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ルークさんを下し、急いで自由の国へ来たが
「なんだ……これ……!」
地獄と化していた。
まさしく、襲撃だと言わんばかりの景色。
あんなに綺麗だった街並みは破壊され尽くし、未だ立っているのは、上級魔法を扱える者たちのみ、アゲル、セーカ、水の神ラーチ、水の守護神ロロさん、炎の守護神ダンさん、雷鳴隊ヴェンドさん、雷鳴隊クイナさんだった。
他の人たちは、全員が気絶させられていた。
破壊の犯人は恐らく雷龍だろうか……ガンマの従えて来ている雷龍は、四足で角の生えた鬼のような形相で、今まで龍族たちが行使していなかった力を存分に使い、街を破壊して回っていた。
「アゲル! どうなってるんだよ!!」
アゲルはボロボロになりながらも僕に向かってきた。
「僕が抜けては一気に押し切られるのですぐに説明します。まず国王含め、戦えない住民とカナンちゃんや子供達は王城地下の牢獄に避難。それでも避難できなかった人や魔力が弱く洗脳に掛けられてしまった人たちを、雷魔法を使えるセーカさんとロロさん、そして正義の国のクイナさんに解いて気絶させてもらっています。ガンマは雷魔法で攻撃魔法を会得しているので、防御として岩魔法を使える炎の守護神ダンさんと雷鳴隊ヴェンドさんに任せ、アズマと水の神ラーチにガンマと相対してもらい、そのサポートに僕が入っています。ここまでの布陣を持ってしても、互いに譲らない戦況となっています……」
早口に説明すると、すぐに戻っていき、アゲルのサポートのメインは魔力補助、つまりは、ダンさんやアズマのように魔力消費が激しい人たちに魔力の供給を行うことだった。
それにしても目立つ光景は、ダンさんは岩魔法と同時に炎魔法を、そしてアズマもまた、水の防御と共に棍棒から炎魔法を繰り出していることだった。
これがルークさんの言っていた『炎の神は他の者に魔力を渡して既に弱まっている』の正体か……。
ガンマも、戦いを楽しんでいるのか、ニタニタと笑いながら相手をしているが、防戦一方ではあった。
僕が出来ることはなんだ……。
“仙術魔法 神威”
そして、僕は再び楽園の国に戻った。
僕が出来ること。
「ヒーラさん、一緒に来てください……!」
そして、ゴーエンもだ……。
僕が出来ること……戦力の増強と回復支援!!
そして、ヒーラさんとゴーエンを順番に送り、魔力がほぼ尽きてしまった僕は一先ず治癒をしてもらった。
「私が加担するのはいいけど、魔力を二人に渡してるのもあるし、ここに来て国外の禁忌も犯した。私の戦力にはあまり期待するなよ」
そう言うと、ゴーエンも戦闘に協力した。
「アゲル! 洗脳された人全員気絶させて牢屋に入れて来たわよ!」
暫くすると、雷魔法使いたちを連れたセーカがアゲルの元へとやって来た。
「待ってました……! それでは遠距離雷撃部隊! ここで一気に攻め落とします!!」
アゲルの指示の元、セーカ、ロロさん、クイナさんは、それぞれ弓を引いた。
「セーカが……弓……?」
「放ってください!!」
「雷魔法 ビライト!」
「雷魔法 エドレ!」
「穿て 雷鳴の矢!」
そして、三人の弓からは雷撃の矢が放たれる。
ガンマは雷撃を防ぐ手段がなく、見事に命中。
煙の後、ドロドロと液状化したガンマの姿が現れた。
「人間じゃなかったのか……?」
「はい、彼の正体はダークスライムです。人の形を保てないまでに弱まってしまっては、もう後はないでしょう。ヤマトの出番はなかったようですね」
そう言うと、いつもの調子でアゲルは笑った。
流石はアゲルだ……指揮が上手い……。
「それでは、最後はヤマトが拘束魔法で捕らえていてください。彼の弱点は雷ですからね。それでは、牢獄に避難させていた皆さんも解放して大丈夫ですよ!」
僕は言われた通りにガンマを雷魔法 サンランドで拘束。スライム化した途端に雷龍も動きを止めていた。
本当に僕の出番はなかったみたいだな……。
「よくやったぞ、お前たち!」
そして、王城からは、国王キングと共に、ぞろぞろと住民たちが出てきた。
キングは拍手を送る。
しかし住民たちの様子が、どこかおかしかった。
「洗脳に……掛かっている……!?」
ガンマは確かにここに捕らえてある。
雷龍も動きを止めているのに……中から出てきた住民たちは、一斉に暴れ始めた。
「雷魔法の皆さん! もう一度気絶を!!」
すると、
ドォン!!
大きな音を立て、雷龍はこちらに向かって来た。
「まだ続くのかよ……!」
流石のアズマも声を荒げていた。
それまでにガンマとの戦闘は困難だったのだ。
「ヤマトさん! 私も禁忌を犯しています! もう皆さんに治癒魔法を使う魔力が残っていません!!」
ここに来て、ヒーラさんからの禁忌宣言。
もうみんな立っているのもやっとなのに……。
僕しかいない……。
「アゲル……光剣を……。龍一体なら……」
アゲルから光剣を手渡された、その時だった。
「ここから先は、通さない!!」
僕らの前線に、大きな龍を前に、大の字に腕を広げているのは、国王キングだった。
洗脳に掛かっていないということは、それなりに魔力量の多い人だと言える……。
それでも、今まで神や龍と無縁で、戦闘経験もほとんどないような人なのに……。
「ヤマト……キングさんと協力しましょう……」
「何言ってるんだ!? キング様は戦闘経験なんてないだろ!?」
「僕たちの方でもサポートします。使えるものは使う。彼だって、ずっとこの国を統治してきた王なんです。たまにはかっこいいシーンがあってもいいじゃないですか」
その目には、一切の迷いも見られなかった。
「アゲルがそこまで言うなら分かったよ……。で、具体的に何をすればいいんだ……?」
「雷龍サンダースは、雷獣サンドラと同じく刺突攻撃は効きません。その上、防御魔力を常に身体中に覆っているので、ほぼ無敵の龍と言っても過言ではありません」
「そんなの相手に、キング様の攻撃でどうやって……」
僕は、アゲルから一頻りの説明を受け、国王キングの横に並んだ。
「おう、貴様はいつかの旅人だったな」
「はい、僕もまだ戦えるので、ご助力します……!」
「ふむ、良い心掛けだ。して、あのデカブツを倒せる算段でも用意してあるのか?」
そして、僕は国王キングを
「おい! 貴様無礼だぞ! 何をする!!」
抱き抱える。
普段の僕の腕力では敵わないが、ゴーエンの付与魔法で筋力増強を一時的にしてもらった。
「一気に雷龍の上空まで飛びます」
「は……?」
“風神魔法 ウィンドストーム”
「カナンちゃん! セーカさん! 今です!」
アゲルの指示の元、二人は弓を引き、雷矢と炎矢が同時に放たれ、雷龍の目に直撃する。
「ガアアッ!!」
「アズマ! 今です!!」
そして、待機していたアズマは、雷獣戦の時と同じく、アゲルから光槌を手渡され、雷龍の頭目掛けて
「オラアアッ!!」
全体を覆う程ではないが、表面の一部を岩石化。
“炎神魔法 ラグマ・ゴア”
岩を溶かしながら、表面に巡っている防御魔法を溶解させ、雷龍の一部は丸はげ状態となった。
「キング様!! 失礼します!!」
“風魔法 フラッシュ”
そして、国王キングを
「はぁ!?」
ぶん投げる……!!
「後で覚えておけ! 愚民がぁ!!」
しかし、覚悟を決めた国王キングは、拳を握る。
「喰らえバケモノ!! 国王怒りの鉄拳だ!!」
ドォン!! と衝撃波と共に、国王キングの拳は、凄まじい勢いで炎を発し、自由の国を揺らした。
「あれ……キング様……強くない……?」
僕は呆然としてしまったが、キングはドヤ顔を見せた。
そして、雷龍は気絶し、地面に大きな穴を開けた。
「こんな作戦があったとはな! 先程はすまなかった! 礼を言うぞ、旅人よ!」
「それより……あの強力な攻撃は一体……」
「うむ! 私も分からないが、まあいいだろう!」
肩をポンポンと叩かれ、キングは嬉々として住民の元へと去って行った。
「え……なんでキング様あんなに強いの……。多分、攻撃魔法は使ってないよね……」
「そうですね。あれはアズマと同じで、拳に炎魔力を込めただけでしょう。まあでも、彼も龍族の血が紛れていますから、想定の範囲でしたよ」
僕は、またも呆然として言葉を失った。