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仁ちゃんが好きだ。
メンバーとしてこのグループに入った時からずっと。
純粋に、最初は一目惚れだった。
挨拶のために、練習しているメンバーの元へ向かった時。
それまでミラーに向かって踊っていたところを、くるりと振り向いた仁ちゃんを見て、俺は胸が高鳴ったのを覚えている。
甘く大きく垂れた瞳、白い肌に赤い頬のコントラスト、さらさらの黒髪、笑う時にできる小さなえくぼ。
俺の小さな声にもしっかりと耳を傾けてくれて、「柔太郎」って優しく呟いてくれた。
こんなに可愛い子が男で、しかも年上だなんて、俄かに信じられなかったし、これから同じグループとして一緒に活動できるんだという喜びが大きかった。
でも、見た目だけならきっとこんなに長く深く想うことはなかったのかもしれない。
グループとして共に多くの時間を過ごしていく中で、徐々に彼の性格を知った。
リーダーとしての自負や周りへの気遣いがピカイチなのはもちろんのこと、優しさの表現が不器用で独特なことや、褒められたり好意を示されると素直に喜べずに変に強がっちゃうことも。
その全てが仁ちゃんで、俺の好きな人になっていった。
少しでも近づきたい。特別扱いされたい。男として意識してほしい。
そんな想いが日に日に募って行く。
一緒にyoutubeのチャンネルもやっているし、毎日電話もしてるし、何より仁ちゃんの性格には俺みたいな奴がぴったりだと思えてならない。
最近は、いろいろなインタビューで誰かメンバーを選ぶような質問の時、高い確率で俺の名前をあげてくれるし、かなり距離は近づいていると確信できる。
いっそ、この気持ちを打ち明けてしまおうか。そしたら何て言うだろう。
自惚れかもしれないけれど、正直、かなり勝算は高いと思う。
そんなことを、今隣で船を漕ぎ始めている仁ちゃんを眺めながら考えていた。
「眠い?もう今日の配信も終わったし、次の打ち合わせは別日でも大丈夫だよ?」
「ん…じゅたろう、こっち…」
撮影機材がどんどんと片付けられていく空間。スタッフもいて、決して二人きりなわけじゃないけど、仁ちゃんが座っているソファから、可愛く手招きしてくるものだから、どうした?なんて歳上みたいな口調で応えて、隣に腰を落とした。まるで彼氏みたい。
「肩貸して、3分だけ」
コテンと預けられた頭。
瞬間にふわりと甘い香りがした。
俺の顔はこのくらいじゃ表情は変わらない。ポーカーフェイスには自信がある。代わりに心臓がはち切れそうなほど鼓動を速めた。
可愛すぎるその仕草に思わずその頭に手が伸びる。ふわふわの髪を撫でたい。
そっと髪に触れると、びくっと驚いた表情で見上げられる。狙ってないところが本当にずるい。
俺の中でエンジンのかかる音が聞こえた。
「え、なに?」
「なにって、、いいよ、肩貸してあげる」
「…ん、さんきゅ」
下心を忍ばせても気づかない仁ちゃんは、たまに心配になるくらい鈍感だ。
こういう表情や仕草も、グループメンバーには誰にでもやりかねないし見せかねないから、甘えてくれることに喜びを感じながらも同時にハラハラさせられる。
目を瞑ったと思ったらすぐに小さな寝息が聞こえてきた。3分で起こすつもりは端からない。スタッフがみんな引き上げて静かになった現場で、残された二人だけの空間を存分に噛み締めていた。
仁ちゃんが起きてきたのは、それから30分後のことだった。
もっと愛らしい寝顔を見ていたかったけど、邪魔が入った。
スマホの着信音が響いて、ぱちっと目を覚ます。
#兄弟パロ
yukino
6,124
ご主人
100
#びーえる?かも
ご主人
101
「んぁ…っ、わ、柔太郎ごめん!完全に寝過ぎた!」
「いいよ、俺もうこの後上がりだし。それよりも電話いいの?」
「あ、やばい、太智からだ!ごめん、ちょっと出るわ」
だいちゃん??
こんな時間に??いつもなら寝てる時間なはずだけど。
そんなことを考えながら、俺はだいちゃんを恨めしく思う気持ちが止められないでいた。
あのままの雰囲気なら、絶対いけた。
確実に落とせる流れだった。
なのに、なんだってこのタイミングで連絡をしてきた?
隣で、嬉しそうに顔を綻ばせながら電話する仁ちゃんを見て、そんな表情をさせられるだいちゃんが憎らしい。
じんだいチャンネルだっけ?
なにあの、ただただだいちゃんが仁ちゃんを独り占めしてるだけの動画。
仁ちゃんのいろんな表情を引き出してくれる企画に感謝しつつも、複雑な気持ちになるんだよな。。
「ごめんね柔太郎、遅くまで付き合ってくれて」
「ううん、いいよ。次の企画の話?」
「あ、そうそう」
通話を切った仁ちゃんが、申し訳なさそうに眉を下げる。まるでじんだいチャンネルのことは俺には関係ないとでも言うようにそこで会話を終わらせられた。
仕切り直そう。今日じゃない、と思った。
帰ろっか、と言う仁ちゃんに、穏やかに見えるであろう笑みで返す。
好きでしょ?この顔。
思った通り、仁ちゃんは俺の顔を見て嬉しそうに頷いた。
日に日に大きくなる独占欲が爆発する前に、この想いを告げようと心に誓った。
続
コメント
1件
あんこさん、第1話読ませていただきました!柔太郎くんの仁ちゃんへの想い、もう最初から溢れんばかりでこちらまでドキドキしました。一目惚れから性格に惹かれていく過程が自然で、片想いの甘酸っぱさと独占欲の狭間にある心情描写がすごくリアル。肩貸してのシーン、心臓の鼓動だけで全部語ってるのが上手いなあと。だいちゃんからの電話で中断されるところ、憎らしさも共感してしまいました(笑)。続きが気になります!