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◆元貴 side
風磨くんの家に泊まるのは、初めてじゃない。
でもちゃんと“泊まる”って形で来るのは初めてで、 靴脱いだ瞬間からなんか変な静けさが流れてた。
風磨くんって、テレビだと明るいくせに、
裏では観察する側に回る時がある。
しかも妙に鋭い。
ソファに座ったときも、
「どこを見るのか」「どう落ち着くのか」
全部見られてる感じがした。
嫌じゃないけど、
“逃げられないな”っていう妙な安心と怖さが混ざる。
ベットに布団を準備してくれる背中見ながら、
(多分、今日ちょっと機嫌悪いな)ってすぐ分かった。
収録のとき、僕が他のゲストさんと話したのが原因だってことも
なんとなーくだけど察してる。
でもそこを直接触れるのは違う。
変に火がつく。
寝る前にベッドの端に座ると、
風磨くんの視線が肌に刺さるように熱くて、
それを誤魔化すように笑ってしまう。
「風磨くんって、意外と気遣いすごいよね」
本音だった。
ああ見えて、誰より気を配って、
空気読むのも早い。
でも、僕がそう言った瞬間、
彼の肩の力がわずかに強まったのが分かった。
“意外”って言葉が嫌だったんだ。
やっぱ気づきすぎるな、僕。
「……誰の前でもそんな顔してんの?」
その言葉が落ちた瞬間、
空気が一段重くなった。
風磨くんの嫉妬ってわかりやすくて、
けど本人は絶対認めない。
「誰の前でも、って?」
ゆっくり聞き返すと、
彼は目をそらさずに言った。
「今日、他んとこで笑ってたお前、なんか嫌だった」
正直に言えばいいのにと思う反面、
そこまで言わせてしまったのが胸に刺さる。
“独占欲”って単語が頭に浮かぶ。
でも、それを刺激したのは僕の方なのかもしれない。
「風磨くんの前だからだよ」
そう言うと、彼は明らかに呼吸を止めた。
嬉しいのか、戸惑ってるのか、それとも…。
けどすぐに、
「……嘘つけ」
と、小さく、掠れた声で返される。
“信じたいけど、怖い”って感情が丸見えで、
それが風磨くんらしくて少しだけ愛おしい。
たぶんこの人、
自分がどれだけ僕に刺さってるか、まだ知らない。
そのまま二人で沈黙したけど、
不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、
“この距離が壊れたら戻れないだろうな”
っていう緊張が心地よくて。
風磨くんの部屋の空気は、
やけに濃厚で、
逃げ場もなくて、
でもどこか安心できた。