放課後。昇降口を出た途端、ぽつりと頬に冷たい雫が落ちた。
「……雨?」
空を見上げると、さっきまで薄い夕焼けだったのに、いつのまにか灰色の雲が広がっていた。
校門のそばに立つ悠真が、軽く手を上げる。
「妹ちゃん、こっち!」
言われるまま駆け寄ると、傘を広げた悠真が隣に立っていた。
「入れよ。降り出すの早すぎだな」
傘の下に並んだ瞬間、肩が触れ合いそうなくらい近い距離に、咲の心臓は跳ね上がった。
「……ありがとうございます」
声が震えてしまう。
「いいって。濡れると風邪ひくからな」
何気ない口調なのに、雨音に包まれて響くその声は、不思議とやさしく感じられた。