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「三毛錫(みけし)!」
「おう!」
水葉(みずは)が三毛錫にパスを出す。パスを出した後スクリーンの役を果たし、三毛錫をゴール下へ行かせる。
しかしゴール下には先輩という怪物がいる。水葉はスクリーンを果たした後
スリーポイントの半円のラインをなぞるように走っていき、三毛錫に視線で合図を送る。
三毛錫が水葉にパスを送る。パス自体は通ったが、さすがは怪物たち。
すぐにマークがついたので、水葉はドリブルで切り込む。と見せかけて
ロールターンという技を使ってスリーポイントラインまで戻る。そしてすぐさまシュートの体勢に入る。
怪物もさすがに不意をつかれたが、それでもシュートを防ごうと喰らい付いてくる。
なので水葉はフェイダウェイシュートという
後方にジャンプしながらシュートをするというシュートを行った。
水葉の手から放たれたボールに怪物の手が届くことはなく
綺麗な放物線を描いてゴールのリングがついているバックボードという後方の板にあたってリングにあたり
ボールはネットの中へと入った。
「っしゃ」
「ナイス水(みず(水葉のアダ名))!」
「ミケ(三毛錫のアダ名)との連携も完璧だったな!」
「あざす」
「あざす」
先輩たちから褒められる。オレはあの日からなにかが吹っ切れたように部活の調子が上がった。
あの日というのは、ふらぁ~っと入った夜海月(やくらげ)学園で雅楽(がらく)さんの絵を見た日だ。
たまたま生徒の絵の展示を行なっていて、雅楽さんの絵に心撃たれたのだ。
なにか自分の中のくだらない「他人と比較する」ような気持ちがその絵の中でも表現されている気がした。
しかしそれを打ち消すように、自分とぶつかり、仲間と、相手とぶつかり高め合う。
その様を美しく描いていたようにオレには感じた。絵のことなど点でわからないし
美術の評価が2だったオレだが、素人ながらにそんなことを思った。そんなことを思わせるほどの絵だった。
さらにそこに雅楽さん自身の話もあってさらに頑張れた。雅楽さんは人と違う世界を見ていた。
いや、正確には見ている景色は同じだが、表現すると人と違ってしまう。らしい。
そのことで小さい頃は散々からかわれたらしいが、今はそれを強みにしているらしい。
なのでオレも世間的に見たら弱点と呼ぶものを、強みに変えることにした。
オレは中学時代、バスケ部の絶対的なエースだった。「オレは最強だ。無敵なんだ」と思っていた。
しかしここ、太陽(ひ)之光学園に入って、すぐにそんなことは幻想だったと気づかされた。
先輩は怪物的な強さで、同じ1年生でさえ、自分よりも強い人ばかりだった。
あの先輩は自分より素早くて。あの先輩は自分よりドリブルが上手くて。
あの先輩は自分よりも圧倒的なフィジカルでリバウンド獲得率が圧倒で。
あの人は同い年、同級生なのに自分よりシュートの正確性があって。
そんな風に周囲と比べて自分を下げる癖がいつの間にかついていた。
なのでその日から、オレはそれを強みとして捉えることにした。他人と比較して「自分を下げる」のではなく
他人と比較して「それを分析し、それに対応するにはどうしたらいいか」を考えることにした。
そして自分の武器で戦うならどうするか。とかも考え、自分の武器を磨き
たとえば素早さで敵わなくても、その素早さに喰らいつけるようにするには
どういう方法があるかという別角度から考えたりもしたし
もちろん素早さを上げる努力もした。そのお陰で先輩からも褒められることが多くなった。
「水葉、最近部活で調子いいらしいじゃん?」
お昼ご飯のときに同じクラスでサッカー部の龍海(たつみ)に言われる。
「あぁ~…。調子いい。んん~。ぼちぼちって感じ?」
「おぉ~。いいじゃん」
と龍海と同じサッカー部の銃立(じゅうた)が言う。
「そうか?自分で「最高にうまい!」って言えてない辺り、まだまだじゃね?」
「まあぁ~。そりゃーまだまだっしょ。オレら1年だぞ?
もう満足してたらここ(太陽之光学園)いる意味ねぇって」
と言う龍海に
「言うねぇ~」
と言う三毛錫。
「サッカー部もやっぱ辛い?」
「辛い…。辛い、よ?先輩マジフィジカルだから、よゆーで当たり負けするし」
「わかるわ。先輩が体入れてきたときの体勢崩される感じな。謎よな」
「そっか。サッカーって割と辺り激しいスポーツだもんな」
「そうそう」
「こっち(バスケ)はフィジカル的な当たりはファール取られることが多いから」
「そっかそっか」
「でも楽しいんだよなぁ~。辛いは辛いけど」
と芝に寝転がる龍海。
「わかる」
「好きこそ物の上手なれ。だよな」
「ま、そんな簡単じゃ、ねぇけどな」
「まあな。好きだからこそ辛いこともあるし」
「わかるわぁ~」
「わかる?好きだからこその苦言なわけよ」
時を同じくして、夜海月学園では、お昼ご飯を食べた後、のこが熱弁を振るっていた。
「私アニメ見るためにだけにCocomo((ココモ)スマートフォンや携帯のキャリア名)にしてるじゃん?」
とのこは自分のスマホを持って軽く左右び振る。
「してるじゃん?って言われても知らんけど」
と縁片(ゆか)が言う。
「知っとけ?ねえ?モンちゃん?」
とのこや縁片たちと同じように机を囲み
座布団を敷いたイスに座るいろはの家族のキンカジューのモンブランに話しかけるのこ。
モンブランは黒くて大きなクリクリお目目をのこに向け、首を傾げる。
「かわよい。でさ?cアニメストア様にはめちゃくちゃお世話になってるのよ。
マジ最高なのよ。昨日までなかったアニメが、次の日には全話揃ってたり。
マジ二次元好きからしたらCocomo様には頭が上がらんのですわ」
とスマホを頭の上に掲げて頭をペコペコ下げるのこ。
「でね?本題はここからなわけ」
ここからなんだ
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。
「ランキングをチラッっと見たのよ。私自分が好きなジャンルしか見ないから
世間のランキングで左右されるような軟(やわ)な女じゃないからさ?
したらさ?上位が軒並み異世界系、バトル系の作品ばっかなの。
ま、一般人ウケがいいからランキング上位入ってるってのもわかるんだけど
ヲタク界隈でも人気なのよね?ま、昔からそうなんだけど、最近は輪をかけて。
その理由がさ?日常系の作品にリアリティーがないからなのよ。
たとえばさ?私ピアスめっちゃしてるじゃん?」
とのこは綺麗な白い髪を左右交互に耳にかけ、耳を見せた。
のこの耳には銀色や金色の金具が無数についていて、キラリと輝いていた。
「めっちゃしてるよねぇ~」
と言ういろはに
「可愛いぃ~」
と言う笑華。
「あざす。でさ?ピアスしてる理由ってのがさ?
もちろんピアスが好きってのもあるし、可愛いからってのもあるんだけど
マンガを描くにあたって、ピアスのディテールについて知りたかったんだよね?
痛みとかピアスを開ける部位とか」
「変態だ」
と言う縁片。
「そんな褒めるなよぉ~」
「褒めてぇ~…。ま、受け取り方によるか」
「ちな、この髪もマンガのためだから」
とのこは白い髪をつまむ。
「どーゆーこと?」
と絵華が聞く。
「ほら。マンガ、アニメ、二次元の世界でさ?白い髪ーとか青髪とか赤髪ってザラにいるじゃん?
その髪色ってね?触れないことが暗黙の了解なのよ。
その世界ではそーゆー感じなんだって。キャラの描き分けのためだからってね?
でも最近、安易に髪色について触れる作品が増えてきてね?
でもさ?描き手はブリーチやカラーリングについてほぼ知らないわけ。
マンガ家様なんて大抵、空想がお得意で、絵を描く時間があった孤立陰キャ童貞男性が多いわけだから」
と言うのこに
“様”付けで呼んでる相手に酷い言い様だな
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。
「だから私は、ブリーチの頭皮の痛みも、ブリーチしすぎて痛みに慣れる感じも
白を保つ大変さも、ピアスの開ける位置とかも私は拘って描きたいわけ。
最近のヲタクは「萌へぇ~」とか言う萌え豚だけじゃないのよ。私みたいなのもいるわけよ。
ま、私はまだヲタクとは名乗れないようなペーペーなわけですがね?
私みたいなヲタクは、ピアスのディテールとかそういうとこ見て
リアリティーがなかったらそこで蛙化するわけよ。一気に冷めるわけ。
でもさ?考えてみてよ。異性界とかなら、ピアスとかのリアリティーなくても“異”世界だからね?
髪色があれでも「あぁ、そういう世界なのか」で片付けられるのさ。
読者、視聴者から文句を言われづらい。だから描き手側も異世界とかに手を伸ばすわけさ。
見る側も、はなから異世界ならリアリティーとか気にせず見れるから、おのずと人気ジャンルになるってわけ。
でもさ?私たちみたいな日常系が好きな民は、どんどん日常系が減る。
あってもリアリティーがなくて蛙化するなんて作品ばっかだったら
私たちのエネルギーはいずれ枯渇するわけよ。ま、過去作からエネルギー摂取すればいいんだけどね?
あ、勘違いしないでほしいんだけど素晴らしい作品が、“ない”わけじゃないから。
ピアスしてないキャラがいる作品もあるし、ピアスしてても耳たぶだけとかいう作品も
あ、この作者様、ピアスについて理解してる、もしくはピアス好きなのかなぁ~って思う
ピアスのディテールとか、開けてる位置のリアリティーがある作品とか
あとバカげたハーレム恋愛とかじゃない純粋ピュアなラブコメもあって
それのお陰でエネルギー補給はされてるの。ほんと作者様ありがとうございます。
この場を借りて感謝申し上げます」
と言いながら頭を深々と下げるのこに
どの場を借りて?
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。
「でさ?」
と言うのこに
まだあるのか
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。
「私は描くときに心がけてるのが、知らないことを知らないまま描かないこと。
リアリティーの話に繋がるんだけどさ?たとばラブコメで「お試しで付き合ってみる?」
なんて展開たまにあると思うんだけどさ?そんなこと言うやつロクなやつじゃないでしょ。
だからラブコメ描く場合も、自分がキュンキュンする異性の性格とか容姿、場面…なんかをぉ~…。
…そうか。「お試しで付き合ってみる?」とか言うのを描く作者様は
そーゆーロクでもなし男くんが好きなのか…」
謎に納得するのこ。
「でも私は、私がキュンキュンするような、理想の恋愛を描くわけ。
一般の感覚をお持ちのヲタクの皆様が「あっ。いいなぁ~」って思うような。
でも私は女の子なわけじゃん?ってなるとヒロイン側の気持ちは詳細に描写できるけど
男側の気持ちはわかった気でいるけど
少女漫画読む男性側からしたら「こんなんねぇわ」ってなる可能性があるわけじゃん?
そーゆーのを極力無くしたいわけ。だから私は男側の描写を描くときは、ちゃんと男子に聞いて描いてる。
「こーゆーシチュ(シチュエーション)だったらどう思う?」とか。んで、そう!」
なにかを思いついた様子ののこがさらに続け様にPipebomb(マイク爆弾)を投下する。
「リアリティーとかもそうなんだけど、現実世界でもクソだって思うことを
夢しかない二次元世界に持ち込まないでほしいわけ。
マンガ紹介のMyPipe動画で登録者150万人とか、嘘でも、マンガの中でも言ってほしくないわけ。
いくらマンガタイムさららでもやって良いことと悪いことあるからね?気持ちが悪ぃ。
意味わからんくない?てめぇよりこっちのほうがよほどマンガ読んでるわっての。
どうせ電子だろ?って。こちとら書籍買ってんだよって。
それでなに?紹介ですぅ~って動画投稿して金貰ってる?マジふざけんなよ気持ち悪ぃ。
マンガ家様がさ?頭捻って汗水垂らして、人生削って、世界を1つ作り出してんのに
それを読んで「あーおもしろかったー。見てーこれーおすすめー」とか言って金貰う?
二次創作より1億倍タチ悪いわ。映画紹介とかも同じだよね。私は知らんけどさ?原理は同じじゃん?
それで言うとゲーム実況者がたまに出す「今絶対読んでほしいマンガ」とかいう動画も
いくら好きで見てる実況者だろうがマジ速攻非表示にするよね。気持ち悪ぃから。
でもこれを言うと「ファンは同じ本を読みたいんですぅ~」とか言うけど
だったらポツッターで投稿してろよって話じゃない?それをビジネスにすんなよって。
“自称”ヲタクを名乗る詐欺師芸能人がやってるマンガ、アニメ紹介番組とかコーナーも同じだよね。
私、芸能人とかMyPiper、著名人で「マンガ、アニメ好きです」とか
「ヲタクです」って公言してる人、全員詐欺師だと思ってるから。
番組持ってギャラ貰って?んで原本買わずに電子で読む。原作者様への還元率低いのに。気持ち悪すぎ。
でさらにキモいのは、マンガ、アニメ原作の作品が
…あぁ…口にするだけで口がかぶれそうなんだけど、実写化?とかしたときに
コメントで「いやぁ~原作からのファンなんですけど、素晴らしい再現率でした」…。
は?ヤバすぎるでしょ。そもそもなんで実写化って許されてるの?あれ倫理的に犯罪でしょ。
原作者様は頭捻って汗水垂らして、人生削って、作品を作り上げててさ?
その設定を丸パクリしたマンガを別の人が描きました。そしたら「パクリだ!」って言われる。
これ当たり前のことじゃん?なのになんで次元超えたらそれが許されるの?意味がわからない。
しかも質を落としてだよ?…。あ、ごめん。脱線したわ。
あの気持ち悪いことしてる人たちの話だ。そーゆーやつら全員に言えること。
動画とかにして収益上げてる、番組、コーナーにしてギャラ貰ってる時点で
てめぇはファンでもヲタクでもなんでもねぇ。
バラエティー番組とかドラマを無断アップロードしてる犯罪者と変わんねぇから。
その点私みたいな?マンガが好きで一次創作側に回る人はピュアな愛よ。ピュアJ民よ」
ピュアJ民ってなに
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。
「わかる?この違い。好きな人の良いところを言いまくって、ライバル増やしてるバカ女と
好きな人の良いところは知ってる人だけが知ってればいいと思う一途な女の違い?
どお?好きな人を宣伝しまくっていろんな女とチッスしまくってる好きな人」
「チッス」のときに人差し指と中指だけを立てた手を「チッス」とするのこ。
「自分だけが好きな人の良いところを知ってて、ま、自分だけってことはないだろうけど
周りに宣伝したりせずに、少ない人が良いところを知ってる好きな人。どっちがいい?
どっちがいいというかみんなはどっち?たとえば自分の彼氏、もしくは好きな人が優しくておもしろくて
キュンキュンさせてくれるからっていって「ちょっと1回デートしてみ?」って言う?」
「言わない」
「言わないねぇ~」
「言わないねぇ~」
「言わない、かな」
「だしょ?それなのよ。それが愛かい?っていうね?でさ?」
と言うのこに
まだ続くんかい
と思う絵華、笑華(わか)、縁片、いろは。そしてモンブラン。お昼休憩の時間が終わり、午後の授業へ。
龍海は爆睡、三毛錫はスマホで世界のバスケ選手のプレイを見る中
水葉は授業中、スクールバッグの中を見る。
スクールバッグの中には、透明なビニールに入れられたハンカチが。
そのハンカチは水葉が夜海月学園に訪れたとき、絵華から貸してもらったものだった。
もちろん洗濯して返すために家に持ち帰り、洗濯に出し、母に姉のものだと勘違いされ
「お母さん、これ私のじゃないよ」
「え?お母さんのでもないよ?」
などという会話で言い出しづらかったが
「オレんだよ」
と言うと
「水葉のぉ~?誰からのプレゼントだよぉ~。彼女かぁ~?」
などと姉にからかわれたりしたが、部屋に戻り
次の日の部活終わりに100円で買い物ができるお店で透明のビニール袋を買い
丁寧に梱包して返そうと思ったのだが
よく考えたらオレ、雅楽さんの連絡先知らないわ…
返す日程を伝えようにも伝える手段がなかった。机をトントンと指先で突きながら考える。
夜海月学園の校門の前で待つ?…いやいやキモすぎる
夜海月学園で「雅楽さんって知ってます?」って聞いて
知ってる人がいたら「雅楽さんの連絡先教えてくれませんかね?」…いや、よりキモい
かといって他の手段も思い付かなかった。スマホを取り出す。画面をつける。
LIMEのアイコンが目に入る。そこで思いついた。
中学時代の知り合いに連絡を取って、同じ中学で夜海月学園に入学した人がいないかというのを聞く。
雅楽さんは同い年だから、ワンチャン同じクラスかもしれない。ということを。
同じ中学の仲が良かった男子に連絡を取って聞いてみた。
すると、とある双子の幼馴染と仲が良かった女の子の友達が夜海月学園へ行ったという情報を得て
その女の子の連絡先を送ってもらった。
恋弁「同じ中学だった竹馬(たけば)くんって覚えてる?」
という連絡をもらったのは笑華だった。
笑華「あぁ~竹馬((たけうま)笑華の認識)くんねー。覚えてるよー」
恋弁「そうそう。その竹馬くんが笑華の連絡先知りたいんだって。教えてもいい?」
笑華「いいよー。ていうか中学のグループLIMEにあるでしょー」
恋弁「たしかに。じゃ、連絡先送っとくね」
笑華「りょかーい」
というやり取りの後
水葉「急に連絡してごめん。雪蔵(ゆきぐら)さんって夜海月学園なんだよね?」
と水葉から連絡が来た。連絡先を知らなかったため
メッセージが来たら上部に「追加」「ブロック」などが出てくる。笑華は
ここでブロックしたらどうなるだろう
と考えていたが、普通に返信した。
笑華「そうだよー」
と帰ってきた返信を眺めながらも
…ダメだ。雪蔵さんがどんな人だったか点で思い出せない…
と思う水葉。アイコンに本人の顔がある場合はアイコンを見れば辛うじて思い出せる可能性はあるが
笑華のアイコンは本人ではあるものの、図書室か図書館であろう、本が無数にある棚を背景に
笑華本人であろう人物が本で顔を隠している写真だった。なので笑華本人の話はせずに本題を聞くことにした。
水葉「いきなりでマジ申し訳ないんだけど
同じ学年に雅楽さんって人いると思うんだけど。雅楽絵華さん。
同じクラスだったりしない?」
というメッセージをもらって
およよ?
と思う笑華。
笑華「友達だよー。絵華ちゃんのこと知ってるんだー」
というメッセージに対して
おっ!えっ?マジか!
とビックリして思わず体が動き、机がガタンと音を立てる。クラスメイト、そして先生の視線も水葉に注がれ
「なんだ竹馬。寝てたのかー」
と先生が言うと、クラスメイトがクスクス笑う。
「ちゃんと起きてろよー」
と軽く、冗談混じりに注意されて「あ、さーせん」的な感じを出す水葉。
そして授業が再開されてからまたスマホに視線を落とし
なんて答えよう…
と思いながら返信をする水葉。
水葉「こないだ夜海月学園行ってさ。そこでたまたま」
「でさ?お礼がしたくてさ。連絡先教えてくんないかなぁ~って」
という水葉とのトーク画面を、スマホを絵華に渡して見せる笑華。
「ってな感じ」
「なるほど。ありがと」
と笑華にスマホを返す絵華。
お礼?私なにかしたっけ?
と思う絵華。
「で、どーするぅ~?」
「あ、私の連絡先送って?」
「ん。わかったぁ~」
そして笑華から
笑華「連絡先を送信しました」
と来てすぐに絵華の連絡先を追加し
水葉「いきなりすいません。前に絵を見させてもらってハンカチを貸していただいた者です。
その件はありがとうございました」
とまで入力する。その後の文を考える。
「ハンカチをお返ししたいので…」いやなんか違う、か?違くはないけど。
「お礼がしたいので…」これもなんか違うか?お礼なんて考えてないし、オレにできるお礼なんてないしな
と思い悩みながら最初のメッセージを送った。
水葉「いきなりすいません。前に絵を見させてもらって
ハンカチを貸していただいた者です。その件はありがとうございました。
もう一度会いたいので、お会いできませんか?」
という水葉からのメッセージを受け取って
会い…たい?
と思う絵華。
絵華「覚えてます。こちらこそご覧いただいて嬉しかったです。ありがとうございます。
私のほうは時間の都合はつけることができるので
竹馬さんの都合の良い日時を教えてくださればと思います」
というメッセージを受け取った水葉。午後の授業がすべて終わり
帰りのホームルームも終わり、教室を出る生徒、他クラスの子と話す生徒などで教室内がざわめき出す。
「三毛錫ー」
「なんじゃらほい」
「今度うち(バスケ部)練習ない日っていつだっけ?」
「なんだよ薮からスティックにー。…いつだっけ?」
太陽之光学園では、運動部は基本的に練習のない日はない。
太陽之光学園はスポーツ強豪校で、運動部がいつでも練習できるように。と
体育館も第一体育館と第二体育館とあり、1つの体育館が広い。
なのでバレーボール部が練習をしていたとしても、別の体育館でバスケ部が練習できたりする。
しかし、もちろん強豪校なので、1つの部活で人数もそこそこにいる。
なので大会前などは体育館を使えない部活が出てきたりもする。
しかしそういうときも、併設されているジムなどで筋肉をつけたり、スタミナをつけたり
モニターがある部屋でモニターに対戦校の過去の試合を流して対策を練ったり、ミーティングをしたりする。
なので基本的に
「休みないんじゃね?」
三毛錫が言うように練習のない日はほぼない。
もちろん冠婚葬祭や体調不良など、やむを得ないときは休めるが。
「ない…よなぁ~…」
「なんで?」
「いや、ちょっと出たくてさ」
「なんだぁ~?彼女かぁ~?」
と三毛錫が言うと
「は?彼女?」
と龍海が食いつく。
「違ぇわ」
「んだよ」
「単純に用があって」
「んん~…。じゃ、自主練日に行けば?」
自主練日とは、先程の説明であった、併設されているジムなどを使って
筋肉を鍛えたり、ランニングでスタミナをつけたりと
各自で課題を見つけ、それを自主的に練習する日のことである。
基本的にどの部活も週に2回以上は自主練日がある。
「自主練日かぁ~。自主練日なにしてたか先輩に聞かれて
出かけてたって言ったときの先輩のしつこさすごいからなぁ~」
「あぁ。「彼女かぁ~?んなんでスタメンなれると思ってんのかぁ~?」ってな」
「あぁ~。うち(サッカー部)でもそうだわ。でも仲良い先輩に聞いたら
自主練日、ふつーに彼女とデートしてる人もいるらしいよ」
「マジ?」
「マジマジ。自慢されたもん。プリパニ(プリント カンパニーの略称)見せられて」
「マジか」
「ま、夜中公園で会うのが基本らしいけどねぇ~。でも彼女がいるのも1つの強さだって言ってた」
「どゆこと?」
「ほら、大会に彼女呼んで、カッコ悪いとこ見せらんないわけじゃん?
だから彼女にカッコいいとこ見せるためにも強くならないと。って思えるんだってさ。
ま、彼女と会ううまい口実だと思うけどなぁ~」
「…なるほど。オレも彼女作ろうかな」
と言う三毛錫。
「三毛錫に彼女できたら「三毛錫に彼女ができました」って廊下に張り出すわ」
「じゃ彼女できても龍海にだけは言わないわぁ~。
オレに彼女できたらその繋がりで女の子紹介できるかもしれないのになぁ~?」
「すいませんでした。秘密にするので彼女作ってください」
「自分で彼女作る努力しろよ」
という龍海と三毛錫のやり取りの中、水葉は絵華にメッセージを送った。
「あとだいたいは友達に話合わしてもらうらしい。一緒にトレーニングしてましたぁ~って」
「なるほどな。じゃ、三毛錫、話合わしといて」
「んー。りょー、かいっ」
「んじゃ、練習行くかぁ~」
「楽しみぃ~」
「お。銃立(じゅうた)」
「やっと学校終わり。キツいわ授業」
「それなぁ~」
「でもこれからは楽しい楽しい練習じゃぞぉ~」
「楽しいか?」
「好きなくせにぃ~」
「好きだけど」
「あ。今日も練習終わり、コンビニおでんで乾杯しようぜぇ~」
「いいねぇ~」
と銃立、龍海、三毛錫、水葉は練習へ向かった。
水葉「いえいえ。
じゃあ、今度の日曜日とかどうでしょう?」
というメッセージを受け取って、そのメッセージを頭の片隅に置きながらキャンバスに向き合っていた絵華。
アイデアも思い付かなかったので片付けた。そして自習スペースに向かった。
夜海月学園は登校時間の決まりがないというのは知っている方は知っているだろう。
…当たり前のことを言ったが。ごく少数の企業や学校で取り入れられているフレックス制度の学校なのだ。
かといって大学のような感じかというと、大学のような単位制度ともまた違う。
普通の高校と同じように朝から普通に授業を行っている。
そして受けられなかった授業はというと、以前説明したように
パソコンやタブレットで授業の映像を見て授業を受けたことになる。
タブレットは学校内であれば持ち歩き可能なのだが、そのタブレットやパソコンがあるのが自習室なのだ。
かといって受けられなかった授業を受けたり、勉強をするためだけかというとそうではない。
自習室の隣に、壁無しで図書室がある。
なので勉強だけではなく、絵の参考資料を見たり、単に読書をしたりする生徒もいる。
そんな自習室で辺りを見回しながら歩く絵華。
「…。あ、いたいたぁ~」
と呟きながら近づく。そしてトントンと肩を叩く。
「ん?」
振り返ったのは縁片。
「お疲れー」
と言いながら隣の席のイスに座る絵華。
「お疲れー。どしたん?」
「デザイン画描いてるの?」
「そ」
縁片は服飾を習っており、自分で服を作っており、作る作らないは関係なく
毎日デザイン画、自分で考えたオリジナルの服のイラストを描いているのだ。
「どれぇ~?」
「いや、前に似たの描いたの思い出したから描き直してる最中」
「ありり」
「で?なによ。まさかそんだけじゃないでしょ」
「うん。実はさ?日曜日出掛けることになって」
と言う絵華に
いや「“実は”出掛けることになって」って、別に意外でもなんでもないけどな。
絵華ってうち(夜海月学園)ではまともそうなのに、やっぱちょっと変わってるとこあるよな
と思う縁片。絵華は「ん?」みたいな顔で首を傾げる。
「いや、続けて?」
「うん。でね?私のコーディネートを縁片に選んでほしくて」
「ほお」
「お願いしてもいい?」
「私でよければ?」
「やった」
小さく喜ぶ絵華。
「でも」
と縁片が右手の人差し指を立てる。
「ん?」
「ファッションにもTPOというものがあります。Time、季節や時刻。Place、場所。Occasion、場面」
コクコク頷く絵華。
「ファッションにはそこにさらにPerson、人。Sex、性別。Unique、個性なんかも加わるのね?
私は総称してSPOT UP(スポット アップ(その場の空間をより良くする))って言ってんだけど」
コクコク頷く絵華。
「まずは季節は今の時期に合わせるとして、何時?」
「何時。…わかんない」
「…。ま、いいや。1日コーデとして考えよう。場所は?」
「…決まってない」
「…カジュアルかフォーマルでいうと?」
「カジュアル」
「なるほどね?相手は?何人?」
「1人」
「男子?女子?」
「男子」
と言う絵華に「ほおぉ~?」という顔をする縁片。
「関係性とか聞いてもいい感じのやつ?」
「関係性…。こないだ来てくれた人?」
「…。あぁ~…あ?陽学(よーがく(太陽之光学園の略称))の人?」
「そうそう」
「な~…るほど?絵華はその人のことどう思ってる感じ?」
「どお?…」
考える絵華。
私の絵を見て泣いてくれた人?
「…いい、人?」
と言う絵華に
あ…。お相手の方、名前知りませんけど脈ナシです。ご愁傷様です
と思い合掌する縁片。
「ん?なにしてるの?」
「ん?あ、いや、なんでもない。で、絵華はいわずもがな性別は女子だけど
女子女子い服装にするかメンズライクな感じにするか」
「んん~。正直そこらへんまったくわかんないから、縁片におまかせしたいです」
「個性バッチバチに出すかどうかも?」
「あ、そこは控えめでお願いします」
「…了解?ま、要するに無難な服装ね」
コクコク頷く絵華。
「ま、まかせな。簡単だから」
「ありがとうございます」
ということで日曜日、絵華と水葉のおでかけが決まった。
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