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春。
新しい街。
新しい生活。
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「……思ったより忙しいな」
緋八マナがため息をつく。
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「お疲れ」
キッチンから顔を出す
伊波ライ。
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「飯できてるで」
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「助かる」
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同棲、始まって数週間。
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■“一緒にいる”のに
「今日どうだった?」
「んー……普通」
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「そっか」
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会話はある。
距離も近い。
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でも。
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「マナ、先食べてて」
「ん?」
「ちょっとやることある」
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「……ああ」
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こういうのが、増えた。
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■タイミングがズレる
夜。
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「……まだ起きてたん?」
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「うん」
ライはパソコンを見たまま。
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「課題?」
「うん」
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「……寝るで」
「先寝てていいよ」
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「……一緒に寝んの?」
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「もう少ししたら行く」
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「……そっか」
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少しだけ、間が空く。
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■小さな違和感
ベッド。
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一人。
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「……なんやこれ」
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前は。
“離れるのが惜しかった”のに。
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今は。
同じ家にいるのに。
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「……タイミング合わんだけやろ」
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自分に言い聞かせる。
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■すれ違いの形
数日後。
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「今日、帰り遅くなる」
ライが言う。
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「……最近多ない?」
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「ごめん、今ちょっと忙しくて」
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「……そっか」
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それ以上、言えへん。
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でも。
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「……」
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なんか、引っかかる。
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■爆発じゃない違和感
夜。
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帰ってきたライ。
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「ただいま」
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「……おかえり」
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少し静か。
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「マナ?」
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「……なあ」
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「うん?」
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「最近さ」
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言うか迷う。
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でも。
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「……あんまり一緒におらん気する」
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沈黙。
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■ちゃんと向き合う
「……ごめん」
ライがすぐに言う。
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「忙しくて」
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「それは分かってる」
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「でも」
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少しだけ声が弱くなる。
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「前みたいに、なんも考えんで一緒におれん感じがして」
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それは、責めたいわけじゃない。
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ただ。
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「……ちょっと寂しい」
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■ライの本音
少しの沈黙のあと。
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「俺も」
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「……え?」
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「同じこと思ってた」
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「は?」
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「一緒にいるのに、ちゃんと一緒にいられてない感じ」
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「……」
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予想外だった。
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■ズレてただけ
「マナが疲れてそうだったから」
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「え?」
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「無理させないようにって思って」
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「……逆や」
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「え?」
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「一緒におりたかっただけや」
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「……あ」
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完全にズレてた。
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■元に戻る距離
「……なあ」
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「うん?」
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「今日、もうやることある?」
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「ない」
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「なら」
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少しだけ近づく。
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「一緒におろ」
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「うん」
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■取り戻す感覚
ソファ。
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隣。
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「……これや」
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「なに?」
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「これがええねん」
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何もしてない。
ただ隣にいるだけ。
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でも。
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「落ち着く」
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「……俺も」
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■ちゃんと伝える
「これからさ」
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「うん?」
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「忙しくても」
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「うん」
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「ちょっとでも一緒におる時間、作ろ」
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「……せやな」
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「無理せず」
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「でも、ちゃんと」
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「うん」
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■変わる関係、でも
「マナ」
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「なんや」
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「好きだよ」
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「……急に言うな」
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でも。
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「……俺もや」
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■いつもの距離へ
そのまま。
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軽く触れるキス。
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「……久しぶりな気するな」
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「そんなことないよ」
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「気持ち的にや」
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少しだけ笑う。
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■これからの形
新生活は。
楽しいだけじゃない。
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でも。
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「なあ」
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「うん?」
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「こういうのも、悪くないな」
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「うん」
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「ちゃんと話せば戻るし」
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「戻るっていうか」
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「うん?」
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「前よりちゃんと一緒にいる感じ」
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「……それな」
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少しズレても。
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ちゃんと戻れる。
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それが。
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“続いていく関係”だった。