撃の事実を暴露した。
🦋「えっ!?全部のお風呂が温泉で源泉かけ流しなんですか!?そしたらお掃除とか更に大変なんじゃ…」
N「あぁ、そういう面倒なことは魔法でやってるから気にしなくていいぜ。すっごい汚したりしたら流石にある程度掃除しないとダメだけど、管理に魔法人形を使ってるからそれに掃除させればいいだけだし、何も問題ない。だから安心して好きな風呂楽しんでいってくれよ」
ノワールが露天風呂に行くと言って移動したので執事達は集まってひそひそと話し合いを始める。
🧸「なんかもう凄すぎてどこに驚けばいいのか分からないですね…」
✝️「あぁ…そうだな…まさかこんな数の温泉を源泉かけ流しで管理してるとは…」
⚔️「主様は本当に凄いんだな…一体どれだけの魔法を使えるのだろうな?」
🦋「このお屋敷全体も魔法で作ったって言ってたよね?それに沢山の客室に図書館にビュッフェスタイルの食事とサロンのお菓子の準備とか…本当にどうやって管理してるんだろう…」
改めてケイティの凄さを感じつつ、折角屋敷に招いてもらっているのだから楽しまなくては勿体ないという結論になって、各々好きな温泉に散って満喫することにした。
体の芯まで温まった執事達が脱衣所で用意されていた寝間着に着替えて髪を乾かしていると、ノワールも上がってきて浴衣を着て髪を乾かしに洗面所に向かって、うわっと声を出した。
N「ケイトのやつ、化粧水とかヘアオイルも使いかけを全部置いていきやがったな…」
確かにノワールの目の前の洗面台には隣にはみ出すほど所狭しとスキンケア用品やらヘアケア用品が置かれていた。
昨日まではこんなに種類はなかったのに増えているということは、ケイティがもう使わないから好きに使ってくれと言っているようなものだ。
ノワールはケイティの自由さに溜息を吐くが、執事達は興味津々で大小様々なボトルやジャーを手に取って匂いを嗅いだり手に塗ってみたりして楽しそうに笑っている。
まぁ執事達が喜んでくれているなら良いのかもしれない。ノワールはそう思って少し離れたところでドライヤーで髪を乾かした。
夕飯をお腹いっぱい食べてそれぞれ部屋に戻って、朝になると今日こそ宝物のある洞窟に行こうと気合を入れて防寒具を身に着けた。
🦋「現在地から目的地の洞窟までは1日あれば十分到達できる距離です。ただ、足場が良くないのと雪崩が多いので注意して進まなくてはいけません」
フェネスがノワールに地図を見せながら説明をする。確かに直線距離であれば半日で行けるだろうが、比較的安全な迂回路を通って行くとなると時間がかかりそうだ。
N「うーん…3人待機させて誰か1人を抱えて飛んで行ってもいいんだけどな…そういうズルはあんまりしたくないだろ?」
✝️「そうですね…できれば自分の足で登って洞窟まで行きたいです」
⚔️「俺もズルはしたくない。…と言いたいところだが、暖かい部屋から雪山に戻るのはちょっと嫌だ」
🦋「うーん…2人の気持ちも分かるなぁ…」
🧸「俺はズルするのも戦略の1つだと思います!」
一応皆それぞれ考えがあることは分かったが、ノワールは正直誰かを抱えて飛んで移動したほうが安全だと思った。そうすれば下山の体力も温存できるし、ここまで来て雪崩で死にましただなんて笑えない。安全に移動できる方法があるなら、あえて寒くて危険で面倒な徒歩で移動する理由はない。
しかし、これは悪魔執事達に依頼された事であり、ノワールがお節介をするのも違う気がする。
どうしようか話し合った結果、雪崩が起こったり足場が崩れたりした場合屋敷に避難してノワールともう1人が洞窟に飛んで移動することになった。
もし雪崩に巻き込まれても指輪の力で窒息死や転落死の危険は無いが、行方不明になったらケイティを呼んで探してもらわなくてはならないと言われると自分の足で、と言っていたハウレスも仕方ないと納得した。
5人は鏡に飛び込み、白銀世界に戻って足元に気をつけながら歩き出した。
天気が荒れることもなく、雪山登山はそこそこのペースで進むことができた。
そして、日が傾いて白銀世界がオレンジ色に染まる頃、無事に宝物があると言われている洞窟まで辿り着いた。
🦋「ここの洞窟で合っているはずですが…」
フェネスが地図を見ながら洞窟の中を確認する。
しかし、パッと見しただけでは本当に宝物がありそうには見えない。
✝️「ふむ…とりあえず奥まで確認してみるしかないな。もしかしたら違う洞窟の可能性もあるが、地図ではこの洞窟ということになっているんだろう?」
ハウレスとフェネスが先行して洞窟に入り、3人が後からついて行く。
N「宝物がもしデカすぎる物だったら収納空間に入れて持って帰るか?」
🧸「そんなに大きな宝物がこんなところにあるなら、どうやって運んだのか気になりますね!」
⚔️「大きな宝物…ロマンがあっていいな」
そんな事を話しながら洞窟の最奥に到着すると、岩に刺さっている1本の剣があった。それ以外は何もない。
🦋「これが…宝物?」
🧸「童話に出てくる勇者の剣みたいですね!」
✝️「それなら勇者じゃないと引き抜けないじゃないか。でも、雰囲気はそんな感じだな」
⚔️「とりあえずこれを持ち帰れば依頼は達成ということになるか?」
N「思ったよりしょぼいな。金銀財宝とか期待してたんだけどな〜」
とりあえず剣を持ち帰らなくてはいけないだろうということでハウレスが剣の持ち手を握って引き抜こうとするが、長い間岩に刺さっていたせいか抜けない。
✝️「ふんっ…くっ…んぎぎ…」
🦋「ハウレス、抜けそう…じゃないよね。どうしよう…」
N「本当に勇者の剣だったりしてな。とりあえず全員1回抜けるか試してみようぜ」
ノワールの言う通り全員が試してみたが誰も引き抜けなかった。
N「やばいな、持って帰れなかったら悪魔執事の信用に関わる…仕方ない、最終手段だ。周りの岩を砕いて取り出すぞ」
ノワールが宙に手をかざすとツルハシが手に落ちてくる。
N「おらっ!」
がきん!がきん!
ラトとでも同等にやり合える身体能力を有するノワールの渾身の打撃を受けても岩が砕ける様子はない。
N「ダメだ…岩も何かの術で壊せないようにされてるっぽいな。ケイトなら何とかしてくれるだろうから呼び出すか…」
ノワールは岩を崩すのを諦めてケイティに連絡を入れた。
K「お待たせ〜。宝物って剣だったんだね。で、それが抜けないし周りの岩も砕けない訳ね。ちょっと調べるから待っててね」
ケイティが岩と剣に施された術を解析している間、おまけでついてきたブランが温かい飲み物を執事達に振る舞い、床に寝袋を敷いて座って休憩になった。
⚔️「温かい…」
🧸「これって何のお茶?ですか?」
B「カモミールのハーブティーだよ。リラックス効果があるから休憩に良いかと思って」
🦋「それにしても氷点下なのになかなか冷めないね。普通なら数分で冷たくなってしまうのに…」
✝️「確かにそうだな。ずっと適温のままだ」
ちびちびと温かいハーブティーを飲みながらハウレスとフェネスが不思議そうに呟いた。
B「あぁ、それはね、飲み物を冷めにくくする魔法がかかってるカップを使っているからだよ。底に魔法陣が描いてあるでしょ?実用性よりデザイン性を優先したからただの模様にしか見えないかもしれないけど…」
執事達はそれぞれのカップの底をまじまじと覗き込んだ。
確かにただの模様にしか見えなかったが、魔法陣だと言われたら魔法陣に見えなくもない。
魔法って便利だなぁと感心しているとケイティが解析が終わったと声を上げた。
K「剣には一定以上の魔力を持つ者にしか抜けない魔法が、岩には物理攻撃無効化の魔法がかかってるみたい。つまりこっちの世界では本当に魔力の強い勇者にしか抜けない剣になってるんだね。でも私の魔力なら簡単に抜けるよ、ほら」
ケイティが剣を両手で掴んで持ち上げると、剣はあっけなく抜けた。そしてピカッと眩い光を放った。
K「うわっ眩しっ…」
執事達も兄弟も目を開けているのが困難なほどの光は数秒で収まったが、ケイティの持っている剣からはずっと蛍光灯レベルの光が放たれて薄暗い洞窟を照らしていた。
N「すげぇな。これ持って帰ったら部屋の明かりに困ること無くなりそう」
🧸「あれ?戦うとかじゃないんですね」
B「ノワールは変なところで現実主義だからね…」
✝️「ま、まぁとにかく、宝物も確保できたことですし下山しましょうか。主様、重くありませんか?お持ちいたします」
K「ありがとう。ちょっと重いよ?」
ケイティが剣をハウレスに渡すと剣の光は消えてしまった。
✝️「なんとも不思議な剣ですね…主様以外には扱えないということでしょうか?」
K「うーん…調べた感じ普通の剣としては使えると思うよ。長い間使われてなかったから研ぎ直しはしないといけないだろうけど」
🦋「まぁとにかく、宝物は見つかったのでこれで安心して下山できますね」
執事達がフェネスの言葉で安心したように笑う。
B「でも、もう日が落ちてるから動くのは危なくない?夕飯もまだでしょう?一旦お屋敷に戻ったほうがいいと思うんだけど…」
そこでタイミングよくバスティンの腹が鳴った。
⚔️「…夕飯は食べたい。それに寒い」
マフラーに顔を半分埋めたままバスティンはお屋敷に戻りたいと訴えた。
K「座標登録してるから今すぐパレスに戻ることもできるんだけど…それじゃ夕飯が間に合わないか。じゃあ一旦お屋敷に行こうか。そしたら夕飯後か朝にパレスに送ってあげるよ。私、部屋着に薄手の上着だけだから手足が凍りそうだし…お風呂に入って身体を温めたいわ」
ケイティがそう言って魔法陣を展開すると、いの一番に飛び込んでいった。
B「僕も薄着で来ちゃったから寒かったんだよね。夕飯は適当に食べるからお風呂に直行するね。ノワール、後はよろしくね」
ブランもそう言って魔法陣の中に消えると、執事達とノワールはとりあえず座布団代わりにしていた寝袋やお茶を飲んでいたカップを片付けてから魔法陣の中に入った。
執事達とノワールはもこもこの服や靴を暖炉の前に干して部屋着に着替え、食堂に向かった。
食堂ではほかほかと湯気を上げる料理の数々が壁沿に並んだテーブルの上に並べられているところだった。
料理を運んでいるのは真っ黒なドレスに頭部と顔を隠すように布を被った人であり、執事達は初めて会う使用人達を引き止めて数日間の礼を伝える。
しかし、使用人は一言も発することはなく深々と一礼してから立ち去ってしまった。
🧸「…何か気に障ることを言ってしまったんでしょうか…」
テディは去っていく使用人の背中を見ながら不安げに呟く。
B「いや、気にすんな。あれは魔法人形だから喋れないんだ。胸元に宝石がついたネックレスがあっただろ?宝石からケイティの魔力を貰って命令通り動くだけの人形さ。まぁ…使い勝手のいい使用人だとでも思ってくれよ。お前達の指輪にも俺の指輪にも人形に命令できる機能はあるから、何か欲しいものがあったり部屋の家具を変えて欲しいとかあったら、遠慮なく指輪に【人形に命ずる】って声掛けたら大抵のことはやってくれるぞ」
執事達は「魔法人形」というのがどういった物なのか、そして自分達が命令する立場なのだということを嫌というほど理解した。
✝️「……なんだか変な感じがするな…」
🦋「いつも俺達が命令される立場だからね…しょうがないよ」
⚔️「俺は飯が食えるだけで満足だ。命令はしなければ特に引け目を感じることはないだろう?」
🧸「ですね!とりあえず料理が冷めてしまう前に食べちゃいましょう!」
執事達とノワールは出来立ての料理を皿にとって食事を始める。ガツガツと料理を口に運ぶバスティンとテディとは対照的にハウレスとフェネスの手の動きは緩慢で、魔法人形達のことを考えているのはすぐに分かった。
特に気にすることないのに、とノワールは思ったものの何と声をかけるべきなのか分からなくて口を塞ぐように料理を口に運んだ。
B「はぁ、温まった〜」
K「兄さんお風呂長すぎるんだよ。髪の長い私のほうが先に上がるって絶対おかしい!」
B「サウナ入ってたんだからしょうがないでしょ?キティは髪のケアで洗面所に居る時間が長いんだからお互い様じゃない?」
そこにお風呂に向かった2人が戻ってきた。
ノワールは助かったと言わんばかりに2人を振り返り、魔法人形に気を使わなくてもいいことを証明してほしいと頼んだ。
K「…魔法人形に気を使っちゃうの?あんなのただの動くだけの人形だよ?」
B「そうそう、命令されないと動けなくなるから操り人形みたいなもんだし、感情も疲れとかもないからじゃんじゃん命令していいのに…」
2人は料理を皿に取りながら、魔法人形に気を使う執事達が信じられないといった様子で話し始めた。
K「本当に私の魔力で動かしてるだけの人形なんだよ?だから顔もないし命令したことしかできない。そんな存在に気を使うだなんて…あ、ローストビーフおかわり」
B「…キティは人使いが荒いから余計に執事さんたちと価値観の共有はできそうにないね…あ、この魚のムニエルもおかわり」
2人は執事達が好きなだけ取っていった料理の余りをちまちまと集めていたが、ほとんど綺麗に取り尽くされた料理のおかわりを頼み、少々多めに残っていたパンとスープをお盆に乗せて席についた。
K「まぁそのうち慣れるよ。だって……」
ケイティはそこで言ってはならないことを言いそうになったかのように口を押さえた。
B「キティ?」
N「ケイト?」
K「……ううん、なんでもない。とりあえずお腹いっぱい食べて、明日パレスとここを繋ぐ鏡を設置するんだったよね」
ケイティが言いかけたことは一体何だったのだろうか?
執事達も兄弟も不思議そうにケイティの顔を眺める。
K「もー、だからなんでもないってば!ほら、ローストビーフと魚のムニエル、おかわり来たよ?他に食べたいものあったら注文していいからね?」
それ以降ケイティは料理を口に詰め込むように食べて、明日も早いからとそそくさと部屋に戻ってしまった。
B「どうしたんだろうね、キティ…」
N「うーん…執事達をこっちの屋敷に住ませるつもりだ…とか?」
✝️「それでは天使狩りができないのでは…?」
🦋「でも、主様の力があれば天使なんて余裕で倒せちゃう訳だし…俺達が貴族にこき使われるよりは1人で天使を狩るだけの方が楽なのかも」
🧸「確かにそれなら辻褄は合いますね。でもそれくらいの事なら全然言っていいことだと思うけど…」
⚔️「何か理由があるんだろう。俺達には分からない何かが…」
6人はなんだか気まずい食事を終えて、執事達は風呂に入ってから部屋に戻った。
ふかふかのベッドに横たわって布団を被り、眠気が訪れるまでケイティの不可解な言動について考える。
今日はフェネスも本を読む気になれず、客室で寝ることにした。
🦋「…もしかして、天使狩りを1人でやるつもりなのかな?それとも…天使狩りが終わった後で移住を提案してくださるとか?…いや、流石に考えすぎかな。早く寝なくっちゃ…」
フェネスは仮眠室と違ってダブルサイズのベッドは広すぎて落ち着かないな、と思いながらも暖炉がパチパチと音を立てているのを聞きながら眠りに落ちていった。
✝️「明日からは下山か…。荷物を持たなくていいとはいえ、気を引き締めなくてはいけないな」
ハウレスは寝る前に地図をもう一度確認しつつ、テディと柔軟運動をしていた。
🧸「ハウレスさん…俺、主様が下山する前にここの鏡とパレスの鏡を繋げて帰れるようにしてくれそうだなって思うんですけど、気のせいですかね?」
✝️「いや…俺もそう思っていたところだ。わざわざ寒い雪山から下山して、2週間かけてパレスに戻る手間より鏡を繋げて帰るほうが早いだろうからな…」
🧸「ですよね…俺達、もっともっとトレーニングして体力が落ちないようにしないといけないですね!毎回主様達にご迷惑をかけるのは申し訳ないですし、天使狩りに影響が出たら困りますから!」
ハウレスとテディは夜遅くまで柔軟と筋トレを行い、眠くなったところで訓練服から寝間着に着替えてベッドに入った。
⚔️「…98…99…100…。今日はこのくらいにしておくか。…おかしいな、さっき腹一杯食べたはずなんだが腹が鳴っている…サロンで何かつまみ食いさせてもらうか」
バスティンは素振りを終わらせると空腹に負けてサロンへと向かった。サンドイッチやビスケットをもぐもぐと咀嚼し、微炭酸のレモン水で流し込む。
⚔️「ふぅ…これで寝られそうだな」
ある程度腹が膨れると眠くなってきた。バスティンは立ったまま居眠りをする常習犯であるため、明日動けなくなったら困ると急いで部屋に戻っていった。
K「…言えないよ、天使狩りが終わったら執事達全員が処刑されることになるだなんて」
ケイティは未来を映す鏡から手を離し、ベッドに倒れ込む。
何度試しても未来は変わらない。
いつもグロバナー家から手紙が届いて、全員が呼び出される。そこで執事達と引き離されてケイティはグロバナー家に絶対服従を命じられ、執事達は牢に閉じ込められて、民衆の前で処刑される。
そんな未来しか見えないのだ。
執事達が居ない世界でグロバナー家に仕えるつもりなど毛頭ない。まして、執事達を処刑することに異を唱えなかった相手に頭を垂れるなど許せるはずもない。
K「やらせないよ、絶対に。私がなんとかしてみせる。どんな手段を使っても、あの世界から逃げてしまえば干渉されないもの。皆が幸せになれない未来なんて変えてみせる、壊してみせる。だって私は…悪魔より質の悪い魔法使いなんだから」
つっと頬を流れていく涙を手の甲で拭うと、ケイティは新しい魔法を作るため別世界の図書館…執事達への指輪を作った魔導書のみが集められた世界に飛んで、パレスとその周辺の庭を新たな欠片にできないかと必死で魔導書を見ながらどんな陣にするか考え始めるのだった…
コメント
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うわあ、今回も面白かった…!温泉でわちゃわちゃしてる日常パートからの、最後のケイティの独白で一気に空気が変わった感じがたまらなかったです。魔法人形に気を遣っちゃう執事たちのリアクションがすごく可愛くて、でも「慣れるよ」と言いかけて止めたケイティの表情がどうしても気になる…。悪魔より質の悪い魔法使いって言葉、痺れました。未来を変えるって決意した彼女の強さ、ちゃんと受け止めたいです🌙