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この巻は前回からの続きである。
霊巌は紅い空が広がっているという街へと先に出向き、調査をしていたらしい。
しかし、その街では原因不明の症状が次々と市民に発症しているという。
霊巌はその原因を探っている…らしかったのだが、その原因不明の症状に発症した市民の一人が、人間の姿を保ったまま怪物となってしまったのだ。
今にもその怪物が霊巌に襲いかかろうとしている所から、今回は始まる。
??「グアアァッ!!」
怪物は思いっきり霊巌に襲いかかろうと突進してきたではないか。
霊「突進のみか…ならば容易い!」
薙刀の様に構えた錫杖を振るい、まずは一発当てる。しかし、一発当てたからには怪物との近接戦は一旦止めておいたほうが良い、と霊巌は考える。
怪物の突進の軌道を考え、霊巌は一旦広い場所へ向かう。
霊「此れは…ただじゃ済まぬと見た。」
出来るだけ一体一で終わらせるべく、錫杖を背負い直し、急いで手印を結びながら何かの呪文を唱える。そう、どんな距離でもいける血操術を発動させるべく広い場所へ誘導していたのだ
「…穿て!!」
霊巌の指先から、一雫の血が空中へ浮かび上がる。すると…
血はたちまち弾丸の様な形となって怪物の眉間を貫いた。
怪物「ガアアアァッ!!?」
怪物は気づく間もなく倒れ、跡形もなく崩れてしまった。
それと同時に忍と玄爾も合流した為、霊巌は事情を説明する事となる。
霊「言うてしまえば…原因不明の病によって人が物の怪と化してしまう事が分かった。」
忍「じ、じゃあ…お前が無事だった理由はなんだ?」
霊「おそらくだが…儂が人間ではないからであろう。」
玄「は?お前ただのジジィじゃねぇのかよ!?」
霊「まぁまぁ、昔話は後だ。おそらく…我々は只の人間でないから影響を受けずに済んだ。」
「だが、病の対象は分かったから良かろう。」
忍「そう…だな。」玄「とにかく、病院に運ばれたやつはもう手遅れの可能性は高いのか?」
霊「儂の見込みでは…おそらく半々は手遅れとなって物の怪となるだろうな。」
─おやおや…早速僕の眷属を倒してくれたみたいだね。─
忍「誰だ!?」
何処からか少年の様な声が聞こえた。声の元はおそらく空中だろうと断定できる。
玄「まさかジジィが言ってた怪物の名前が眷属って名前なのか?」
?「素晴らしい、あれはあくまで僕の駒だったんだけどね。」
「でも良かったよ。ノコノコと君達が来てくれて…そうだろう、セバスチャン?」
?「そのとおりでございます、殿下。」
三人はほぼ同時で振り向くと、先程の声の主である少年と執事であろう男が立っていた。
その風貌から、明らかに人間ではないと察せる。
霊「即ち、其の怪物は捨て駒に過ぎないと?」
?「まぁ、君の予想通りだね。」
「僕はシリウス・ブラッディア、今や吸血鬼となったかつての王族さ。」
「こっちは僕の愛おしいセバスチャン。まぁ、宜しくたのむよ。」
シリウスと名乗る少年とセバスチャンと言う執事は、まるで堂々と登場する黒幕の様に三人の前に現れたのだ。しかも、今なら倒せそうな距離だ。
だが、三人は上手く動けなかった。頭の中でどっちを先に倒せば良いのかを必死に考えていたのだ。先にシリウスの方を倒してしまえば、逆にセバスチャンがパワーアップする可能性もある。じゃあセバスチャンを先に倒せばと思ったが、倒すには絶対に時間が掛かってしまうと、三人はほぼ同じ考えを巡らせていた。
シ「悪いね、もう朝が近いようだ。僕らはここらで帰らせて頂くよ。」
「セバスチャン、今日はもう帰ろう。」
セ「承知しました、殿下。」
シ「それじゃあね。また会えるのを楽しみにしてるよ。」
忍&霊&玄「おい待てよ!?」
しかし、たちまちシリウス&セバスチャンはコウモリの群れとなって消えてしまった。
忍「シリウスの奴か…多分、アイツが元凶か…」
玄「とにかく、ぜってーあのガキぶっ倒してやるからな!?」
霊「だが…今は朝を迎えられるだけ良いと思うか。」
そのまま、紅い空は薄まって朝日が昇る。それでも、三人はこの夜が長いと感じたのだった。
─眷属の巻・終─
─次・玄武、眠るの巻─