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#夢小説
レモネさん🟣✧︎
68
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hana
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暦座さち🩷🎲
173
### 桃源暗鬼 ― 鬼の隣で ―
### 第6話「すれ違い」
登場人物:黒瀬玲・一ノ瀬四季
朝。
「……玲、今日なんか静かじゃね?」
隣を歩いていた四季が、玲の顔を覗き込んだ。
「いつも通りだけど」
「いや、いつもより三割くらい静か」
「なんだよ、その基準」
「俺基準!」
「意味分かんない」
玲は小さくため息をついた。
昨日、四季と話したことを思い出す。
自分の過去を少しだけ話してくれた四季。
そして、自分も四季の隣にいたいと思ったこと。
あの時間は、確かに嬉しかった。
だからこそ――。
これ以上、四季を危険な目に遭わせたくなかった。
自分のせいで、四季が傷つくところなんて見たくない。
「……玲?」
「ん?」
「なんか考え事?」
「別に」
「ふーん?」
四季は納得していない顔をしたが、それ以上は聞いてこなかった。
その日の午後。
羅刹学園に緊急の連絡が入った。
近隣区域で桃太郎機関の動きが確認されたという。
教師から任務の説明を受け、玲は資料に目を通した。
敵の人数は不明。
現場の状況も、まだ詳しく分かっていない。
「今回は慎重に行動しろ。無理な単独行動は禁止だ」
教師の言葉に、玲は頷いた。
その隣で、四季も真剣な顔をしていた。
「玲、絶対勝つぞ!」
「……ああ」
けれど玲は、心の中で別のことを考えていた。
今回は、四季を巻き込みたくない。
自分一人で何とかできればいい。
それが、間違いの始まりだった。
*
現場に到着すると、周囲には不気味なほど静かな空気が漂っていた。
「……気をつけろ」
玲が小さく呟く。
「分かってるって」
四季が前を見据える。
次の瞬間。
建物の陰から、桃太郎機関の隊員たちが姿を現した。
「鬼を確認。排除する」
敵の攻撃が始まる。
四季が前に出て、玲が血を操って援護する。
最初は順調だった。
しかし、戦闘の途中で玲は気づいた。
敵の一人が、四季の死角から接近している。
「……っ!」
玲の頭の中で、昨日の光景が蘇る。
四季が自分を庇った、あの瞬間。
もう、あんな思いはしたくない。
「四季! 右だ!」
叫ぶと同時に、玲は四季の前へ飛び出した。
「玲!?」
敵の攻撃を血で受け止める。
だが、衝撃までは殺しきれなかった。
「ぐっ……!」
玲の身体が後方へ吹き飛ばされる。
「玲!!」
四季の声が響いた。
玲は何とか立ち上がろうとする。
「……大丈夫」
「大丈夫じゃねぇだろ!」
四季が駆け寄ろうとした、その瞬間。
別の敵が四季へ攻撃を仕掛ける。
「四季、下がれ!」
玲は再び血を操った。
敵の動きを封じる。
しかし、無理に力を引き出したせいで、視界が揺れた。
それでも玲は止まらなかった。
四季を守らなければ。
四季だけは、絶対に。
「……俺が、やる」
血が広がり、敵の動きを押さえ込む。
その隙に、四季たちが敵を制圧した。
やがて戦闘は終わった。
だが、玲はその場に膝をついた。
「玲!」
四季が駆け寄り、肩を支える。
「おい、しっかりしろ!」
「……うるさいな。聞こえてる」
「だったら、なんでこんな無茶すんだよ!」
四季の声が、いつになく大きく響いた。
玲は驚いて顔を上げた。
四季は怒っていた。
本気で。
「お前、自分が何したか分かってんのか!?」
「……四季を守ろうとしただけだ」
「そんなこと頼んでねぇ!」
その言葉に、玲の表情が固まった。
「……は?」
「一人で全部背負おうとすんなよ! 俺だって戦えるんだぞ!」
「でも、お前が傷ついたら……!」
思わず声が出た。
四季が黙る。
玲は唇を噛んだ。
もう、誤魔化せなかった。
「……お前が傷つくの、嫌なんだよ」
小さな声だった。
「お前が俺を庇ったとき、怖かった。また同じことが起きたらって思ったら……」
玲は俯いた。
「だから、俺が守ればいいと思った」
沈黙。
四季はしばらく玲を見つめていた。
そして、苦しそうに眉を寄せる。
「……玲」
「……何」
「俺だって、お前が傷つくのは嫌だよ」
玲の目が揺れた。
「お前が無茶して、倒れそうになって……俺がどんな気持ちだったか分かるか?」
「……」
「俺だって、お前を守りたいんだよ」
四季の声が少し震えた。
「なんで、俺だけ守られる側なんだよ……」
玲は何も言えなかった。
自分は四季を守りたかった。
けれど、その気持ちだけで行動して、四季の気持ちを考えていなかった。
守りたいと思っていたのに。
結果的に、四季を傷つけてしまった。
「……ごめん」
玲は小さく呟いた。
「……悪かった」
四季は視線を逸らした。
「……もういい」
そう言って、立ち上がる。
「帰るぞ」
「……四季」
「今は、話したくない」
その言葉が、玲の胸に刺さった。
四季は玲に手を貸そうとしなかったわけではない。
ただ、今は怒っていた。
心配していたからこそ、怒っていた。
それが分かっていても、玲は何も言えなかった。
*
その夜。
玲は寮のベッドに座り、自分の手を見つめていた。
力を使いすぎた腕は、まだ少し痛む。
けれど、それ以上に胸が苦しかった。
「……何やってんだよ、俺」
四季の言葉が何度も頭の中で繰り返される。
『俺だって、お前を守りたいんだよ』
自分は、四季を信じていなかったのだろうか。
一緒に戦うと約束したのに。
背中を預け合うと決めたのに。
結局、自分一人で何とかしようとした。
「……最低だな」
玲は顔を伏せた。
明日、四季に会ったら謝ろう。
ちゃんと話そう。
そう思っても、もし拒絶されたら。
もし、もう隣にいてくれなくなったら。
そんな考えが、頭から離れなかった。
一方、その頃。
四季もまた、自分の部屋で考え込んでいた。
「……あいつ、ほんっと馬鹿」
呟きながら、今日の玲の姿を思い出す。
自分を守るために、何度も無理をしていた。
傷ついても、立ち上がろうとしていた。
その姿が、頭から離れない。
「……なんで、言ってくれねぇんだよ」
四季は枕に顔を埋めた。
玲が自分を大切に思ってくれていることは、分かっている。
だからこそ、苦しかった。
自分だって、玲のことを大切に思っている。
一緒に笑っていたい。
一緒に戦いたい。
そして、できることなら――。
これからも、隣にいてほしい。
「……明日、ちゃんと話そう」
四季は小さく呟いた。
けれど、その夜。
二人はお互いのことを考えながらも、連絡を取ることはなかった。
いつもなら、どうでもいいことで言い合っていた時間。
くだらない話をして、笑い合っていた時間。
それが今夜は、ひどく遠く感じられた。
玲は目を閉じる。
「……四季」
誰もいない部屋で、その名前を呼んだ。
謝りたい。
話したい。
もう一度、いつものように笑い合いたい。
ただ、それだけなのに。
その一歩が、どうしても踏み出せなかった。
――第6話「すれ違い」 完。
コメント
4件
んーこっちもいいねぇ
お疲れさま、読了しました。 第6話「すれ違い」、めちゃくちゃ胸にきました……。玲が四季を守ろうとする一心で無茶をするシーン、それに気づいて本気で怒る四季の「俺だって守りたい」が重なって、お互い想い合ってるのにすれ違うもどかしさが丁寧に描かれてて。最後、それぞれの部屋で名前を呼ぶところ、切なすぎてしばらく動けなかったです。続きが本当に気になる……二人がどう向き合うのか、拠点を整えながら待ってます。