TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

実のところ、かなり心配していたのだ。


年配者でもレベルをあげてパワーアップできるのだろうかと。


年を取ってから危険なダンジョンに挑もうなどという者は、向こうの世界にもいなかったからね。


まあ、その前に冒険者ギルドで止められるだろうけど。


それにしても良かった……。


これで慶子 (けいこ) は、もっと元気になれるだろう。


よいよいで、しょぼくれてる姿なんて見たくないものなぁ。


よし、気合が入ってきたぞー。


それから慶子は、夕方までしっかりとダンジョン探索をおこない帰っていった。


この調子なら明日もスキップしながら来るんじゃないか。


レベルがポンポン上がっていく今の時期が一番楽しいんだよね。


………………


さて、夕食を済ませたら、カンゾー (ダンジョン) と打ち合わせの続きだな。


問題点はまだまだ沢山あるのだ。


低階層のドロップ品は何がいいかなぁ。


向こう (デレク) のようにサラダ油やミルクなんかでは喜ばないだろうし。


……悩むところだよな。


それに、こちら (地球) ならではの問題もあるんだよね。


科学にしても工業製品にしても、向こうよりかなり進んでいるから。


銃火器の使用は禁止するとして、車両の持ち込みやドローン、無線機の使用やWi-Fiルーターの設置をどの辺まで許可するかなどだね。


ダンジョン探索をネットでリアル配信なんて、すごく楽しそうだよね。


さっさと情報公開して、広くみんなから意見をもらった方がいいような気もするんだよな。






今日の晩ごはんは日本のソールフードの一つである ”おでん” である。


10年ぶりの ”おでん” は楽しみだな。


真領路 (しんりょうじ) 家みなさんには時期外れにもかかわらず、お付き合いいただき申し訳ないのだが、夏場でもきっと美味しいよね。


冬場におこたに入ってアイス食べるのと一緒だよね。(違うわ!)


んっ、何か聞こえたような気がしますが……。まっ、いっかー。


ふぅふぅ、ほくほく、あちあち。


ふぅふぅ、ほくほく、あちあち。


シロもおいしそうに食べています。


「つぎは何にする? ちくわ、たまご、だいこんね。この黄色いのどうする? あ~、やっぱりいらないか~」


さすがのシロちゃんも和辛子は苦手なようです。


だよねー。くしゃみ出ちゃうもんねー。


「ごちそうさまでした!」


――いや~旨かった~!


エアコンと扇風機を回しながらの ”おでん” は最高でしたわ。


………………


残しておいた ”よもぎ餅” を、お風呂あがりに美味しそうに食べている紗月 (さつき) 。


「魔力操作の訓練は続けてる?」


「はい、訓練は毎日するようにしています」


「そっか。で、どんな感じ?」


「えっと、まだまだですね。僅かに動くようにはなってきたんですけど……」


「おお、もう動いているのかー、それは凄い!」


「えへへ、それほどでも……。でも、すっごく疲れちゃうんですよね」


「それは慣れるまでは仕方ないね。あんまり無理しないようにね、毎日少しずつだよ」


「はい。でも魔法を早く使いたいんで頑張っちゃいますよ!」


魔力感知で自分の中にも魔力があると実感してからというもの、その魔力を扱えることが楽しくてしかたないみたいだ。


学校でも魔力操作の訓練はやっているようで、夢中になってトイレにこもっていたら、『お腹が痛いの? 大丈夫?』と友達に心配されたそうだ。


そりゃあトイレで『うぅ~ん、うぅ~ん』と長いこと唸っていたら誰だって心配するだろうね。






心配していた学校の期末テストも終わり、瞬く間に一週間が過ぎた、7月21日。


赤点補習のなかった紗月はいよいよ夏休みに突入である。


片や続いている地震の方なのだが、


頻度は若干上向き傾向ではあるものの、規模は幾分抑えられてきたようにおもう。


ただし、被害は確実に増えており、早急な対策が必要だろう。


そして俺は慶子の頑張りに驚いた!


5階層のフロアボスにゴブリンジェネラルが居たんだけど、それすら一刀両断に斬り捨てていたからね。


剣や刀じゃないんだよ、あの土木スコップでだよ! なんなのあれ、スパーって凄すぎるでしょ!


叩いて良し、切って良し、突きなんかスコップのハンドルを握って捻りながらいれていたからね。


相手はもうぐっちゃぐちゃ。土木スコップ恐るべし!


多数のモンスターに囲まれても、しっかりシロとの連携もとれているようで申し分ない。


レベルもあがって今はLv.7。


まさか、ここまでやるとは思ってなかった。もう参りましたって感じだなぁ。


向こうにいる駆け出しの冒険者が、ここまでレベルを上げるためには優に1年はかかるだろう。


――レベルはね。


さらに言えば、同じLv.7であってもレベルアップ時における身体パラメーターの伸びが格段に違ってくるのだ。


まあ、加護を持っているということは、それだけでチートなんだよね。


それで、魔法もあるのだからWチート。一般人では逆立ちしても勝てないということだね。


そして今日からいよいよ夏休み。紗月もダンジョンアタックに参戦ということになる。


向こうの世界 (サーメクス) に帰るまで残すところ8日。


準備や買い出しもあるので正味6日というところか。


慶子同様、紗月にも頑張ってほしいところだ。






あと、変わったところでは……。


ようやく自衛隊さんとつなぎがとれたようで、さっそく動いてくれるみたいだ。


博多駅の近くに住○神社という大きな神社があって、そこの神職の一人が茂さんが行っていた大学の同期なんだそうな。


今回はそちらの伝手を頼ってのことだという。


先方の自衛隊さんも地震の影響で、あちらこちらに引っ張りだされて、忙しくしているみたいだけど、何とか時間を作ってくれるそうだ。


………………


「さっそくだけど、このローブを羽織ってみてくれるか?」


朝食を済ませ、あと片付けを終えた紗月にワイバーン・ローブを渡した。


ローブを着た紗月の動きをしばらく確認したのち、


「グローブはとりあえずコレを使ってみて」


グローブはそこのホームセンターで見つけてきた PU (ポリウレタン) グローブだ。


伸縮性に優れ、良く馴染むし滑らない。


おまけに、カラーバリエーションが豊富だ。


俺と慶子は既に10組づつ購入している。


両手にグローブをはめ、掌をグーパーグーパーしている紗月。


そんな様子を心配そうに見つめる茂さん。


紗月がダンジョンへ入ることについて、初めは難色を示していた。


大切なひとり娘なのだ、親としては当然のことだろう。


ところがである。


日々変わっていく慶子を目の当たりにして、少しずつ考え方も変わってきたようにおもう。


慶子と紗月がふたりして、茂さんを毎日説得し続けたことが功を奏したともいえるのだが。


この神社はダンジョンのすぐ側にある。鍛えておいて損はないだろう。


モンスーターへの警戒は勿論だが、同時に人間にも気をくばる必要が出てくるからだ。


これから、いろんな人達がダンジョンへ出入りすることになるだろう。


そういった人間の方が脅威となる可能性が高いのだ。


できれば、茂さんにも鍛えてもらいたいところなんだけど……。


それは帰ってきてから考えることにしよう。






それから3日経った、7月24日。


陸上自衛隊の方が今日の午後からこちらに見えるらしいのだ。


朝食を済ませたあと、


「今日の探索はどうする?」


紗月に尋ねたところ、彼女はササッとスマホを操作するとすぐに、


「慶子さんが午前中だけでも入ろうかだって。私も行きたいなぁ。早く強くなりたいし」


「そうか了解。では、すぐ準備してくれ。時間がないぞ」


「うん、やったー!」


だよねー。


3m程ある天井に垂直飛びで、もう少しで手が届きそうだからな。


今の紗月はLv.3。楽しい盛りだよねー。


学校の宿題も忘れるなー。


………………


俺たちは昼前までダンジョンに入って探索をおこなった。


昼食をとったあとは、慶子と紗月は一緒に買い物へ出かけていった。


最近、益々もって親子のような二人である。


そして午後2時すぎ。


やってきたのはスーツ姿の男女2名。


「地方協○本部の鈴木です」


「同じく、佐藤です」


お互いの挨拶から始まり、紹介者の話などで和やかに会談は進んでいく。


そして俺はというと、ここのところの地震についてや【ダンジョンの起動】についてなど丁寧に説明していった。


そうして、スタンピードが起こる可能性のところまで話が進んだところで、


「ああ、なるほど!! ダンジョンそれにモンスターですか。では、これまでの話をまとめますと……」


男性の鈴木さんが話に割り込んできた。


また、その声がデカいこと。


「この半年ほど続いている地震がそのダンジョンとかいう物のせいだという事。今から起こる地震で被害が多く予想されるので、その該当する地域の住人を避難させてほしい事。地震災害が起こってからの復旧作業中にダンジョンからモンスターが溢れだし復旧作業中の者や一般住民などが襲われるであろう事。最終的には、そのダンジョンを中心とした政策や人員の配置、冒険者による探索や資源の確保を促せるように国に対して ”冒険者ギルド” のような組織の立ち上げや整備をしてほしい事」


「以上ですね!!」


鈴木さんは会話を綴ったレポート用紙に目を落としながら会話を終えた。


「いや~、貴重な情報と建設的な話を聞かせて頂きありがとうございます。こちらもいろいろとございまして、直ぐにどうこうする事は難しいでしょうが前向きに検討させて頂きます。本日はお疲れさまでした!!」


会談の終了を強引に宣言されてしまった。


「…………」


「…………」


「そうですか……。ここで申しましたことは、これから先 世界に対して日本の立ち位置が決まるような大きなものです。可及的速やかに行動されることを切に願います。そして最後になりましたが、こちらメモは本日より2週間、これから起こる地震の震源地と規模の大きさを示したものになります。これからの救助活動に是非お役立てください」


俺はそう言ってから鈴木さんと佐藤さんそれぞれにメモを渡した。


そして陸上自衛隊からお越しになったお二方は玄関にて深々と頭を下げると、回れ右をしてそそくさと帰っていかれた。


「なあ……、ゲンさんはどう思う?」


「まあ、最初はあんなもんですよ。よく怒って帰らなかったなぁと感心しているぐらいですから」


俺は茂さんと目を合わせると。


「「ぷっ!」」


――はははははははっ!


ふたりで笑い飛ばしてやった。


今帰った二人が2週間後にどんな顔をするのか楽しみである。


何せ、あのメモには地震の起こる日付の他、時間までがしっかりと書き込んであるのだ。


俺はカンゾー (ダンジョン) に人間が使う日付と時間の概念を教えていた。


正確な日付と時間を割り出せるようになったカンゾーが出してくれた ”デモンストレーション” の予定をメモに書いて渡しているのだ。


これから2週間以内に起こる6回の地震は、すべてがメモの通りに発生するのだから。







7月24日 (金曜日)

次の満月は7月29日

ダンジョン覚醒まで44日・104日

loading

この作品はいかがでしたか?

17

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚