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「このままって……どういうこと?」
咲は歩みを止め、スマホを耳に押し当てた。
美優の声は、少しだけ真剣で。
「悠真さんのこと。咲が好きなのは、もう誰だって気づいてるよ」
「……っ」
咲の胸が大きく波打つ。
「でもさ、卒業したらきっと会う機会も減っちゃうでしょ? 咲が何も言わないまま時間が過ぎていくのは……なんか、もったいないなって思うんだ」
夕暮れの街を吹き抜ける風が、咲の足を止めさせた。
「……分かってる。けど、こわいの」
美優は少し間を置いてから、やさしく笑う声を響かせた。
「咲は頑張り屋だから。きっと、ちゃんと自分の気持ちに向き合えるよ」
通話が切れたあとも、美優の言葉は胸の奥でくり返し響いていた。