「い…や…」
「いや? どこが嫌なんです? そんな風には見えませんが」
弓成りに薄笑いを形作る彼の唇が、食むようにくり返し口づける。
「いや…もう、やめて……はずして……」
きつく締まるベルトに、血が止まり手が冷たくなって、外してくれるよう無言で訴えかける。
「いいですね、その悶え苦しむ顔……。その顔で、はずしてと、もう一度ちゃんと言ってみなさい」
「……うっ、く……はずして……」
命令口調に引き出されるように、無意識な声が自らの喉から発せられる。
「では、素直に言えたので取ってあげますよ」
政宗医師が口にして、ようやく拘束を解くと、私の手を取り、手首周りの赤みをさわさわと撫でさすった。
「……こんなに真っ赤になって、かわいそうに」
上辺だけにしか感じられない優しさに、「やっ…!」と手を振り払うと、
「そろそろ気づいたらどうです? 拒んだりすれば、よけいにこちらの気を煽るだけだということに」
振り払った手が、ぐっとまた引き戻され、
「……あなたを、逃がしはしませんから」
彼の腕に、怯える腰が強く抱き寄せられた。
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