ふと目を覚ましたすちは、腕の中の感触に違和感を覚えた。
小さな体ではなく、いつものみことの重み――しっかりとした大人の体がそこにある。
「……みこと?」
思わず名前を呼び、少し揺すってみる。
寝ぼけたままのすちは、驚きと戸惑いで手が止まらない。
「……うーん……ん……」
みことも目をこすりながらゆっくりと目を開ける。
そして、自分の姿を確認した瞬間、目が大きく見開かれた。
「え……ええっ!? 俺……元に戻ってる!!」
思わず両手で自分の顔や腕を触り、寝巻きの上から体を確認する。
しばし固まったあと、興奮と驚きが混ざった声で小さく叫ぶ。
「すち……すち、見て! 俺、大人に戻った……!」
すちは驚きつつも、慌ててみことの肩や背中を優しく叩き、声をかけた。
「わ、わかった! 落ち着け、びっくりするよ、みこと!」
みことは嬉しさと驚きで顔を輝かせ、すちの腕から少し身を起こす。
それでもまだ、昨夜の甘えた気持ちは残っており、すちに手を伸ばして軽く握った。
「すち……俺、戻れないと思った……でも戻った!」
「うん、戻ったんだ……よかった、本当に……」
すちはほっとした息をつき、みことの頭を撫でる。
目の前の光景に、驚きと喜びが入り混じり、思わず笑みがこぼれた。
戻った姿を確認し終えたみことが落ち着いたころ、すちはゆっくり体を起こし、真剣な表情で問いかけた。
「……で、みこと。何があったのか、ちゃんと聞いてもいい?」
みことは視線を泳がせ、掛け布団をぎゅっと握った。
少し言い淀んだあと、ため息をつきながら口を開く。
「……なんかさ。街で知らない人に“素直になれる栄養剤”っていうのを渡されて……」
「知らない人に?」
「うん。絶対嘘だって思いながら……でも、ちょっと気になって……飲んだら……それで……」
そこまで一気に言って、みことは苦笑する。
「気づいたら、小さくなってた」
すちは眉をひそめた。
「……意識は?」
「めちゃくちゃあった。全部覚えてる……でも、自分の口が勝手に動く感じで……。 なんか画面の向こうで自分を見てるみたいな……不思議な感覚だった。」
「そうだったんだ……」
すちはみことを気遣うように、そっと手を握る。
みことはその手を見て、耳まで赤くした。
「で……“素直に”って……?」
すちがゆっくり問い返すと、みことの肩がびくっと跳ねた。
俯いたまま、布団の端を指先でつまむ。
「……うぅ……」
「みこと、言って?」
やさしい声に押され、みことは小さく息を吸い――ぽつりと言った。
「……すちに……甘えたかった ……でも普段、照れくさくて言えないから……」
頬を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに小さくなっていく。
「だから……飲んで……素直になれたらいいなって……」
すちは一瞬固まり、そのあと困ったように、でもどこか嬉しそうに笑った。
「……みこと。そんなこと思ってたなら、言ってくれればよかったのに」
「む、無理……恥ずかしい……」
「じゃあ、今言えたのは?」
「……が、がんばった」
すちはみことの頬の赤みを見つめ、微笑みを浮かべた。
そしてそっと腕を広げて囁く。
「……おいで、みこと」
みことは一瞬戸惑い、顔を背ける。
頬の熱と照れでさらに赤く染まり、まるで子どものように手をもじもじさせる。
「……え、えっと……」
すちはじっと見つめながら、優しく声をかける。
「恥ずかしがらなくていいから。大丈夫だよ」
みことは小さく息を吸い、意を決したように体をすちのほうへ寄せる。
そして、胸にそっと飛び込むように抱きついた。
「……すち……」
すちは瞬間、嬉しさに胸が熱くなった。
柔らかく小さな体の重みを感じ、自然と腕をぎゅっと強く回す。
「おかえり、みこと」
その声には安心と喜びがこもっており、みことはさらに胸に顔を押しつける。
甘えたい気持ちが溢れ、軽く体をすちに預けながらも、照れで小さく鼻を鳴らす。
すちは背中や頭を優しく撫で、額に軽くキスを落とす。
そのまま抱きしめながら、微笑んで囁く。
「好きだよ」
みことは安心したように息を整え、腕の中で体を預ける。
柔らかい重みと温もりに包まれながら、やっと心から安堵したように体をゆだねる。
すちはその重みをしっかりと感じ、胸いっぱいに喜びをかみしめる。
何度も小さな声で「おかえり」と言いながら、みことをしっかり抱き締めたまま、静かにその時間を楽しむのであった。
コメント
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みこちゃんは大人に戻っても甘えん坊ですね(*^^*)そこが可愛い((o(。・ω・。)o))