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十、成長()した二人
――十年後。
ドラゴンに出会ってから、十年が経った。
その長い年月、二人は色んな国を巡った。
主には強くなるため、魔物を倒しては移動するという日々。
そしていつの間にか、二つ名で呼ばれる程になっていた。
銀の聖盾《セイジュン》、淫美《インビ》のミィア。
光の魔杖《マジョウ》、冷艶《レイエン》のリィナ。
二人に狙われた男は、必ず不幸になると言われている。
……いつの間にか付けられたそれらを、耳にした二人は怒っていた。
「誰が冷艶よ!」
「私なんて、淫美とかヒドイし……」
リィナは腹を立て、ミィアはどちらかというと凹んでいる。
「あんたはそのまんまでしょうが、妄想ビッチだし」
「ビッチじゃないし!」
「この二つ名、付けたやつ見つけたらただじゃおかないんだから」
「私も〜! 私もお仕置きしたーい!」
「あんたはお仕置きされたい方でしょ」
「いやーん。リィナのエッチぃ」
「絶対あんたのは合ってる」
二つ名は、格好良いものだけが付けられるワケではないことを、二人は初めて知るのだった。
ただ、実力が相当なものだからというのは間違いない。
そして、なぜそこまでの力をつけたかというと、同じ『転生者』対策のためだ。
――どんな人間が転生してくるか分からないから。
つまり、自分達のような超の付く美少女を、襲う輩が居ないとは限らないからだ。
「先ずは強くないと、襲われちゃうでしょ?」
これはリィナが、ミィアを護りたくて考えた。
それを、MMOガチ勢のミィアが実践してのけての、今に至る。
「ねぇねぇリィナ、次の街は大きいから、ちょっと長く居ようよ」
「馬鹿ねぇ。ミィアが目立つせいで、ど~せバレるわよ」
「なんで目立つのかなぁ……」
「あんたが男、男! って目の色変えるからでしょうが」
それは振舞いだけではなく、服装も大概目立っているのだが、二人は気付いていないらしい。
この世界に、あえてセーラー服を好んで着るのは他に居ないというのに。
それはどの町にも無いからと、二人でデザインして作った特注品。
膝上丈のプリーツスカートは、ド定番の紺色にマドラスチェックが揺れる。
動くとおなかの見えるセーラー服。
基本的に夏仕様で、うっすらと透けるように、上は薄い白生地を選んでいる。
リボンではなく赤スカーフを垂らした所はこだわりポイントらしい。
そして、ニーハイのストッキングを合わせるという、妙な性癖が丸見えなのである。
「でも結局、いい人が居ないのよね」
「そう言い続けて十年……妄想ばっかりビッチで未だに処女なんだから。きも」
「はぁぁ? リィナも同じだよね? 未経験だよね?」
「私はあんたみたいに妄想こじらせたりしないのよ!」
「こじらせてないし! そもそも、これだけ可愛く生まれ変わったのに、なんで一人も彼氏が出来ないのよおおお!」
ビッチっぽいからという町の声は、彼女達には聞こえないらしかった。
「そりゃあミィアが馬鹿! みたいに強いからでしょ」
「別に……ゲームなら普通だし。ていうかバカって言った」
「ゲーム世界ってか……異世界で結論付けてもうよくない?」
「十年経ったのに、一ミリも老けないもんね」
老けない理由は世界のせいではなく、『女神の素体』のお陰なのだが、二人は一生気付かないかもしれない。
「美少女になってて良かったわマジで」
「私は銀髪青眼超絶美少女で~、リィナは金髪碧眼セクシー美少女だもんね~」
「その変な呼び方やめれって……ま、でも、未だに鏡見てびっくりするもんねぇ」
「それはいい加減慣れたらぁ?」
「あんたみたいに毎日鏡見つめたりしてないから」
「こんな美少女見なきゃ損でしょ~!」
酒を飲むとこのミィア、見るだけではなく自分で致してしまう癖が完全についてしまったが。
「だからって、自分と私を見てニヤニヤすんなよ」
リィナはもう、そこに触れようとはしない。
「ところでさぁ、なんでみんな、ガン見するのにさ、話しかけたら逃げちゃうのかな……」
「相変わらず話をころころと……。さぁ、あんたの『聖なる騎士の加護』を使わなきゃいんじゃない?」
「それを言うならリィナも、『神の子たる権能』とか『神の慈悲』とか、使わないでよぉ」
「うーん。襲われちゃったり、怪我人見ちゃったら使うくない?」
「私だってしょうがない時だもん!」
「まぁ、お陰で襲われても余裕勝ち出来るのは、あんたに感謝してるわ」
基本的に、根は優しくて素直な子達なのだが。
その力が強過ぎるせいで悪目立ちもしている。
「でもぉ、それで二つ名を付けられちゃったんじゃ~ねぇ」
「銀の聖盾《セイジュン》とか、光の魔杖《マジョウ》とか、妙な名前やめて欲しいよね」
「え、私は銀の聖盾、気に入ってる~」
「私も、枕詞だけならそこまでヤじゃないわよ……」
その下に続く、淫美のミィア、冷艶のリィナまでがセットで呼ばれるからだ。
ミィアに至っては、ほとんどの場合でパンツを履いていないから自業自得である。
リィナはだから、まだマシな呼ばれ方なのがよく分かるというものだった。
ただ、悪い転生者を倒した後、冷笑して踏みつけている姿がとても艶やからしく、伊達で付けられたわけではない。
つまりは二人とも、しっかりと見たままを当てられているのだ。
そして――。
そんなミィアとリィナが向かう次の街にも、クセの強い少女が転生したところだった。