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夕暮れの帰り道。
赤く染まった空の下、咲は一人で歩いていた。
――このままじゃ、もったいないよ。
美優の言葉が、何度も胸の奥で反響する。
言わなきゃ届かない。分かっているのに、もしも関係が壊れてしまったらと思うと、足がすくむ。
「……こわいな」
小さくつぶやいた声は、秋風にさらわれて消えていった。
手の中のスマホをぎゅっと握りしめる。
画面にはもう光はなくても、そこに残る温もりが、美優の優しい眼差しを思い出させた。
(私は……どうしたいんだろう)
問いかけは答えのないまま、冷たい空気の中に漂い続けていた。