コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
依頼の内容をおさらいしてみよう。
まずは配達依頼。荷物は既に受け取り、後は目的の村まで運ぶだけだ。場所は他の依頼の目的地の途中にある。先に届けてしまおう。この依頼は”初級《ルーキー》”ランクだ
それから、採取依頼と討伐依頼。これらはすべてが同じ目的地では無い。依頼を受けた目的地は2ヶ所。
一つは洞窟。資源として鉄と銅を手に入れるための鉱石の採取が目的の、”初級”ランクの依頼だ。また、その場所には当然のように魔物が出現するとのことで、数減らしのための討伐依頼がこの場所だけで4件入っている。
そしてもう一ヶ所は標高700メートルほどの小さな山だ。
頂上付近で採取できる3種類の薬草の採取が残りの採取依頼だ。標高が低いためか登山の練習に若い商人が訪れたりもするが、ここでも魔物や魔獣は出現する。そういった戦闘力を持たない者に被害が出ないよう、魔物・魔獣を一定数排除するのが残りの依頼だ。
麓にいるような弱い種類は2種類、どちらも”初級”ランクで、中腹以降の対象は”中級《インター》”ランクの討伐依頼だ。
ごく稀に”上級《ベテラン》”がパーティで対応すべき魔物が頂上で確認されるという事例があるが、一々対応をしていたら時間が勿体なさそうだ。今回は出会わないことを願うとしよう。
それぞれ場所は街からは村、洞窟、山の順で遠く、ほぼ直線上の位置にあるので、その順に向かっていけば良いだろう。エリィもその辺りを考慮して依頼を斡旋してくれたのだろう。優秀な娘だ。
そんなわけで、早速村まで到着した。
多くの人々が住まう都市ですら、私の…と言うよりも竜人《ドラグナム》という人種は珍しかったのだ。村人達からは大層驚かれた。ちょっとした騒ぎになったぐらいだ。
非常に珍しい訪問者だったためか、手厚いもてなしを受けそうになったが、この村には荷物を届けに来た以外には用は無く、他にも依頼を受注していることを伝えたら、割とすんなりと引き下がってくれた。では、次だ。ドンドン行こう。
洞窟に辿り着くと、入り口には街から派遣された見張りの兵士が、2人配備されていた。洞窟の入り口に近づいたら非常に慌てた様子で、私が洞窟に入るのを止めようとしてきた。
私の服装を見て冒険者とは判断できなかったのだろう。無理もない。ギルド証以外は何も持っていないからな。ギルド証を見せて冒険者であることを伝えたら、非常に驚かれるとともに苦言を呈されてしまった。
「いくらなんでもその格好は無いんじゃないか?」
「もう少し、冒険者らしい格好をした方が良いと思いますよ?それと、荷物を何も持っていないようですが、本当にここに採取と討伐の依頼を受けてきたんですか?ここの魔物は”初級”が一人で何とかなるような相手ではありませんよ?」
と、訝しられてしまったので、『収納』の実演と、その辺に落ちている手のひらサイズの石を軽く握り潰すことで砂に変えて、ある程度の実力を知ってもらうことにした。
しかし、やはり手ぶらの状態でギルド証を見せると、どうにも怪しまれてしまうな。普段は自分の身分を手っ取り早く伝えるために、ギルド証は紐に括って首から下げているのだが、あまり有用な手段では無いのかもしれない。
昨日西門で会話をした門番はあまり周りに見せない方が良いとは言っていたが、ギルド証も『収納』で仕舞って、提示するときに相手に『収納』を見せてやった方が怪しまれないかもしれないな。
「「ええぇ……」」
「とまぁ、大体これぐらいのことは容易にできるのだけど、それでも不十分かな?勿論、これが全力では無いから、これ以上のこともできるよ?」
「あっ、はい…大丈夫です。失礼しました……」
分かってくれたようでなによりだ。
納得というよりもドン引きという反応だったが。最早ドン引きされることにも慣れたものだ。彼等の反応を見ても、まぁ、そうだろうな、という感想しか湧かなくなっている。洞窟に入って依頼をこなしていくとしよう。
洞窟の内部は、洞窟と言うよりも坑道に近い構造をしていた。
図書館で読んだ本によれば、何でもはるか昔に錬金術師でかつ優秀な魔術師だった偏屈な変わり者が、この洞窟の奥地に引きこもり生活を始めたそうだ。
で、その変わり者は、絶えず鉱石を入手できるようにするために、魔力さえあれば半永久的に鉱石が生成され続けるという、錬金術師どころか鍛冶師にとっても夢のような人工鉱床を複数作り上げたらしい。
変わり者が没して長く経つが、彼が亡き後も彼が作り上げた極めて強力な守護者《ガーディアン》は機能を保ったままで、洞窟に入れば、容赦なく始末されていたとのことだ。
それからしばらくして臨時で組まれた”一等星《トップスター》”による複数の一行によって討伐されることになった。
調査をしてみれば、変わり者が作り上げた人工鉱床は機能を維持したままだったのだ。
これ以降、この場所は昨日私が行った森と同様、国によって管理されることとなり、ティゼム王国にとって資源を得るための重要な土地となった。
はて、ここで1つの疑問が浮き上がって来た。
昨日向かった森と言い、この洞窟の人工鉱床と言い、このような場所があれば、それだけで国を十分に潤わせると思うのだ。それにも関わらず、この国は”楽園”から得られる資源によって生計を立てていると認識されている。
騎士の日記、資料室の本からもその情報は間違いない。
確かに、森で採取した素材と”楽園”で得られる素材とでは、あまりにも品質も性能も違い過ぎるのかもしれない。だが、だからと言って無価値という筈は無いのだ。
少なくとも、様々な鉱石を半永久的に入手することの出来るこの洞窟は、それだけで国の財産になるだろう。でなければ国で管理することにもならない筈だ。
私一人で考えても分かることでは無いな。国のことは国の者に聞けばいい。
エリィは…彼女には大変失礼だが、あまり望んだ回答が得られない気がする。非常に身勝手だが、私の偏見だ。聞くのならエレノアか、商業ギルドの窟人《ドヴァーク》が良いだろう。
考察はそのぐらいにして、依頼をこなすとしよう。
この洞窟に造られた人工鉱床は一つの鉱床から取れる鉱石が確定している。
つまり、決まった場所の鉱床へ行けば目的の鉱石が得られるということだ。そこで得られた鉱石をギルドから渡された袋いっぱいに詰めて持ち帰れば良い。依頼のランクが”初級”なのはそのためだろう。
ただし、危険が無いわけでは無い。半永久的に鉱石を得るためにこの洞窟全体を強い魔力が循環し続けている。その影響で、この洞窟は絶えず魔物が生まれ続けているのだ。
魔物と魔獣の違いは獣かそうでないか、というわけでは無い。
魔獣は元は獣である。強力な獣が大量の魔力を浴びたり宿したりすることによって体内に魔力を生み出す器官が作られ、肉体が変質していった者が魔獣だ。その生まれのルーツ上、どの魔獣も魔力が非常に高い。
それに対して魔物は、高密度の魔力が実体を持ち、変質していった者達の総称である。故に、一見魔獣に見えても魔物がルーツであるような者も存在はしている。
驚くべきことに、この魔力から産まれた魔物、繁殖が可能である。しかも魔物によっては、異種族間ですら繁殖が可能であると図書館の本に書いてあった。
何処かで聞いたことのある生命体だ。
無から…正確には、魔力から産まれて他の生命体と繁殖が可能な生物。そう、ルグナツァリオ達が最初に生み出した生命体。魔族の祖だ。
ルグナツァリオはこの星が魔力を生み出せるように作り替えたと言っていた。
ならば、魔物という生物は、この星が生み出した命では無いだろうか?もしかしたら、私も…?
流石に確認のしようが無い。今度ルグナツァリオに会った時に、魔物のことだけでも”答え合わせ”をさせてもらうとしよう。
さて、依頼の話に戻るとしようか。
鉱床から鉱石を得るだけならば容易なのだが、決して安全というわけでは無い。
先程も述べた通り、絶えず魔物が生み出され、洞窟内を徘徊しているのだ。
ちなみに、魔力を生み出す大元の装置が洞窟の最奥にあるためか、奥へ行くほどに魔物の強さが上がっている。放置しておけば、たちまち魔物の巣窟と化すだろう。
この洞窟の鉱床には錬金術師や鍛冶師が自分で採掘に来る者もいるのだが、そんな彼等が魔物達の餌食にならないために、そして魔物の巣窟化を防ぐためにも、この洞窟の討伐依頼は常に置いてあるとのことだ。
中には”星付き《スター》”が適正ランクの依頼もあり、半ば常設依頼に近い扱いをされている。
私が入り口から最寄りの鉱床、鉄鉱石の鉱床がある場所まで歩いていると、早速魔物の群れが押し寄せてきた。
総数は18体、種類は依頼の内容通りコウモリ、ムカデ、ミミズ、モグラである。どの魔物も私が最初から所持していた知識の中にある者達よりも遥かに巨大だ。
名前も実に安直で、種族名の頭にジャイアントだのラージだのビッグと言った巨大を示す言葉が付いただけのものだ。分かり易くていいとは思うが、もう少し何とかならなかったのか?
ちなみに、ミミズだけはロックイーターという、比較的魔物らしい名前だった。まぁ、出現の仕方を見れば、石を食べながら移動していることは一目瞭然なので、結局このミミズもそのまんまな名前なのだが。
本来、”初級”の冒険者が手ぶらでこの状況に対面したら、間違いなくその命を散らしてしまうだろう。だからこそ、入り口にいた見張りも慌てて私を止めたのだ。
だが、今回この場にいるのは私だ。
それでは、早速討伐していくとしよう。
尻尾カバーに”成形《モーディング》”を施し、魔力の剣を成形させる。魔物達と私までの距離はまだ20メートルほどあるが、今現在周囲に人の目も無いことだし、遠慮なく尻尾を伸ばさせてもらおう。
図書館で読んだ魔物達の急所に相当する場所に魔力の剣を素早く突き入れていく。鰭剣《きけん》で物を切った時と同様、抵抗は全く感じなかった。
討伐の証明なのだが、これがまた驚いたことに、ギルド証がカウントしてくれているようなのだ。
つまり、討伐対象の部位などをギルドに提示しなくとも規定数対象を討伐討伐してギルド証を受付に提示すれば、それで依頼完了である。
つくづく便利な代物である。正直、今の私では、何をどうやったらそんなことができるのか皆目見当もつかない。いずれ魔術具の専門家と友好な関係になったらその時に教えてもらおう。
討伐した魔物の部位だが、場所によっては貴重な素材となり、各ギルドで買い取ってくれるのだ。
依頼達成回数には関係は無いが、奪った命は極力有効活用させてもらおう。死体を綺麗に解体して本で読んだ素材になる部位を『我地也《ガジヤ》』で作製したガラスの容器にそれぞれ保存していく。
素材にならないような部位は…このまま『我地也』を使用して穴を作り、そこに埋めてしまおう。
どの魔物も規定数にはまだまだ足りない。だが、洞窟には入ったばかりだ。鉄鉱石と銅鉱石、それぞれの鉱床まで移動している間に十分な数と遭遇できるだろう。
鉄鉱石の鉱床のある場所までたどり着いた。
残念ながらまだ討伐数はどの魔物も依頼達成までの数を討伐できていない。後2回ほど遭遇できれば依頼達成となるのだが、銅鉱石の鉱床に着くまでに遭遇できるだろうか?
まぁ、方法が無いわけでは無い。討伐対象の魔力反応は既に把握している。向こうから来ないのであれば、こちらから向かえばいいだけの話である。
まぁ、それはそれとして、鉱床までたどり着いたのだ。今は採掘に専念しよう。
鉱床は、ドーム状の大きな空間にイスティエスタの一般的な住居と同じぐらいの大きさの岩があり、その岩から枝が生えていくように所々から鉄鉱石が尖った状態で鉱床から突き出ている。
明らかに本来の鉄鉱石の在り方ではないだろう。まぁ、これを作った変わり者が鉱石を半永久的に入手するために造ったのだ。自然と同じような環境ではないのも当然だな。
鉱石の回収は突き出ている鉱石をつるはしの類を用いて砕いてしまえばいいらしい。しかも放っておけばそれこそ芽が出るように再び同じ場所から鉱石が生えてくるというのだ。
砕いて回収しても問題無いのだが、一々拾い上げるのが面倒だな。かと言って魔力の剣で鉱石を切り裂いた場合、私の魔力が鉱石に悪さをする可能性が高い。
というわけで、鰭剣を使うことにしよう。
尻尾カバーを取り外し、鉄鉱石の根元の部分を鉱床のスレスレの位置から鰭剣を滑らせる。
やはりまるで抵抗を感じることなく鉄鉱石の塊を切り取ることができた。久々に使った気がするが、とんでもない切れ味だ。
袋に鉄鉱石を入れようと思ったが、この綺麗な切断面を見せたら何か言われそうだと気付き、鉄鉱石の塊を手ごろなサイズに手で砕くことにした。
こんなことなら手刀でも当ててへし折った方が良かったな。袋にはまだ余裕があるし、次からはそうしよう。鰭剣に尻尾カバーを被せ直した。
鉄鉱石の採取が終わり、銅鉱石の鉱床へ向かう途中、魔物の群れに2回遭遇できた。
そのおかげでコウモリ、ムカデ、ミミズは規定数討伐できたが、モグラの討伐数だけは1体足りなかった。
仕方が無いので銅鉱石の採取が終わった後にでもモグラの魔力反応を辿り、1体だけ討伐させてもらうとしよう。
銅鉱石の鉱床も、外見的には鉄鉱石とほとんど変わらない。強いて言えば、鉱床の色が灰から茶になったぐらいか。
今度は最初から銅鉱石の塊を根元の近くを手刀でへし折り、袋へと詰めていく。
塊のまま袋へと入れているため、かさばってしまい手ごろなサイズに砕いた時よりも数が少ないと思い、一つ余分に銅鉱石の塊を『収納』に保存することにした。
銅鉱石の採取が終わってもモグラが近づいてくる気配が無かったので、此方からモグラの元まで向かい、少し離れた所から、尻尾で頭部を軽く叩き付けた。
ギルド証を確認してみれば討伐完了となっていたので、斃したモグラをこちらまで手繰り寄せて解体して『収納』へしまった。これで洞窟の依頼は完了だ。山へ向かうとしよう。
洞窟へ出た際に呼び止められて依頼の進捗を聞かれたのでギルド証を見せて討伐が終わったことを確認してもらった。
相変わらずドン引きされたが、まぁ、”初級”冒険者がこの洞窟に入って短時間(体感時間で約20分)で複数の討伐依頼を終わらせて出てきたのだ。相手からすれば、さぞ訳が分からないと感じるだろう。
だが、私の実力は既に一部の者からは”一等星”と同等と認められているのだ。この程度のことは隠す必要もないだろう。例えそれでドン引きされることになったとしても、素直に受け入れよう。
洞窟から離れ、次の目的地である山まで、軽く駆け抜けていくとしよう。
目的地に到着した。洞窟から山に到着するまでに掛かった時間は、大体1分ぐらいか。
普通に歩いた場合、大体一時間ほど掛かるといったところか。まぁいい。山での依頼を再度確認しよう。
採取依頼の内容は頂上に生える3種類の薬草、それぞれ根を残した状態で10本ずつ採取する。
薬草の効能は家庭用傷薬、解熱剤、滋養強壮剤の3つだ。
これらの薬草は非常に生命力が強いらしく、8割ほど根が残っているならば再び成長して瞬く間に茎を伸ばしていくらしい。
ただ、その生命力と成長速度が原因で他の植物の栄養を奪う傾向があり、下手に栽培をしようとすると、辺り一面がこれらの薬草で埋まってしまうそうなのだ。
敢えて環境を厳しくすることで成長に制限を掛け、定期的に採取することによって、安定した薬の供給が可能になっているのだとか。
この薬草の採取自体は非常に容易ではあるが、場所が”中級”の冒険者が対応するような魔物・魔獣の生息地な上、低いとは言え山の頂上まで登る必要があるため、依頼のランクも”中級”扱いになっている。
討伐依頼は中腹以降に生息している植物型の魔物と大鷲の魔獣だ。
植物型は周辺の樹木に擬態していて、獲物が近づくと蔦で対象の動きを封じた後、硬質化した枝で叩きつけて命を奪う邪木鬼《じゃぼっき》という魔物だ。殺した命は、そのまま自分の根元に手繰り寄せて養分にするらしい。
話だけ聞けば恐ろしい魔物に感じるが、実は周囲の魔力反応とはまるで反応が異なり、魔力を感知ができれば容易に見分けがつく。
そのうえ、樹木のためどうしても火に弱い上に遠距離攻撃手段を持たないため、識別ができれば比較的容易に討伐が可能だ。火矢でも打ち込めば一撃で斃せる、とのことだ。
それほどまでに燃え易く、それでいて長時間燃え続けるため、邪木鬼は薪として重宝され、寒冷地ではそこそこ高値で取引されるらしい。私の場合は討伐に火を使う必要は無いだろうから、存分に薪として回収させてもらおう。
大鷲の魔獣は、これまた安直にエビルイーグルと呼ばれる魔獣だ。
高所であるならば世界中どこにでも生息しているらしく、大抵の場合は生息している土地、ないし国の名前、もしくはそれをもじった単語がこの魔獣の頭に着く。今回ならば、”ティゼミアンエビルイーグル”がこの大鷲の正式名称だ。
世界中に生息していることから、行動範囲も繁殖力も非常に高いと言われている。獲物の頭上を通る際に魔術によって影を操り獲物を拘束し、上空から風の魔術を確実に当てる戦法を得意としている。
飛行速度も同じランクの魔獣の中ではかなり早い部類のため、移動中は動きを捉えるのが難しい魔獣だ。
これだけ聞けば邪木鬼同様かなり厄介な相手に聞こえるが、そうでもない。
実のところ、遠距離攻撃手段を持ち、ある程度狙いを付けられるのであれば脅威度はかなり低い。
何故ならば、エビルイーグルの放つ風の魔術は”中級”の冒険者が装備を整えれば十分に耐えられるほど威力が低いうえ、魔術で攻撃する際は相手が移動を制限されているのを良いことに、その場で停滞してしまうのだ。要はお互い的になってしまっているのだ。
仲間がいるのならば、自分を攻撃している最中に撃ち落としてもらえばいい。
そんなエビルイーグルだが、巣がどこにあるのかは判明していない。エビルイーグルの肉自体は大きいうえに脂が良く乗っていて美味いらしいので、きっと卵も大きくて美味いだろう、と美食家達が想像を膨らませているそうだ。
もしもエビルイーグルの卵を見つけることができれば、確実にオークションに出されて最低でも数十枚の金貨が飛び交うことになるだろう、と図書館の本には書かれていた。
そんなグルメ的にも金銭的にも旨そうなエビルイーグルの卵に興味が無いわけでは無いが、間違いなくこの辺りには卵はおろか巣も無いだろう。素直に規定数討伐することにしよう。
そんなわけで、現在は邪木鬼とエビルイーグルを討伐しながら山頂まであと少しと言ったところだ。
どちらも規定数まで討伐は完了している。素材の買い取りは自由に選べるというので、1羽は宿の主人に提供して鶏肉の料理を作ってもらうとしよう。ああ、夕食が楽しみだ。
そんな風に上機嫌で山頂に到着すると、そこには全長6メートルほどの巨躯を誇る、前足の代わりに翼を持った巨大な蜥蜴が鎮座していた。
そう。ごく稀に確認されるという、”上級”の冒険者が必ず一行で対応すべきと言われるほど危険度の高い魔物、翼竜・ワイバーンである。
なんてこった。