ワタシの指先に指を絡めながら彼女は言った。
「明日世界が終わるらしいよ」
「何それ?」
絡められた指先を解けないままワタシは彼女を見つめた。
「噂。知らないの?」
「知らない」
「信じてないのね?私の言う事」
「信じない。貴女、嘘つきだもの」
ワタシの言葉に彼女はクスリと笑う。
「あなたにはいつも本当の事しか言わないわよ。私」
「ほら、それが嘘」
ワタシは解けないままの彼女との結び目をゆっくりとほぐすように指を離した。
「何で指離すの?」
不満そうに彼女が言う。
「コーヒー飲みたいの」
そう答えてワタシはグラスに手を伸ばした。
「意地悪」
彼女はそっぽを向いて、窓の外に視線を移した。
綺麗な横顔。
思わず見蕩れる。
ワタシの愛しい貴女の横顔。
見つめられると、言葉が上手く出てこないから意地悪な事を言ってるなんて知られたくない。
ワタシは彼女を愛している。
彼女の気持ちは未だに見えない。
手探りで暗闇の中を歩いている気持ちになる。
一筋の光を目指して…….
「ねぇ?世界が終わる日には私と一緒にいたい?」
「…….」
「答えてよ」
彼女は窓の外を見つめながらワタシに問う。
ワタシは彼女の指先にゆっくりと指を絡めた。
「…….それが答え?…….」
「そうよ。貴女を愛しているし、もし、世界が終わるなら、貴女と共に終わりたいわ。だけど、ワタシ達は一緒にいても何も残せないのよ?」
「それでもいい!どうせ、世界は明日終わるのよ!」
彼女は振り向き、涙を浮かべた瞳で真っ直ぐにワタシを見つめた。
「あなたがいいの。嘘なんかぢゃない。あなたぢゃなきゃ…….意味が無いの。私にとっては…….お願い。この気持ちを嘘だと…….思わないで…….」
ワタシは彼女の頬をつたう雫に指を伸ばした。
指先が濡れる。
彼女の涙がワタシの肌に染み込んでいく。
答えはあった。
「…….愛している。たとえ、世界が終わってしまっても、貴女を、愛している」
彼女はワタシの手を頬に寄せ目を閉じた。
「今、世界が終わればいい。私。幸せよ」
「えぇ、そうね。ワタシも幸せよ」
ワタシ達は目を閉じて、同じ世界を見る。
やっとたどり着いた。
明日世界が終わる。
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