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「……もう春だナァ…」
白い桜の下。俺は隣国となる我々国へ向かっていた。草原を突っ切れば早くつくが、俺はこの桜道が好きだから、ここを通ってる。
――昔、らだおと一緒に歩いたんだ。まだ、運営国がなかった時、……ずっと昔に、ここを駆け回って…………いや、もう昔の話は、やめよう。
「……平和だなぁ…」
我々国の門の前まで来た。ここから見える国内は、子供が笑って平和に暮らせる、良い国だった。
これが、戦争に勝った国。……いや、変な気を起こすな。今は、同盟関係を以前のように固めるためにきた。恨んでなんか、いない。
「……運営国の幹部、緑色ダ。…一昨日、我々国総統グルっペン・フューラーに要件を伝え、三日後此処へ来ると伝えた。……本拠地へ案内してくれ」
門番にそう伝えれば、案外あっさりと通してくれた。
そのまま俺は本拠地の扉を通った。
「……待っていたゾ、緑色…。対面は初めてだな」
「………そうですね。我々国総統、グルっペン・フューラー様。」
初めて会った、グルッペン・フューラーという人間は、噂に聞いていたよりも疲労が顔に出ていた。
真っ黒な隈が目元を多い、目線はいつも下を向けている。失礼さなど、気にできないほど疲れているのか。
「……本日は、貴重な時間を使ってまでこんな機会を作っていただき、有難うございます。」
「……いや、最近はそれほど忙しくもない、……それで、本日は…」
「はい、……この間御連絡をさせていただいた通り、以前までの関係を築けるよう、少し世間話をしようと、お伺いしました。」
俺が戦争からの記憶がないとすれば、俺は約一ヶ月半程の出来事、そして周りの知人の変化、国際的変化を把握する必要がある。
「……戦争に、勝ったと聞きました。」
「ああ、……緑色も其処にいたとは聞いているが?」
「俺は、途中で気を失ったらしく、……最近目が覚めて……」
「なら、それまでの運営国は……コンタミさんが支えていたんですか?」
「……はい」
「凄い方ですね。……今も、運営国はコンタミさんが?」
「コンタミは死にました。」
その場の空気が凍った。
何をやっているんだ自分は、……関係を復元させるどころかさらに距離を置くような……。
「……すまない、失礼なことを言った。」
「………僕も、余計なことを言ってしまいすみません…」
その日は、結局のところ気まずい空間のまま終わってしまった。
前からこのような国際関係はレウさんやらだおに任せていたツケが回ってきたか。
だが、来た会もあった。我々国の今の幹部状況が把握できた。
大体の主幹部は、もう残っているのは「トントンさん、鬱さん、ゾムさん、ショッピさん」らしい。我々国からしたらかなりの損失だろう。……まぁ、運営国よりは全然か。
そして、その次の日。
俺は我々国の少し先にある、日常国へ向かった。
日常国は、人為的にも、全てにおいて被害は少なかったという。流石、平和すぎて平和ボケとまで言われた国だ。今回の戦争でも、敵国に涙を流し、情をかけるという善人っぷりを見せられた。
今回話ができるのは総統「ぺいんと」さんだ。ぺいんとさんは、ある意味らっだぁと一番仲が良かったのかもしれない。お墓を建ててくれたのも、ペいんとさんだと聞いたし、お墓参りもやってくれてるそうだ。
「……お久しぶりです。ぺいんとさん」
「ああ、久しぶり!緑くん、しばらく見なかったなぁ……元気にしてた?」
優しいですよオーラをあたりに振り撒くような笑顔は変わらずで、少し安心した。
いや、これが”負けなかった国”の普通の様子か。
昨日の我々国が、勝利した国だとは思えないほどに酷すぎた。まるで生きた地獄だった。
「コンタミさんは元気?この間海老料理をもらっちゃってさ!……お返しがしたくて……」
そう言い、おそらく礼の候補としているものを表示させたサイトを見せてきた。
伝えた方が、いいのだろうか。
どうせ今伝えずとももう直公表されるとは思うが……
「…………うん、……喜ぶと…思います……。」
「そう?よかったぁ、クロノアさんのチョイスだったんだけどね、あんまり話したことなかったから少し不安で……今度会った時に渡すよ!」
「……良いと思います。」
もう、あんな地獄みたいな空気にしたくなかった。
だから、俺は嘘をついていた。
俺が帰る時も、ぺいんとさんが門まで送ってくれるなど、日常国はやはり紳士的かつ、平和で、優しい国だと感じた。
運営国がああなら、尚更感じる。無理もないだろう。
「……みどりくん。」
「はい……?」
「…………何かあったら、俺を頼ってね」
優しく、安心させるような、そんな声色でぺいんとさんは一言。俺にそう言った。
「……ぺいんとさんには、関係無い事だから。大丈夫」
なんとなく。俺の考えを見透かされたような、そんな気持ちがした。黄色い瞳は真っ直ぐに俺を見ていた。
「……そっか。でも、何時でも助けになるからね」
困り笑顔、とでもいのか。眉を八の字に曲げ笑いかけるぺいんとさんに一応のお礼だけいい、日常国を後にした。
俺は夜桜の下を歩き、自国へ戻った。
次の日は雨が降っていた。然し、予定を切ることはできないので傘を差し国を出る。
桜道は、今回行くとこへは遠すぎるので、今日は草原を歩いて行くことにする。大雨の粒が傘を叩く。暴風が傘を剥がそうと横から吹く。
今日行くのは、限界国だ。どうやら、戦争後の運営国と限界国は関係が良くないらしい。
総統ともなるぐちつぼさんは、らだおとは仲が良かったはずだ。……なぜ関係が悪く?
そんな疑問を抱きながら、俺は限界国の門前まで来た。
「……この間連絡させていただいた、運営国幹部緑色と申します。」
ついさっきこばさんに聞いたが、これだけで大体伝わるらしい。本当かと疑ったものの、本当にすんなり通してくれた。やはり社会はよくわからない。
「……お久しぶりです。ぐちつぼさん」
「…………久しぶり」
明らかに目線を外し、会話を続ける気がまるでない。
何があったのは明らかだろう。
「……ぐちつぼさん、俺、戦争後から今までの記憶がないんです。」
「……ぇ?……それ、ほんとか?」
信じられないとでもいうような赤い瞳が俺を見る。無理もない。
「……正確には、気を失っていた。……大怪我を負い、ずっと地下牢にいました。……教えて下さい、運営国と限界国の間に、何があったんですか……?」
すると、ぐちつぼさんはひどく悲しそうな顔をし、目を伏せた。
「……ぐちつぼさん?」
「……俺が、らっだぁと……コンタミさんを、殺しました。……」
「……は?」
赤い瞳は罪悪感を見せた。
小刻みに揺れるカップは動揺をしているのだと察する。
「…よかった。」
「……ぇ……?」
俯いていた顔を上げ、赤い目に青が映った。
「……知らないどっかの馬の骨に殺されるよりも、…ラダオと親しかった、アナタに殺されたのなら、僕はそれでいい。」
「……なん……で、…?」
大きく見開かれた瞳からは、粒の大きい涙が流れた。
一体、どれほどの大きな罪悪感を感じていたのだろう。きっと、憶測だが、国民からの非難も少なからずあったはずだ。それに、コンタミの死が公表され、その原因のぐちつぼまでもが世間に晒されてしまえば、ぐちつぼだけでなく、限界国までもが軽蔑されてしまう。
それに、俺がこの人を嫌う理由がない。
だって、この人は良い人だとよく知っているから。
運営国を作ろうと、ラダオが動き始めた頃にこの人と出会った。
ラダオは元々面識があり俺と会った時にはもう親友のような関係であったのを覚えている。
「はじめまして!」
そう言い笑う笑顔は、青く、輝く空によく似合っていた。
まだ人に慣れていなかった俺によく話しかけてくれたのはこの人だ。ラダオほど、この人を慕ってはいなかったがこの人が良くしてくれたのは事実だ。
そんな人が、俺の大切な人を殺し、苦しんでいる。奇妙な気持ちだ。この人でなかったら、俺はどんな手を使ってでも苦しめ殺していた。だが、自分自身が行なった判断を疑い、自分自身を追い詰めているこんな、友人を見てそんな気なんか起こるわけがなかった。
「……僕は、アナタを責めない。運営国幹部として、アナタを、ぐちつぼさんを、尊敬します。」
「……なんで、なんで尊敬なんか…っ俺はアンタの思う大切な人達をっ……」
「…………確かに、俺の…世界で一番大事な人はアナタに殺された。……だけど、ラダオが、……大切な親友だと言っていたアナタを責めてしまえば、僕はラダオに怒られてしまう。……それに、俺はぐちつぼさんを恨んでいない。だから、そんな顔をしないデ。……ウランでナんカ、……ソンナニジブンヲオイつめタら、……ぐちつぼサンがコワれるかもシレナイジャンカヨ……」
「……みどり………でも、みどりは一番らっだぁを慕って……」
「ダカラ、ラダオがぐちつぼを信頼してたカラ、俺は許すって、言ってんノ。」
その後、ぐちつぼは何回も頭を下げてきたが、俺の考えが伝わったのか最後は「ありがとう」と言われ、少しすっきりとした気分で会話を終えた。
門まで見送ってもらい、帰ろうとした時。
「ア、ぐちつぼ」
思い出したことがあった。
「なんだ?」
「……ぐちつぼは、ラダオとコンちゃんが死んだのは知ってるデショ?」
「………ああ、……うん。」
「ンで、きょーさんの死因も知っテルと?」
「……確か、鬱先生にやられてたと……思う」
「ソッカ。……じゃあさ、レウさんの死因は、知ってる?」
「……レウさん?…いや、戦場でも……見てないな」
「ソッカ」
運営国に戻り、総統室の椅子に座った。
レウさん……書類にも、レウさんの死因は「不明」だと書かれていた。……んなわけ、あるはずがない。
「……こばさん。国民の民度は?」
「よくなってきましたよ。……ただ、こんな意見が上がってますね」
そう言い、こばさんはある箱を持ってきた。
「……例えば、これとか……」
そう言い手に取った紙には、『アスレチック』と書かれていた。
「……コレは?ナニ?」
「ら民に、「今、何がしたいか」という質問を投げかけました。……そしたら、大体が「アスレチックをまた、やりたい」という声が上がって……」
アスレチック。
きょーさんが運営していたところだ。確かに、ら民に好かれてた施設だ。
「……再建、ガンバル?」
「…………これは、忙しくなりそうですね……(笑)」
「……ミンナノ民度が良くなってきた。……そんな時に、……こんな発表ダヨ。」
そう言い、俺は書類をみんなの前に出す。
「……最悪だなぁ…」
そう愚痴をこぼしたのは、おいよさんだった。
今日、コンちゃんの死が発表された。原因までは書かれていないが、コレはら民に不安を煽ることになってしまう。それに、他の、……国にも、何かと思われる。
前の運営国に戻すには、この状況は良くない。
「……ドーシヨ。……」
そして、こばさんが言った。
「………来週にある、運営国の建国祭をやるのはご存知ですよね。」
「……ウン、知ってる」
こばさんはポスターを机に出した。
「……この祭り、同盟国も合わさってこの国でやるんですが、……みどりさんが悩んでいる「国際関係」は、この時に直すチャンスがあると思います。」
「……こばさん、……天才?」
建国祭。我が国の建国を祝う、一年に一度の大祭りだ。
同盟国と共に祝うその祭りで関係を復元させるのは、確かに良い案だと思う。
「我々国、日常国、限界国、ワイテ国」がこの祭りにくる
ワイテ国には話に行けてない。忙しいらしく、連絡が取れなかったのだ。
「みどりさーん、こっちも手伝って下さい」
「ウン、わかった。今行く」
兎に角、今は建国祭に向けて準備をするまでだ。
一週間後、運営国のこれからに関わる大事な祭り。……失敗するわけにはいかない。
俺は、そう考えながらも淡々と準備を続けていた。
「おめでとーう!」
青空。それに引き立つ大きなバルーン。人々の歓声。みんなが笑顔で、この祭を祝った。
「……他の国の人ハ……」
人集りを掻き分け、俺は他の国の幹部を探した。
すると、少し遠くに見慣れた人影が見えた。
「ヤッホー」
そう言い寄ると、四人はいい笑顔で会話を続けた。
「緑くん…!この間ぶり…だよな?……祭り読んでくれてありがと!」
ぺいんとさんの笑顔は、夏に咲くひまわりかのように輝いた。
「大変なこともあったけど、……こうしてまた、五カ国で建国祭を祝えるの、嬉しいよ」
ぺいんとさんとは違う、優しい笑顔でそういうクロノアさん、久しぶりにあったが、やはりいい人だとわかる。
「それにしても、今は主幹部一人で国を支えてるんだろ?すごいなぁ……」
関心を持った声でトラゾーさんがそう言った。俺はすぐさま「一人じゃない。こばさんがいるし」と否定する。
「でも、元気そうで安心しました。……何か困ったことがあれば言って下さい!うちのリーダーがなんとかするんで!」
「人頼みかよ!」
そんな、賑やかな会話は前と変わらない。幸せそうだ。
いいなぁ。
俺も、またミンナとこうやって冗談言いたかった。
頑張って、運営国を経営してるけど結局のところ、やっぱり俺は一人。尊敬する人をもなくした。
もう存在する価値があるのか、初めの頃はそう考えたけど、他の国と貿易や交流を進めるにつれ、運営国もまた前みたいにこうやってみんなとふざけあえるって信じちゃった。
いいなぁ、いいなぁ。
「……ラダオ…」
「緑くん。久しぶりやんな」
人集りに疲れ、陰で休んでいたところ鬱さんに声をかけられた。
「久しぶりデス。……ゾムさんも……」
鬱さんと異様に距離の近いゾムさんに話しかける。
「久しぶりやんなぁ!みどりく〜ん!」
ハイテンションで、ゾムさんは返事をした。
俺にぶつかる勢いで抱きついて倒れる。前からテンション高いのは変わらないが、こんなにも距離の近い人だったか?
「……すまんの緑くん。…我慢して一緒にいてやってくれん?ゾム、今日人が多くて安心してんの、久しぶりやから……」
「別に大丈夫。特にこれといったヨウジないシ。」
「だったら、ゾムとしばらくここにいてくれんか?俺少しやらなきゃ行けないことあってさ。ほんと少しでいいから!緑くん!」
「……ワカリマシタ」
慌ただしく去っていく鬱さんを見送る。ゾムさんは抱きついたまま離れない。
多分、戦争後の影響……俺がなったような後遺症だろうか。心配だ。
「……ゾムさん、少し人変わっタ?」
「…………ぇ?」
フードからチラリと見えた、俺と同じ緑色の瞳は、以前会ったぐちつぼさんとよく似ていた。
「……なんで……?」
「あまり会ったことないケド、なんとなく印象と……チガウ?感じが少し」
ゾムさんはゆっくりと俺から離れた。すると、壁に寄りかかりうずくまってしまった。
「……ゾムさん?」
呼びかけるも、返事はしない。
近くに寄ると、少し震えているのがわかった。何か言っているようだが、そこまでは聞こえない。
「ゾムさん?どうしたノ?」
「…………」
何言っているか聞こえない。
どうしたものか。そう考え、辺りを見回していると腕を掴まれた。
「……迷惑、……やった?」
不安気な表情でそういうゾムさんは、前までの印象とは異なり、迷子の子供のように幼く、頼りなかった。
後で鬱さんに事情を聞いてみよう。
「……迷惑じゃナイ。」
俺は、ゾムさんに抱きついた。
抱き心地は良いので、いいとしよう。
本当、俺は建国祭に何をやっているんだか。
「遅い。」
夕方。橙色に染まり始めた空の下。俺は鬱さんに問い詰めた。
「す、すまん!少し思ったよりも時間が……」
「…………まぁ、イイヤ。それよりもゾムさんのことについて、スコシ……」
俺がその話を切り出すと、ヘラヘラと笑っていた顔が、少し曇った。
「……ゾムが、どしたん?」
「以前、……と言ってもスコシだけだけど……会った時よりも距離感が近かったような気がしたんだケド……」
建国祭は、無事に終わった。
ゾムさんのことは深くは聞けなかったが、やはり戦争後の精神負担が原因だとのこと。例え戦争に勝ったとしても、必ず幸せとは限らないのか。
「……そろそろだな。」
運営国総統、そして幹部のらっだぁ、コンタミを殺した限界国総統、ぐちつぼ。
もし、今の状態でぐちつぼの罪が明かされてしまえば終身刑……最悪死刑となるだろう。理由はどうあれ、一つの国の王を殺したのだ。
また、またトモダチが居なくなる。
もう、これ以上大切な人を無くすわけにはいかない。
俺が、守らなくては、……もうこれ以上失う前に……。
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色々と直したいところもあったりします
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