「さぁ。なんの御依頼でしょう?」
サーフィーがお茶を出して
依頼者の女性に問う。
「…私、小学校の頃から差別されていて
いつも虐められていました。」
「それに…私の肌は黒くて
変に思われてたんでしょうけど
そういうの許せなくて。」
「懲らしめてほしいんです…。」
女性が言うとクルルが答えた。
「差別って消えないんですよ。
懲らしめたとしても消えることはないでしょう。」
「けれど、それで満足するなら引き受けます。
それで気持ちが治まるなら良い。」
その答えに、少女は考えた。
「…満足します。だってあの人のせいで
人生が積み木のように崩れたのだから…」
そう言うと少女は話し始めた。
私が小学2年生のとき
ある男の子がこう言ってきたのです。
「お前は黒人だから一緒に遊んでやんねーぞ。」
「肌が黒いから心も黒い。」
なんて酷いことも言われましたわ。
そんな言葉、使っちゃいけませんって
先生が注意したのだけれど、反省の理も表さなかった。
私が言い返せないから、全員面白がって
虐めてきたの。けど、これだけならマシだった。
丁度5年前の夏…やっと女友達ができて
ワイワイとしていたのに女友達に裏切られたの。
「キャー!リーゼに殴られたぁ!」
図画工作をしているとき
女友達が急に叫んだの。
そうしたら皆の視線は私に向かってきて
虐められて人生転落。このときから女が怖いわ。
「だから女友達の
彩花ちゃんにその苦しみを…」
女性が言うとサーフィーがうんうんと頷く。
「差別はやだねぇ。みんな同じ人間なのに
人を踏み捻って自分の立場を上げる…って
汚いよねぇ。けど、そうしないと成り立たないのが
現実だったりする。理不尽で救われる人も居るんだよ。」
「けど!これは仕事だから引き受けるよ!
だから代償に…一番大事なもの頂戴!」
サーフィーがクレクレ!っと手を出すと
女性は困った顔をして
ポケットからキーホルダーを出した。
「これ…5歳の頃から持っていて
大事にしてるものなのですが…こんなので宜しくて?」
女性が聞くと
サーフィーがキーホルダーを取って言う。
「うん!いいよ!引き受けよう!」
サーフィーがクルルの方を向くと
クルルも「うん。」と言った。
「ありがとうございます。では、さようなら!」
女性が手を振って
店内から出ていくと
クルルはキーホルダーを見ていた。
「なぁ、気になったんだけど
マッコウクジラのキーホルダーなんてあるんだな。」
「え?マジじゃん。」
真っ青のマッコウクジラの縫いぐるみで
とても可愛かった。そのためか
クルルはずっと手に握っていたが
サーフィーは気に求めていなかった。