テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところに闇は生まれる〜
第1章 『狙われたシンデレラのガラスの靴』
〜宝石と美しい硝子〜
第2話 リストにない名前
中央の大地 美術館
私とルカスとベリアンは館長さんの馬車に乗り
美術館に向かった。
『新聞でご拝見致しましたが立派な美術館ですね。』
『そうだろう?私の大切な美術館だ。』
コツコツ……。
『ここがグロリア様の部屋ですか?』
『あぁ。入ってくれ。』
『失礼します。』
『今お茶を出そう。』
『お構いなく……。』
私はソファに腰をかける。
『これが昨日の客のリストだ。』
『拝見いたします。』
ペラっ……。
『……。ルカス、見覚えのある名前はある?』
『スーティル・マラー。ミーシェン・アリア。ビリア・ルビー。聞いたことのある名前ばかりです。この方たちはグロバナー家の貴族ですから。 』
『あぁ。その他にもグロバナー家の貴族の方は沢山いる。信じ難いがこの中にいるとしか…。』
『他にいるとしたらグロリア様は誰を思い浮かべますか?』
『いや…思い当たらないな。』
『失礼ですが、身内の方とか……』
『私は独身の身でね。親戚ももう亡くなってしまっているから…。』
『そうですか…。』
『とにかく、まずはそのリストの中で数人に絞ってみましょうか。怪しいと思う人はいますか?』
『そうだな…。』
数時間後――。
『1人目 サラ・リンダ様。サラ家のご令嬢でグロバナー家とも深い親交のある方です。』
『グロリア様、どうしてこの方が怪しいと?』
『実は昨日私が直々に貴族の方を案内してひとつずつ見て回ったんだ。そのシンデレラのガラスの靴を凝視していて…何回もその周りをクルクルとしていたから…。』
『なるほど…。確かに傍から見たら怪しいですね…。』
私は手帳に書き込む。
『2人目 リュージュ・ダリア様。リュージュ家の当主様ですね。若くしてリュージュ家を継ぐことになった方です。』
『優秀な方なのね。この方は?』
『この方は…私にあのガラスの靴の価値をこれでもかと沢山聞いてきたんだ。どうやって作ったとか、どこの硝子なのかと…。その時はただガラスの靴の価値が知りたくて聞いてきたのかと思って私も嬉しかったが今思えば……。』
『なるほど…。』
カキカキ…。
『3人目 ハリー・ウェリナ様。南の大地に住む方ですね。』
『随分遠くから来たんですね。』
『あぁ。ガラスの靴を見たいとはるばる南の大地から来てくださったんだ。でも、少しだけ違和感を感じたんだ。』
『違和感…?』
『彼は南の大地の宝石商でね。昨日ははやし立てられて私も調子に乗ってしまったが…よくよく考えれば…。宝石商の彼が私のガラスの靴を盗みに来たのかと……。』
『……ベリアン、どう思う?君の考えを聞きたいな。』
『そうですね…3人ともとても怪しいと思います。不審な動きをしてるのは確かです。動機がなんであれ…。』
『…分かりました。グロリア様。そのリストを私に貸してくださいませんか?』
『どうする気だ?』
『明日の昼、このリストの方を全員集めてください。12時ちょうどにね。私はこのリストの方の人物像を洗い出します。』
『わ、わかった。頼むぞ。』
『お任せあれ。』
私はニコッと微笑む。
デビルズパレス 夜。 書庫。
『……。』
『…お姉ちゃん。』
『百合菜…どうしたの?こんな夜遅くに。』
『……お姉ちゃんまたお仕事なの?』
『えぇ。』
『…私、お姉ちゃんみたいになりたい。』
『え…?』
『私だってパパやママの娘なのにお姉ちゃんみたいに推理力もないし、頭も良くないし…。』
『百合菜…。』
私は手帳を閉じて百合菜に近づく。
『そんなことないわ。百合菜は周りを笑顔にさせる力を持ってる。私には無いものだわ。』
百合菜の頭を撫でる。
『お姉ちゃん…。私お姉ちゃんが羨ましい。』
『……!』
チクンッと胸が痛む。
私だって百合菜が羨ましい。私のこの力がなければもっとマシな人生だった。こんな眼帯なんてしなくて済んだ。どうして簡単に羨ましいなんて言うの。
ギリッと唇を噛む。だけど、そんな言葉を押し殺す。
『……もう夜も遅いわ。おやすみ、百合菜。』
『うん……。』
バタンッ。
『貴方にこの力はもったいないわ。
貴方は…清く凛々しくあってなきゃダメよ。
親から与えられた名前…『百合菜』に相応しいように。』
こうして夜は更けていく。
色んな思いが入り組んで。
次の日。
中央の大地 美術館。
『グロリア様、集めて頂けましたか?』
『あぁ。当日に参加した貴族の方20名全て集めた。』
『確認の為点呼させて頂きます。呼ばれた方は左側にお願いします。』
『では読み上げますね。』
数分後。
『ここには20名しか居ないはずだ、それなのになぜ1人余るんだ!』
『リストにある名前は全部読み上げました。
ってことは…リストにない名前の方が…』
一斉に右側にいる人を見つめる。
『貴方のお名前は?』
『ユリア・ビルゲーンです…えっと…。』
(褐色色の肌……もしかして…。)
『南の大地から来た方ですか?』
『!は、はい…。えっと…ハリー・ウェリナ様の召使いの者です。申し訳ございません。今日はハリー・ウェリナ様のお付きを任されて…。』
『なんだ…。ハリー殿のお付の方か!
そうならそうと早く言ってくれ!』
『いや〜すみません、グロリア様。 』
(リストにない名前なのは当たり前か…。
今日初めて来たわけだし。)
『失礼しました。ではこれで21名ですね。
皆様、シンデレラのガラスの靴が盗まれたのはご存知ですよね?』
『えぇ。新聞で読んだわ。あんな綺麗なガラスの靴を盗むなんて…。』
『失礼ですが……私と館長のグロリア様は
貴方方の中に犯人がいると思っております。』
『はぁ!?』
次回
第3話 犯人の特徴
コメント
2件
わぁーすごい主天才しかも姉妹一見見ると仲良さそうなのに少しこじれてるのいいしかも主ちゃん自分で溜め込んじゃうタイプだから最後心配ぷちちゃんありがとねおやすみ