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「俺は普通じゃないんで、あまり気にしないでください」

「そ、そうか。まぁ、身体強化魔法に傾倒している儂も普通ではないからのう。お互い様か」

「何故身体強化魔法は普通じゃないんです?」

爺さんの話によると……魔法使いや魔導士のポジションは、魔法が使えない替えがきく剣士や兵士が壁となり後方から魔法を放つ選ばれた人。それが世界共通の魔法使い(魔導士)の扱いらしい。

その替えがきかない魔法使いが態々前線でしか使うことのない身体強化魔法を覚える必要はない。つまりそれに傾倒している爺さんはかなりの変わり者、変人扱い。

その為、この街で借りられた物件は街外れの人が住むことが出来ない、ここしかなかったようだ。

まだ近接戦闘が出来る魔法使いにあったことがないから何とも言えないけど……

一般的な魔導士や魔法使いが上級魔法並みの攻撃力を有しているのなら、確かに前線で態々危険を冒して戦う必要はないよな。

「どうじゃ?失望したじゃろ?」

何人もの人からそういった眼差しを受けてきたのだろう。この老人に最早諦めの感情も見えない。

「全然。是非、身体強化魔法を教えてください!」

「こやつは…馬鹿じゃ。だが、儂は大馬鹿じゃからな!馬鹿は好きじゃ!」

こうして俺は爺さんの弟子になった。


爺さんの名はビクトール。歳は60から数えていないらしい。さあ、修行だ!

と、思っていたのに……

「今日は無理じゃぞ?ご飯を取りに行かねばならん」

「ご飯を取りに?」

「ああ。恥ずかしながら身体強化魔法では弟子もおらず、研究してもお金が貰えるわけもなく文無しじゃ。だから外に出て、魔物を倒してお金に変えたり、動物を狩って食事にしたりするんじゃ」

世知辛い世の中だな…日本人からすれば、身体強化魔法なんて転移と同じくらい嬉しいと思うんだけどなぁ。

「では、ウチにご飯を食べに来てください」

「いや…施しはのう…こんなじじいにもなけなしのプライドがあるでのう」

「施しではないです。教えを乞うのに報酬は付き物ですよね?もちろんお金も払いますが、今日のところはご飯で如何でしょうか?親睦も兼ねて」

人にノーと言わせないコツは、イエスと言うまで粘る事にある。これは以前テレビでしていた詐欺集団の営業方法だ。

爺さんが折れてくれてウチに来ることになった。

家の場所を目印と共に説明した俺は先に家路へと就いた。

爺さんは流石に汗だくの為、身を綺麗にしてから来るとのことだった。






「えっ!?じゃあお客様が来るってことじゃない!」

聖奈さんに説明したら怒られ申した。

これが、旦那が急に部下や同僚を連れて帰ってきた時の気まずさか……

「俺はミラン達を連れて帰ってくる。悪いな」

「ううん。言ってみたかっただけだよ。何か夫婦みたいだよね!それにマッチョお爺さんなんて絶対主要キャラだよ!よく見つけたね!」

いや、聖奈さんを喜ばせるために見つけたわけじゃないぞ?

夫婦発言は無視だ。





「いらっしゃいませ。迷いませんでしたか?」

何故か家の前でボーッと突っ立っていた爺さんを魔力視で見つけたので、出迎えに外に出た。

「迷わなんじゃが…凄いところに住んでおるのう」

「商人もしているので、お金はあるんですよ」

「何とまぁ。まぁ、身体強化魔法に興味を示した時点で普通の奴ではないと思うたが。

お金持ちということなら、気兼ねなくお呼ばれするわい」

爺さんと共に家へと向かい、玄関の扉を開いた。


「いらっしゃいませ。お待ちしていました」

「「いらっしゃいませ」」

聖奈さんとミラン&エリーの出迎えだ。

「おお。これはこれは。ビクトールというしがないじじいじゃが、お邪魔するぞい」

「ビクトール様。こちらへどうぞ」

聖奈さんに先導されて一同リビングへ向かう。



「おお!豪勢じゃな!」

テーブルにはこれでもかと料理が並べられていた。

作り置きの温めるだけの物がリゴルドーに沢山あって良かった。

「全てこちらの聖奈が作った物です」

「お口に合えば良いのですが。こちらの席へどうぞ」

聖奈さんが椅子をひき着席を促した。


今日のメニューはシチューにステーキ、シーザーサラダにパン、果物にワインだ。

この世界でも存在していそうなメニューだが、同じ味を出すのは至難のわざだろう。

爺さんは終始『美味い!』を連発していた。うん。美味い。



「こんなに美味しい食事を頂いたのは初めてじゃわい」

「お口にあった様で何よりです」

食後に改めてお礼を述べる爺さん。

年寄りだが、肉体年齢が若いから肉もペロリだったな。

「セイは若いのに全てを手にしておるのう。美味い飯、美味い酒、美しい女性達、お金、商人としての立場、魔法使いとして冒険までしておる。それなのに世間から白い目で見られる身体強化魔法に手をつけようとするとはのう」

「商人としての立場は偶々王族と知り合えたからですよ。それに周りがどう見るかは周りの自由なので、気にしても仕方ないです。それが自分のしたいことなら」

この世界は人が弱すぎるんだよな。安全に旅を…違うな。脅威から仲間を守れる力が欲しいんだ。

後、カッコいいから!




翌日から稽古は始まった。

「身体強化魔法習得の為には、魔力を身体の隅々まで渡らせなければならない」

いや、それが出来ないんだけど。才能がないのか…?

「その為の魔法がある」

あるんかいっ!


その後、魔法の発動条件などを教えてもらい、試すことに。

「えっと…まずは精神が安定(?)していること。身体に不調がないこと。よし。多分大丈夫だ」

身体は問題ない。精神はよくわからんから気にしないことにした。そして……

身体強化フィジカルブースト

魔力視と同じ3秒程度の詠唱の後、キーを唱える。

なんだ?なにも変わらないような気がする…失敗か?

「うむ。何も変わらんじゃろ?」

「え、ええ。才能がないのでしょう…」

「何を言うておる。魔力がそこそこあればこの魔法が失敗することはない。

オーガを屠る程の魔法が使えるのなら、間違いなく成功しとるじゃろ」

えっ!?これで成功かよ…わかるわけがない……

聖奈さん達に魔力視で見て貰えばわかるけど、ここにはいないし……

「次はその身体に張り巡らせた魔力を増幅させることじゃの。

今の魔力は丁度なんじゃ。簡単に言えば水車の流量じゃな。

普段の水量じゃと普通の力が出せる。じゃから発動した時は普段と変わらないからわからないんじゃ。次は魔力を増幅させるんじゃ」

それって、水車の限界を超えたらバラバラになるってこと!?

「何を心配しとるのかはわかる。じゃが、その心配は不要ぞ。水路は無限ではないからのう。そこに通せる魔力量は決まっておる。

じゃからこうして修行して、水車(身体)を頑丈にし、水路(魔力の通る量)を大きくしとるんじゃよ」

「なるほど。身体を壊すほどは元々出来ないと」

よし!そうと決まれば特訓だ!精◯と時の◯屋はどこにありますか?





side聖奈

「セーナさんは良かったのですか?魔法の才能があるので身体強化魔法も出来るのでは?」

「良いの。私も覚えて損はないけど、セイくんが覚えてくれたら後でいつでも覚えられるから」

ビクトールさんからより聖くんから教えて欲しいし。

キャラは認めるけど、マッチョなお年寄りは……

「それより、エリーちゃんのお手伝い頑張ろ?」

「そうですね」

エリーちゃんの車は順調ね。問題は出力の微調整と加減速ね。出力の微調整はエリーちゃん曰くすぐに出来る様になるけど、問題は…今は加速しか出来ないから、今は車についているブレーキに頼らないといけない。もちろん私たちの車にはブレーキも…出来たらエアコンも付けるつもりだけど、発表する車には流石に地球のブレーキもエアコンも付けられない。

どうすれば止まるかな?

限界速度を60キロに設定したとしても、そこから止まるのに今のままだとタイヤの抵抗くらいしか減速していかないからかなりまずいのよね。

「わかりました!!タイヤにブレーキをつけずに動力にブレーキを付ければ良いんです!」

「えっ?それだと魔導具に負荷が…」

吹き飛ばないよね…?

「大丈夫です!全く別の魔導具を取り付けますから!」

エリーちゃんの話は物を挟む魔導具に出力を調整出来る機構を取り付けて、それで減速を促すものだった。

普通にローターを挟めよって話なんだろうけど、サイズの問題でエンジンルームじゃないと入らなくて、頭から抜けてたようね。

後はブレーキ時の排熱機構やブレーキの移植を行えば出来るみたい。

銀髪美少女がツナギ姿で汗まみれ…じゅるっ

いけない。私は冷静なお姉さんキャラ。

ミランちゃんがこっちを冷めた目で見ているけど、気のせいだよ!


まだ助かる!マダ◯スカル!




〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓



聖「俺普通じゃないんでっ!」


爺さん「儂も普通じゃないで!」


聖&爺さん(くっ。こいつ普通じゃない事を、まるで『昨日1時間しか寝てねぇ』みたいに…やるな!)


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