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朝6時半、星蘭高校体育館内では先に来ていた大和がアップをしていた。まどかはいつもよりも念入りにアップをしている大和へ声掛けた。
「早いね、大和。昨日あんなこと言われたから私も珍しく走って来たの」
丁度アップを終えた大和が位置へ着く。
「今日こそお前に勝つ」
まどかが今まで走って来ることはなく、いつもより手強いと察した大和は意気込むように言った。一方でまどかは涼しい顔をしてボールを投げる。
「何百回目かしら、お決まりのセリフね。大和が先行でいいわよ」
20分間の1on1が始まり大和がドリブルで一気にインサイドまで走っていく。一発目にダンクを決めようと飛んだ瞬間まどかがボールをカットした。カットと同時に走り出したまどかに追いつけるわけなくまどかはレイアップシュートを決めた。2本目以降、落ち着いて攻めてくる大和のボールを鮮やかにカットしたまどかは豪快な音を鳴らしてダンクを決めた。試合は着々と進んでいき試合終盤に差し掛かる。残り1分もない状態で約30点差。普通なら諦めるだろうが大和は今持っているボールだけでも決めようと激しい切り返しをする。激しい競り合いにまどかは体勢を崩し、ここぞと言わんばかりに大和はシュートを放った。鮮やかな弧を描いてシュートが決まると大和はガッツポーズをする。まどかは大和を見て微笑み、ドリブルを始める。最後守りきって終わろうとする大和を先程の仕返しと言いたげな表情でまどかは高速で切り返しをする。まどかの切り返しに見とれて反応が遅れた大和は体勢を崩し、背中を見送ることしか出来なかった。インサイドまで行くのが面倒になったのかまどかはハーフラインからシュートを放った。鮮やかな弧を描いているボールは吸い込まれるようにネットを揺らし、20分が経過した。64対37で約30点差つけてのまどかの圧勝だった。汗を拭いている大和の横でまどかは涼しい顔をして立っている。言われたらもう1試合行いそうなまどかを見て、思わず大和はいたずらっぽく笑い冗談を言ってみる。
「まどか、もう1回やろーぜ」
きょとんとした後頷くまどかを見て、冗談だよと言い続ける。
「お前はそんなんだから怪物とかバケモノとかいう変な通り名がつくんだよ」
大和の一言から言い争いが始まり朝練の時間が終わる。先に教室行っといてくれと言い、まどかが体育館を出ていく姿を見送ると手招きした。
「さっきの話で怪物とかバケモノとか言ってたのはまどか先輩の事だったんですか?」
まどかの強さを目の当たりにした斗真が疑問をぶつける。それに対して大和は無意識にバケモノと言ったことを反省し答える。
「斗真は神童の3人の天才って知ってる?」
斗真はもちろん知ってますよと食い気味に答える。
「1人目は伝説の神童のバケモノで、2人目はテニス部の神童の鬼たつや様、3人目は卓球部神童の怪物伊集院様ですよね?」
横で頷きながら聞いている双子と斗真を交互に見て大和は解説する。
「まず神童の鬼って呼ばれているたつやは俺の幼なじみでまどかの弟だ」
驚きを隠せない3人に追い打ちをかけるように、まどかはテニスも弟より強えぞと大和は続ける。まどかの弟がどう呼ばれていたか話していたのだと解釈した斗真は得意げに言う。
「先程の会話はまどか先輩の弟さんの話だったわけですね」
ここまで言ってわかんねえのかよ、まどかにも通り名があるんだぜ?といいながら大和はため息をついた。
「実はまどか先輩が神童の怪物だったりして」
そんなわけないかと笑いながら言う篤人に向かって大和はよく分かったなと背中を叩く。一呼吸おき、体育館へ驚きの声が響いたのは言うまでもない。