コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「オレノコト、スキ?」
一ヶ月ほど前からよく聞かれるようになったこの言葉。
それを発するのは俺の可愛い恋人、みどりくんだ。
「どうかな。好きじゃないかも」
そう返せば、不安げな彼の瞳がさらに揺れる。それがとても可愛くて、愛しくて、勝手に口角が上がっていく。咄嗟に口元を隠したが、バレてはいないだろうか。
パッと笑顔を作って「嘘だよ。ちゃんと好き」と言えば、怯えの色は強くなった。
「ホントニ?」と何度も聞いてくる彼は、他の人から見たら「重い」と言うかもしれないし、実際、俺だって「重い」と感じる。
運営のメンバーだって、みどりくんの行動を見て俺に心配の言葉をかけてくる。
しかし、俺にはその重さが心地良いのだ。
普段あれだけ落ち着いていて、ホラーゲームでもあまり叫ばない彼が、俺の一言だけで大きく乱れる。
少しでも俺から「好き」を貰えないと、すぐ不安になって、俺に縋りつく。
俺に依存していて、恋心なんて淡いもんじゃない、執着と言っていいほどドロドロした大きな感情を向けてくれている。
それのなんと嬉しいことか。
俺の服を弱々しく握る彼の手をとって、俺の愛を引き出そうとするその口に、触れるだけのキスをする。
指を絡め、彼の目をしっかりと見つめ、もう一度言う。
「俺はみどりのことが大好きだよ。」
薄っぺらい、愛の言葉。しかし、それだけで彼の瞳からは不安が消えて、どろりと溶けた醜い愛情がゆっくりと広がる。
己の胸の底から大きく歪んだ歓喜が込み上げてくるのを感じた。
「みどりは俺のこと………スキ?」
もう一度軽いキスをして、目元を優しくなぞる。
ふるりと瞳を覆う膜が揺れて、端に溜まった大粒の真珠が一つ、ぽろりと落ちた。
同時に、彼の桜色の唇からは、小さな「スキ」がこぼれだした。
一度溢れたそれを止めることなど不可能で、沢山の「スキ」と涙が落ちていく。絡み合った指の力が強くなる。
苦しげに眉を寄せる彼はとても愛おしく、衝動に任せその細い体を抱き締めると、より一層落ちる真珠が多くなった。
繰り返される「スキ」の間に「ごめんなさい」が混ざり始める。
きっと彼は、後悔しているのだろう。俺を好きになってしまったことに。自分の愛が、俺を縛っていると思っているのだろう。彼はとっても優しいから。
嗚呼、なんて可愛そうな人だろう。
縛られているのはそちらだというのに。
俺に彼を手放すつもりはない。彼から離れようとすれば俺は、地の果てまで追いかけて、鎖で繋いで俺の家に閉じ込めるだろう。
運営とも会わせず、外界の情報を一切絶って、俺だけしか見れないように。俺だけしか見えないように。
その美しい四肢を切り取って、永遠に世話をするのもいいかもしれない。きっと今以上に依存して、離れられなくなる。
もいだ手足はちゃんと処理をして、専用の冷蔵庫でも買って保存しよう。誰にも見られないように、しっかり隠さなければ。
未だ泣き続ける彼を強く抱きしめる。
鬼に捕まったら最後、逃がしてはもらえない。
絶対に、逃がすものか。