テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
パート2:残り6日
午前6時17分
ヨリの寝室で目覚まし時計が鳴った。
「…ん。」
彼女はゆっくりと目を開けた。
朝の陽光がカーテン越しに差し込んでいた。昨夜の出来事などなかったかのように、すべてがいつも通りだった。
ヨリはベッドから起き上がった。
そして、彼女はそれを見た。
ドアについた赤い跡。
そして、文字が
「残り6日」
まだそこにあった。
「…」
彼女は急いで近づいた。
指で触れた。
指には何も残っていなかった。
血ではない。
絵の具でもない。
ペンのインクでもない。
まるで文字が最初から木に埋め込まれていたかのようだった。
ヨリは後ずさりした。
昨夜は確かに見ていた。
しかし、今は何かがおかしい。
数字が変わっていた。
「残り6日」
もしそうなら…
呪いは本当に始まったのだ。
午前7時43分
ヨリは学校に到着した。
彼女は慎重にドアをくぐった。
何もかも以前と同じだった。
生徒たちが校舎に入ってくる。
ざわめきが校内に響き渡る。
昨夜何が起こったのか、誰も知らなかった。
「ヨリ!」
彼女は立ち止まった。
クラスメイトが彼女を呼んでいた。
ミナという名のその少女は、
昨日、呪いの話をしていた生徒の一人だった。
「ニュース見た?」
「どんなニュース?」
「前の教室のことよ。」
ヨリは眉をひそめた。
ミナはスマホを取り出した。
画面には、学校の生徒グループの投稿が表示されていた。
「昨夜、3階の廊下に黒いムカデが大量にいた。」
「3B号室の前に血痕があるわ。」
ヨリは背筋に寒気を感じた。
「誰か怪我したの?」
ミナは首を横に振った。
「分からないけど、昨夜、女の人の泣き声が聞こえたって言ってたわ。」
「3階で?」
「ええ。」
ミナは声を潜めた。
「サチエだって言ってたわ。」
ヨリは黙っていた。
「でも、そうは思わない。」
ミナは小さく笑った。
「幽霊なんていないわ。」
ヨリはミナを見た。
どうしても言いたかった。
「昨夜、あなたを見たわ。」
しかし、言葉が喉に詰まってしまった。
もしこれが本当に呪いだったら…
他の人に話したら、みんな引き寄せられてしまうのだろうか?
午前10時21分
3時間目の授業が始まっていた。
ヨリは集中しようとした。
でも、彼女は常に何かに見られているような気がしていた。
彼女は窓の方を向いた。
何もいない。
彼女はドアの方を向いた。
何もいない。
その時――
ギシッ。
机の下から小さな音が聞こえた。
ヨリは凍りついた。
彼女はかがんで見ようとはしなかった。
それが何なのか分かっていた。
無数の小さな足が床を擦る音。
ギシッ…ギシッ…ギシッ…
音はだんだん近づいてきた。
ヨリは拳を握りしめた。
見てはいけない。
見てはいけない。
何もしてはいけない。
音は彼女の靴のつま先で止まった。
他の生徒たちはいつも通り授業を続けていた。
誰も気づかなかった。
そして突然――
ムカデが彼女の靴を這い上がってきた。
ヨリは息を呑んだ。
ムカデはゆっくりと彼女の脚を這い上がってきた。
彼女はそれを振り払おうとした。
しかし、できなかった。
なぜなら、その背中に何かが見えたからだ。
小さな赤い文字で書かれていた。
残り5日
ヨリの目は大きく見開かれた。
「…」
瞬きをした瞬間――
ムカデは消えていた。
靴には小さな黒い跡だけが残されていた。
午後12時6分
また昼休みだ。
しかし、今日はヨリはオムレツを食べていなかった。
ただ弁当箱をじっと見つめていた。
周りの生徒たちの会話は遠くから聞こえてくるようだった。
「ねえ、ねえ」
声がした。
「ちょっと知らせがあるの」
ヨリは顔を上げた。
ミナが携帯電話を持っていた。
「3年B組の生徒が昨夜行方不明になったの」
「えっ?」
「カオルっていう子よ」
テーブル全体が静まり返った。
「今朝、警察が学校に来たの。」
「彼女は見つかったの?」
ミナは首を横に振った。
「まだよ。」
ヨリは胸が締め付けられるような思いだった。
3年B組
昨夜のニュースと同じクラスだ。
「でも、すごく変なことがあるの。」
ミナはヨリに一枚の写真を見せた。
それは3階の廊下の写真だった。
床には長い赤い跡が残っていた。
そしてその跡の先に…
片方の通学靴が落ちていた。
ヨリはその写真を見た。
彼女はその靴に見覚えがあった。
昨日、3年B組の前を通った時に見たのだ。
しかし、ヨリが息を呑んだのは――
靴の横の壁に。
そこにはメッセージが書かれていた。
「行方不明者1名」
午後3時42分
放課後、ヨリはすぐには家に帰らなかった。
彼女は3階へ上がることにした。
真実を知りたかったのだ。
廊下はいつもより静かだった。
生徒の姿はなかった。
多くの教室が施錠されていた。
そして、3年B組の教室の前で立ち止まった。
ドアはマスキングテープで封がされていた。
ヨリはドアノブに手を伸ばした。
カチッ。
ドアが開いた。
誰も鍵を開けていなかった。
部屋は暗かった。
机と椅子はきちんと並べられていた。
争った形跡はなかった。
血痕もなかった。
何も異常はなかった。
しかし、黒板には…
メッセージが書かれていた。
「さじえは、まだ、おわわう」
ヨリはゆっくりとメッセージを読んだ。
「さちえ…まだ終わってないの?」
背後から声が聞こえた。
カチッ。
ドアがひとりでに閉まった。
ヨリは振り返った。
「誰だったの!?」
返事はなかった。
彼女は急いでドアを開けようとした。
しかし、ドアノブはびくともしない。
「開けて!」
彼女はさらに強く揺すった。
カチッ、カチッ、カチッ!
突然――
背後から少女の笑い声が響いた。
「へっ…」
ヨリはゆっくりと振り返った。
部屋の隅に、
赤いドレスを着た少女が立っていた。
長い髪が顔を覆っていた。
足は少し地面から離れていた。
そして、スカートの下から何十匹ものムカデが這い出てきた。
ヨリは後ずさりした。
「サチエ…」
少女は返事をしなかった。
彼女は手を上げた。
彼女は黒板を指差した。
文字は…
掲示板のメッセージがゆっくりと変化していった。
元のメッセージは…
こう変わった。
「あと5日」
「あと5日」
ヨリは背筋に寒気を感じた。
「どうして私なの?」
サチエは首を傾げた。
そして、かすかに笑った。
「勘違いよ…」
彼女の声はあらゆる方向から聞こえてくるようだった。
「私はあなたを選んだわけじゃない」
ヨリは凍りついた。
「…えっ?」
サチエは手を上げた。
彼女はテーブルを指さした。
テーブルの上に携帯電話が置いてあった。
画面が点灯していた。
それはカオルの携帯電話だった。
画面には最近送信されたメッセージが表示されていた。
ヨリへ
「呪いを信じないで」
ヨリは目を見開いた。
すぐに新しいメッセージが表示された。
「サチエが犠牲者を選ぶわけじゃないから。」
さらに別のメッセージが表示された。
「誰かがあなたのために選んでいる。」
電話は沈黙した。
再び静寂が訪れた。
ヨリはサチエを見上げた。
しかし、赤いドレスを着た少女はもういなかった。
地面にはムカデだけが残っていた。
ムカデはヨリの方へ這っていった。
ヨリの足元で止まると、
ゆっくりとひっくり返った。
白い腹を見せた。
ムカデの体には赤い文字が書かれていた。
「明日は誰になる?」
ヨリは立ち尽くした。
彼女は何かを悟った。
呪いは、7日後に死ぬという意味ではなかった。
それは…
毎日、
誰かが消えるという意味だった。
そして、それを見ることができるのは、おそらく彼女だけなのだろう。
午後5時18分
ヨリは学校を出た。
彼女はすべてが終わったと思った。
携帯電話が振動するまでは。
見知らぬ番号からのメッセージ。
「2日目終了。」
続いてメッセージが届いた。
「今日は誰も死ななかった。」
ヨリはため息をついた。
しかし、最後のメッセージで彼女は歩みを止めた。
「だって今日…私たちは死者を変えたから。」
ヨリは顔を上げた。
道の向こう側。
そこに少女が立っていた。
ミナだった。
今朝、ヨリに話しかけたクラスメイト。
ミナは微笑んでいた。
しかし、彼女の肩の上では…
黒いムカデが這っていた。
そしてミナの後ろには…
サチエが立っていて、ヨリを見ていた。
今度は、彼女は微笑んでいなかった。
彼女はただ指を一本立てた。
そしてミナを指さした。
「次。」
—第2章終了—
#ミステリー
KOKUGA
464
コメント
1件
「残り6日」が数字を変えてる時点で背筋が冷えたわ…。授業中にムカデが這い上がってくるシーン、マジで鳥肌立った。しかも単なるカウントダウンじゃなくて「毎日誰かが消える」って真相が怖すぎる。そしてまさかのミナ…!? 最後の「次。」で終わるの、続きが気になりすぎて今夜眠れないんだけど😭 次話も楽しみにしてる!