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【赤side】
ブー、とメッセージが届いた通知音がした。今日は講義ないから寝ようと思ったのに……と、半分眠りかけた目を擦ってスマホを見る。通知は『ないふを応援し隊』という名のグループから送られてきた、あにきと初兎のメッセージだった。
『悲報 ないふまだヤってないことが判明』
びっくりしてベッドから転げ落ちそうになった。慌てて着替えながらグループに返信をする。
『緊急会議求む@あにき宅』と送れば、すぐに既読が3つ付き、ほとけが『賛成』と爆速返信をくれた。あにきからも許可が出たので、あにきの家に向かう。
今日は話が長くなりそうだ。
【悠佑side】
『ないふを応援し隊』。それは俺が作ったLINEのグループ名だ。内容は読んで字の如く。お互いに奥手で鈍チンなないふを応援したいという気持ちで作られ、ないふを除くいれいすメンバー4人で構成されている。
ないこから受けた相談事をそっくりそのまま超速球で応援し隊に送れば、初兎からも似たような文面が届く。あっちも今起きたらしい。りうらから『緊急会議求む@あにき宅』が来てすぐ、ほとけから『賛成』と送られてくる。いや、決めるの俺やから。
とは言いつつもやっぱりないふのことのほうが大切。しかも今日は土曜日で集まる日ではない。本当は相談を受けた昨日すぐに会議したかったのだが、初兎がまろと呑んでいたようなので今日にずれてしまったのだ。こちらも早く話したい。
『わかった、俺の家に全員着き次第会議開始』と送り、飲み物や茶菓子を4人分用意し始めた。
「お邪魔しまーす!」
「悠くんお邪魔するでー」
いむしょーが先に来て家に上がり込む。
「麦茶と適当な菓子おいてあるから食べてええで」
「「わーい!ありがと!」」
はしゃぐいむしょーをバックに、またまた扉が開く音がする。りうらだ。
「あにきごめん!遅かった?」
「大丈夫やでー。それじゃ会議と致しますか」
りうらが席についたのを見て、俺は開始を宣言した。
【初兎side】
「悠くんはないちゃんから聞いたんか?」
「そ。初兎はまろだよな?」
こくんと頷くと、りうらがボソッと呟く。
「アレ、ホントなの?あんなにイチャイチャしてるくせに?もしかして無自覚?」
いむくんも怪訝そうな顔をして言う。
「いふくんないちゃんの隣にいるときびっくりする程ニコニコしてるの無意識なのかな…?……あ、でも最近なんか寂しそうな顔してる時もあるかも」
「ないくんも。今までまろと一緒にいるとめちゃめちゃ機嫌いいのに、最近なんかまろのこと避けがちかも。すごく寂しそうな悲しそうな顔してるときある」
……こいつら、案外ないふのことよくわかっている。俺はなんとなく気づいてはいたが、ここまではっきりとはわかっていなかった。(だっていむくんが可愛いからいむくんしか見とらんし)
一通り最近のないふの状況を聞いてから、さっきまろから聞き出したことを発表する。
「なんか、ないこが手ェ出してくれへんのが悩みなんやと」
「えぇ?俺ないこに全くおんなじこと言われたんやけど……」
「「え???」」
どうやらお互いに相手に抱いて欲しいと思っているらしい。なにこれおもろ。草超えて森超えてユニコーンやん。
「え……普通逆を取り合うでしょ……」
「僕もしょーちゃんとどっちが…ぅ……上か取り合って結局今の所に落ち着いてるんだけど……お互い相手が抱いてくれるの待ってるとかある???」
「「「「……………………尊い」」」」
4人の声が重なる。
「お互いに鈍チンなのはないふファンに刺さるんだわ……そうゆうことしたら俺たち死んじゃうでしょ……尊みで……」
りうらが天を仰いで呟けば、悠くんも納得したように言う。
「これだからないふは……」
ここで俺はいいことを思いついた。とある爆弾を持っているのを忘れていたので、突然だが投下してみることにした。
「あ、思い出したんやけど、まろちゃん昨日『ないこのこと誘ってみるわ』って言うて帰ってったで」
「「「は!?!?!?」」」
さっきまで尊みで閉じられていた3つの双眸がズギャァと開かれる。悠くんに至っては目がデカいから目ん玉こぼれ落ちるんじゃ無いか心配なくらいだ。
「今までちんたらちんたらやってたと思ったら急に誘い受けとか……」
呟く悠くんに、いむくんも完全同意したように首を縦に振りまくる。
「やばいよ!?ないちゃんがいふくんのあざといおねだりに勝てるわけがない……」
「でもないくんは隠れ生粋いふ民だからやっぱり受けになるって押し通すんじゃない!?」
「どうなんやろ……言ってたのが昨日やからたぶん今頃寝てるやろ」
「電凸してみる?」
この爆弾を投下しつつ俺はさらに話を進める。
「ええけど、どっちに電話するん?」
「そりゃあ昨日『誘ってみる』とか言ってたらしいいふくんに電話かけないと♪」
ウキウキで言ういむくんに、俺も自然と口角が上がる。
「そうよな……俺が電話かけるでええ?」
「いや、ここは大人組の俺が」
「「「任せた」」」
ということで、あにきにかけてもらうことにした。
【悠佑side】
プルルル、と呼び出し音がしばらく続き、8コール目で電話が繋がった。みんなに聞かせるためにスピーカーをオンにする。
俺は一瞬でその判断を悔やんだ。
『ばかぁ…ッは…!?や”め”ッッ……ないこッッ、いまだめ”ッッ♡でんわしてう”ッッ♡』
もしもし、と言う前に飛び込んできたまろのものと思われる喘ぎ声。そういえばないこは大人組屈指のドSだったと思い出す。目の端でほとけがりうらの耳を塞ぐのが見えた。
『もしもしあにきー?おはy「あ”ぅ”ッッ♡おくや、やだッッ」まろー?ちょっと静かにして』
「……………………ないこすまんな。終わったら教えとくれ」
半ば逃げ出すように電話を切る。
「スゥーーーーーーーーーーーーーーーーー、ないふでした」
大きく息を吸って言う。
「まさかまだヤってるとは思わんかったなぁ」
初兎のしみじみとした声に目を伏せて答える。
俺だってまさか電話しながらヤり続けてるなんて思ってなかったしびっくりしたわ。スピーカーをオンにしたことめっちゃ悔んどるわ。
「ねえほとけっちなんも聞こえなかったんだけど」
「未成年は聞いちゃいけません!!」
ほとけがお母さんみたいになっとる。それはそれで面白い。
「取り敢えず無事に手ぇ出してもらえたって事でいいんだよね?」
りうらが訊く。
「ええんやない?まろも今日はいろいろ無理そうだし、事情聴取は明日にする?」
初兎の提案に俺たちは賛成し、今日は解散となった。
あとから怒りの電話をかけてきたまろの声がガッサガサで聞き取りづらかったことはまたのお話。