―――髪がサラサラな奴は嫌い。天パの自分が嫌になる
―――教室の扉を閉めない奴も嫌い。エアコンかけてるんだから閉めろよ
―――頭悪いやつが俺の隣の席になるな。授業の邪魔
―――センター分けの男は嫌い。ナルシストかよ
―――マッシュも嫌い。あんなのヤリモクしかいない
―――部活に入ってない奴は嫌い。部活やれよニート
―――運動部は嫌い。勉強できない馬鹿だから
―――あの男が嫌い、何も持ってないくせに何者かのようにふるまうから
―――あの男が嫌い、魔法少女と嘘をついてまで目立とうとするから
―――あの男が嫌い、平気で人に迷惑をかけるから
―――あの男が………
部活終わりの暗い空、他の部活の奴らはもう帰ったのだろう
男は2時間近く鳴り続けるメトロノームを止めると一緒に吹いていた後輩に向かって声をかける
「お疲れ、今日はカギ当番俺だから、先帰っていいよ」
「お疲れっす。じゃぁ私は待ってるので一緒に帰りましょ」
なつっこい後輩が楽器を片付けながら言ってくる
「じゃぁ一緒に帰るか、すぐカギ片付けるから」
男は教室のカギを閉めると、カギを返すために職員室に行く
「失礼します」
男が職員室に入ると顧問の先生と目があった
「うぃ。おつかれ、遅くまで頑張ってるな!」
先生はそう言うと手に持っていたマグカップを机に置く
「そう言えば次の部長と副部長を決める投票の結果が出たんだよ」
先生は椅子をクルリと回すと男に視線を合わせる
「本当は明日の部活で話す予定だったが……今言っちまうか」
先生はそう言うと少し笑った
「ホラこれ」
先生はそう言うとパソコン画面を男に見せる
パソコンには知った名前とその横に数字がずらっと並べられていた
「おめでとう!お前は『副部長』だってよ」
先生は屈託の無い笑みでそう告げる
「……副部長ですか」
男は自分の隣に書かれた数と、
親友の隣に書かれた数をジッと見つめながらそう呟く
「あぁ!惜しかったなぁ、あと2票で部長だったぞ」
先生はそう言いながら、男より数が2多い親友の名前を指さす
「………そうですか。では、失礼しました」
男はそう言うと静かに職員室の扉を閉めた
「―――センパイッ!」
暗くなった校舎の影からよく知った人間が飛び出してきた
「うァあッ!」
「驚きすぎですよ先輩」
後輩はそう言うとクスクス笑う
「……いやァ、イロイロ考えててな」
その言葉に後輩は男の顔を見上げる
「……先輩部活頑張ってますもんね、アレですよ!私!先輩に投票しましたよ、次の部長決めるヤツ!」
後輩は男を励まそうと元気に話す
「……そりゃぁ……ありがてェなぁ」
男はそう言いながら腕で目を覆う
「……センパイ?」
元気のない男の反応に後輩の元気までなくなっていく
「……なんかよォ別の話してクンねぇか」
男が目を擦りながら言う
「別の話ですか……じゃぁ、先輩って噂話とか好きですか?」
後輩はそう言うと先輩の腕に手を絡める
「………じゃァウチの学校に魔法少女がいるって噂、知ってますか?」
後輩のあの素敵な笑顔が滲んで見えた
後輩の言葉に今日の掃除の時間の会話がフラッシュバックする
―――最近流行りの魔法少女っているだろ
センター分けのあの男の言葉が脳に浮かび上がる
「―――なんか先輩のクラスにいるらしいじゃないですか」
後輩の言葉がやけにゆっくり聞こえる
―――その魔法少女、実は俺なんだよ
あの気持ちの悪い男は嘘をついていたんじゃなかったのか?
「なんか私の従妹は――――」
後輩の言葉が耳からすり抜けていく
「――――その魔法少女ってのはセンター分けの、俺と同じくらいの身長で……」
男は脳に浮かんだソイツの特徴をポツリポツリと呟いていた
「え!先輩も知ってるんですか!先輩こういう噂話あんま好きなタイプじゃないじゃないですか。知ってるなんて意外ですね!」
男の言葉に後輩の笑顔はますます明るくなる
「……あァ、意外だな」






