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総体の東京都予選が控えまどかは卓球の練習とバスケ部の練習を両方しているため、自主練習が始まる前に帰宅し、自宅のコートで卓球の練習をしている。同じく総体の控えているたつやと共にお互いの練習を手伝うことを条件に練習をしていた。まどかが卓球部へ入った頃よく練習相手をしていたたつやは他の卓球部に入っている選手たちよりも随分上手くなっている。一方でたつやはテニスの練習をしてきて未だにまどかには勝てないでいる。全国優勝してもなお強くなっていくのは超えたい壁が高いからこそできることなのであろう。それはまどかも同じで、まどかにとっての高い壁であった瑠奈との約束を守るために練習を重ねていると言っても過言では無い。
『スポーツ界全てでトップに立って、わたくしが唯一勝利出来なかった瑠奈お姉様は最強だったと証明してみせます』
この言葉は、瑠奈が怪我をしてプロテニスを諦めた時に幼かったまどかが言った言葉だ。それを証明するかのようにどんどん強くなっていくまどかにとうとう神童のバケモノという通り名までついた。しかしその通り名だけが伝説として世間に浸透し、まどかはバスケ界から姿を消すこととなる。バスケ界から姿を消した直後、まどかはあらゆるスポーツで優勝を総なめにして再び神童の怪物という通り名を手にしたのだった。
星蘭高校体育館では自主練習をしている大和に斗真は不満を漏らす。
「まどか先輩は試合やる気あるんですか?あの人のせいで負けるとか嫌ですよ」
斗真の不満が聞こえた瑠奈は大和が怒りを表に出さないか心配し注視する。瑠奈の心配とは裏腹に大和は淡々と答える。
「あいつは卓球部から試合に出るよう頼まれてるから今年は2種目練習してんだよ」
大和の答えを聞き篤人が笑顔で言葉を挟む。
「なんでまどか先輩卓球部の試合に出るんすか。断ればいいだけじゃないですか。ここの卓球部団体も個人も強いじゃないすか!」
話を終わらせようと瑠奈が駆け寄ろうとすると大和がもう大丈夫だよと瑠奈の言葉を遮る。
「去年はまどかがいたから強かったんだ。あいつは卓球の全国大会前年度覇者だ。団体も個人も1人で闘っている」
大和の言葉を聞き3人の1年生は驚愕する。そしていち早く冷静になった和真が疑問をぶつける。
「それなら何故まどか先輩はバスケ部にいるんですか?」
少し考えれば誰でも疑問に思うだろう。なぜならまどかはまだ1度も自主練習に出ていないためいつも恒例の大和との1on1も行っていないからだ。
「あいつは後悔をしないためにバスケに向き合ってるんだ。お前らは心配しなくていい、あいつは強いから。」
切なそうな顔をして大和は言う。
「どうしても気になるなら朝6時半にここへ来てみろ。お前らもあいつの実力が分かるはずだ。ただし、中には入ってくるなよ。あいつは実力を隠したがってんだ」
大和は、能ある鷹は爪を隠すってやつだなと言い、体育館を後にした。
大和は帰りにまどかの家に寄ると敷地内にある卓球場へ向かった。ドアを開けると中には誰もおらず大和は首を傾げる。しばらくして思いついたかのように走って行った先にあったのはテニスコートだ。大和の考えは当たっており、コートへ近づくにつれ、ボールの音が鳴り響く。コートの中を見ると涼しい顔をしてボールを打ち返すまどかと汗を沢山流し必死にスマッシュを打ち返すたつやの姿があった。たつやの放つスマッシュは全てまどかに返され、ひたすらスマッシュを打ち続けるという地獄のような練習をしていた。たつやのスマッシュをラリーのように打ち返すという芸当をまどか以外でできるのは恐らく瑠奈くらいであろう。まどかの容赦のない攻撃を見て大和は呟く。
「鬼姉っていう名前に負けてないな…」
数分続いたラリーが終わり次のサーブを打とうとしたところで、たつやの体力を心配した大和はストップをかける。
「容赦ねえな、鬼姉って言うより鬼神だろ」
大和の言葉を聞き、たつやはくすくす笑う。
「お姉様は怪物とかバケモノとか呼ばれてますからね」
これ以上変な通り名を増やすなとまどかは2人の背中を叩く。
そういえばと大和が本題を言う。1年生へ軽く話したことを言うと、まどかからはあっさりとした返事が返ってきた。朝練を1年生が見に来ることは伏せて話し、明日6時半に体育館集合と約束をすると大和は帰り際に一言言って帰った。
『明日こそお前に勝つぜ』
まどかは翌日の1on1が楽しみになり口元を緩め部屋へと入っていった。