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2月14日、バレンタイン。
その日真希は、指先を怪我だらけにしながら作ったチョコレートを上着のポケットに隠し、憂太を探して校内を歩いていた。
真希:(ったく… 憂太の奴どこにいやがるんだよ…。)
イライラしなが校舎の裏手へ向かうと、そこには案の定一人の窓の女性が憂太を呼び止めている姿があった。
女性の補助監督:「乙骨君!これ、頑張って作ったの…!受け取って欲しいな…!」
物陰から見る真希の目に、彼女の手に載せられた可愛く包装されたガトーショコラが映る。
海外から戻り、2年生になって急に身長も伸び、どこか大人びた雰囲気を纏うようになった憂太。そんな彼が最近、窓や他校の女子の間で密かに大人気なのは真希もよく知っていた。
真希:(っ、先客かよ…)
立ち去ろうとする真希の耳に、憂太の声が聞こえる。
憂太:「あ、すみません…。好きな人がいるので…」
真希は耳を疑った。
真希:(ーー好きな人、だと…?)
ショックを受けた真希は、それ以上聞くことが出来ずその場から教室えと走り去ってしまった。
教室に戻った真希は、息を整えながらスーパーに売っている安い小分けのチョコをパンダと棘に投げつける。
真希:「ほら、やるよ。 バレンタインだ。」
パンダ:「おーサンキュー真希! …ん?何か元気ねぇな?」
棘:「しゃけ?」
真希:「…別に何でもねぇよ」
そこへ、ガラッと教室の扉が開く。
立っていたのは…息を切らした憂太だった。
憂太:「…真希、さん…っ…」
真希:「憂太どうした?そんな息切らして」
憂太は棘とパンダが持っているチョコを見てひどく落ち込んだような、泣きそうな顔になった。
憂太:「さ、さっき…パンダ君と狗巻君にチョコ…渡してた、けど…」
真希:「ん? ああ、余りもんだ。」
憂太:「…っ……」
憂太は何かを言いたそうにもじもじとしている。
真希:「なんだ? 何か言いたいことあんなら言えよ」
憂太:「ぼ…ぼ、僕にチョコ…くれないの…?」
真希:「は、はぁ?!」
真希:「お前、チョコなんて他にくれる奴いっぱいいんだろ。」
憂太:「え?………あ、ううん。さっき窓の人に貰ったんだけど…僕、断っちゃったから…」
憂太はぎゅっと拳を握りしめ、顔を真っ赤にして今にも心臓の音が聞こえてきそうな程ガチガチに緊張しながら真希を見つめる。
憂太:「ぼ、僕、好きな人いるから……他の人の、受け取るわけにいかなくて…………っ…」
真希:(………好きな人……?)
憂太:「だ、だから……真希さんから貰えないと、僕………本当に、ショックというか………っ」
真希:(…待て…。じゃあ、その好きな人って…)
憂太:「………ぼ、僕の好きな人は………っ………真希さん、なんだ………!」
最後は声を絞り出すようにして必死に告白する憂太。その顔は耳まで真っ赤に染まっている。ここで真希は、ようやく憂太の想いに気づく。
真希:「――っっ?!?!?」
パンダと棘はニヤニヤしながらお互いの肩を組む。
真希:「な………、何言ってんだよ!バカ憂太!!」
真希は顔から火が出そうな程真っ赤になりながら、上着のポケットからパンダと棘とは明らかに違う、『本命チョコ』を乱暴に掴み、憂太の胸にドンッ!と押しつける。
真希:「ほらよ!…勘違いすんな!」
憂太:「…! ぼ、僕のために、作ってくれたの……!?」
憂太の瞳が一瞬でパッと輝き、緊張が解けたような本当に嬉しそうな満面の笑顔に変わる。
憂太:「ありがとう、真希さん…!………世界で1番美味しいよ、絶対!」
照れ隠しで完全にそっぽを向く真希と、貰ったチョコを宝物みたいに両手で大事そうに抱きしめる憂太。
真希:「っ…うるせぇ!………おい、それ、今ここで開けんじゃねぇぞ!」
憂太:「え?あ、うん………?」
真希:「……自分の部屋で開けろよ。いいな」
恥ずかしさが限界に達して真希は、顔を真っ赤にしたままフィッと教室を出て行ってしまう。
パンダ:「あーあ、真希の奴、顔真っ赤にして逃げやがったな」
棘:「しゃけしゃけ!」
憂太は真希がくれたチョコを抱きしめる。
憂太:「……うん、部屋に戻るね!」
憂太は廊下に出て、照れ隠しで逃げた真希の後ろ姿を、憂太は愛おしそうにいつまでも、幸せな笑顔で見つめていた。
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――おわり――
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