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『雷電丸⁉ どうして静川さんを助けてあげないの⁉』


まさか見殺しにするつもりなの? だとしたら、私は貴方を一生許さないからね!?


「わめくな、双葉よ。これはのぞみの問題じゃ。あやつはけじめをつけようとしているのだ。儂が手助けしたら、奴の覚悟踏みにじることになる。そんなこと、儂には出来ぬよ」


ギリッと雷電丸は歯を食いしばる。微かだが呼気が荒い。相当気が荒ぶっているように見えた。


今は雷電丸を信じよう。もし見捨てる様なことがあれば、その時に考えることに決めた。


見ると、四人の女子達は顔を恐怖に引きつらせながらこちら見ていた。


「おろ? どうした? さっさと続けぬか。ワシは手出しせんよ」


雷電丸は笑顔でそう言った。怒鳴りつけられると思っていたのだろう。彼女達はお互いを見合いながら戸惑いの表情を浮かべていた。


「け、警察に通報するつもりかよ⁉ でも残念だったわね。私のパパは政治家でね。このくらいのことは簡単にもみ消せるのよ!」


今、雷電丸に話しかけて来たのは、確か同じクラスメイトの武田さんだったと思う。


武田さんはまだ少し怯えた表情を浮かべていたが、自分の切り札を切ったことで勝ち誇った笑みを浮かべていた。


「じゃから、遠慮せず続けろと言うておる。誰にも告げ口するつもりもないわい」


雷電丸の言葉を聞いて、静川さんは悲しそうに目線を地面に落とした。


「はぁ? じゃあ、キモ女ってば、ようやく出来たお友達を見捨てるってこと? マジうけるんですけど」


「のぞみも、かつては双葉を虐めておったんじゃろ? ならば、それは報いじゃ。ワシとのぞみが友であることは、また別問題じゃよ」


静川さんは何も言えず、辛そうに呻く。


「行動には結果が付きまとってくる。それは、のぞみとて覚悟の上じゃろうて。そして、お前たちに可愛がられることを自らの贖罪と言っておるんじゃ。ならば、友としてワシは黙ってそれを見届けるのみじゃ」


雷電丸、あなた、もしかして……静川さんを罪悪感から救い出そうとしているのね?


そこでようやく私は雷電丸の真意を理解した。


「誰にもチクったりはせぬ。のぞみを可愛がった結果として、ワシは絶対にお前たちに報復はせん。それは、のぞみの覚悟を踏みにじる行為じゃからな」


「双葉っち……」静川さんは涙で瞳を潤ませると、嬉しそうに元を綻ばせる。涙はその後、頬を伝って地面に零れ落ちた。


どうやら静川さんも雷電丸の真意に気付いたようだ。それでようやく私の胸にあった痛みが消え去った。


自分達に危害が及ばないことを悟った彼女達は、お互いに目を合わせるとにやり、と笑い合った。


「あ、あのさ、キモ女……いや、高天さん。あんた、私たちのグループに入れてあげるわ」


「そうそう。元々、高天さんを虐めようって最初に言い出したのものぞみっちだしさ」


「そうなんよ。あたしたちは、嫌々あんたを虐めていたってわけ! だからさ、この間のことは水に流してあげる!」


私の脳裏に、彼女達が私にしでかした悪行の数々を思い出す。

上履きを隠された、その中に画びょうやゴミを入れられた。

毎朝机の上に花瓶。

トイレに入っていると、上から水をぶっかけられる。

誹謗中傷や悪口はもちろん、わざと聞こえるように陰口や変な噂を学校中に流す。

私の着替えを盗撮してネットにアップした。

歩いていると、後ろから蹴りをいれられる。

そのどれもこれも、彼女達は嬉々としてやっていたことを覚えている。

彼女達は知らないのだろう。

殴った奴はそのことをすぐに忘れるが、殴られた者はその恨みを一生忘れないことを。


「御礼はいいわ。これであんたも勝ち組の一員よ。これから仲良くしていきましょう?」


武田さんは嘲笑を浮かべながら雷電丸に手を差し伸べて来る。


「これで、のぞみの『みそぎ』はお仕舞いかの?」


「飽きちゃったからもういいわ。それに、泥まみれで臭いし、正直もう触れたくもないしね」


「おーい、のぞみっち。これからも皆で可愛がってあげるから覚悟よろしく。逃げられると思うなよな?」何度も静川さんの頭を踏みつける。


その瞬間、私の我慢は限界を突破した。


『雷電丸、お願い。静川さんを助けて』


「よいのか? お前も、のぞみから酷い仕打ちを受けて来たのではないのか?」


『静川さん……のぞみさんは私を双葉っちって呼んでくれた。これ以上、友達が侮辱されるのを見ていられないわ!』


「了解じゃ」


雷電丸は微笑みながら武田さんの手を取ると、軽く力を入れた。


メキャ! という骨が砕ける音が響いて来た。


次の瞬間、武田さんの悲鳴が木霊する。


「ぎゃああああぁぁぁぁ!!? 痛い、痛いいいいぃぃぃ!!?」


「ちょ、高天! なんのつもり!?」


「汚い足をワシの友からどけろ」


取り巻きの女子の一人に、雷電丸は鬼の様な形相で鋭い眼光を放った。


小さく悲鳴を上げると、その他の女子達は腰を抜かしたのか、両足を広げたまま地面に座り込んでし


雷電丸は静川さんを抱き上げると、優しく微笑みかけた。


「よく頑張ったな、のぞみ」


「ごめんね。今まで酷いことしてきて、本当にごめんなさい、双葉っち」


「もうよい。お前は禊ぎを済ませた。これで心置きなく友情を育めるのう」


「怖かった、怖かったよ! 本当は双葉っちに何度も助けてって言いたかったんだけれども、あたしにそんな資格はないって、それで必死に我慢してたの。でも、でも、助けに来てくれた時は大声で泣きたくなるくらい嬉しかったんだよ⁉」


静川さんはありがとう! と雷電丸に抱きつく。そして、そのままわんわんと泣きじゃくり始めた。


雷電丸は、よしよし、と子供をあやすかのように静川さんの頭を撫でてやった。


「ちょっと待っておれ。先に落とし前をつけて来るからの」コキコキと首を鳴らす。


雷電丸は静川さんを離すと、腰を抜かしている女子達の前に歩いて行った。


「覚悟はよいかの?」


「ちょっと待ってよ! 報復はしないんじゃなかったの⁉」


「せぬよ、のぞみの分に関してはな。まだ双葉っちの分が残っていたじゃろ?」


「私に少しでも手を触れたらパパに言いつけて、お前なんか社会から抹殺してやるわよ⁉」


「好きにすればよかろう。矢でも鉄砲でも持って来るがいい。しかし、その時はお互い命のやり取りになることを肝に銘じておけ。お前にその覚悟はあるのかの?」


その時、雷電丸の背後に鬼神のような姿のオーラが立ち昇った。


誰が見ても悪鬼羅刹を凌駕する迫力を前に、静川さんに酷いことをした女子達は、全員そのまま意識を失って仰向けになって倒れた。


「ありゃ? 少し脅かし過ぎたかの?」


『雷電丸、ナイスよ!』


その時、私は心の奥底から笑った。こんな爽快感は生まれて初めてだ。


『雷電丸にだけは教えておいてあげるわ。私ね、ざまーみろ!!! って彼女達に思っちゃったわ』


「さあ、これにて一件落着じゃ。皆で飯でも食いに行くぞ!」


そうして私達はその場を後にするのだった。

女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~

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