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『待ってください、落ちつきましょう。ねぇちょまっ、近づかないで!!!』「おいごら逃げんな、服脱げよ」
『変態ですかあなた。』
遡ること数分前
空っぽになったお皿の前でご馳走様と手を合わせる。下腹の膨満感が少し気持ち悪い。
でもこんな苦しくなるほど食事出来たのって初めてだな、なんて心の中で感慨に沈む。
『…ありがとうございます、ご飯。』
「いーよ別に。…おいで○○。」
イザナさんの声を聞いた瞬間。私の腕に優しく食い込むような手の感触があった。
そのまま引っ張るように前へ歩かされ、自然と足がイザナさんを追うように動く。
『…どこ…行くんですか…?』
知らないところに連れていかれると察知し、またもや不安の雪が積って声に滲む。反射的に掴まれた手に力を込める。
─また忘れてしまっていた。彼が誘拐犯だということを。
「風呂場、汗流してェだろ?」
私の不安を読み取ったのだろうか。極めて優しい声色で宥められ、気味の悪いくらい甘い感覚に浸かる。
確かに体中冷や汗やらなにやらがじっとりと肌に染み込んでいて気持ち悪い。
お風呂なら…いいのだろうか。
妙に納得してしまい、抵抗するのをやめてしまう。
「ン、いい子」
ぐしゃぐしゃと数回髪を撫でられまた前へ進む。腕はしっかりとイザナさんの手に捕まれているまま。
そのまま扉を開け、初めて見るこの家の廊下であろう場所に出る。廊下に閉じ込められていた冷気が一瞬にして私の体を囲む。
「ごめん、寒いよな。こっち風呂場。」
ぐいっと今までよりもずっと強い力で引っ張られ、視界が揺れる。「わっ」と情けない声が口から飛び出した。
『…………ぁ』
扉の横に置いてある棚のすき間から見えてしまった。
玄関が。
ドキンと心臓の音がドラムを鳴らしているみたいに身体中に響いていた。様々な考えが頭の中を目まぐるしく周る。
今なら絶対に逃げられる、イザナさんの手も振りほどけないわけじゃない。
でももし逃げて捕まったら?今度こそ確実に殺されてしまう。
だけどきっと今がド深夜でも人は少なからず居るはず。助けを呼べることだって出来る。
…もし私が今ここで逃げたらこの人はどうなるんだろう。
「…○○?」
いきなり喋りかけられて胸がどきりと音を立てる。
「風呂場ついたけど…どうした?」
随分と深く考え込んでいたのか、ハッと我に返り夢から覚めたように前を見ると元々自分の住んでいた風呂場とは似ても似つかないほど清潔なお風呂場が視界に映った。
『なんでも、ないです』
どうやらもう逃げられないらしい。悲しいような嬉しいような、不思議な気持ちに頭が痛くなってくる。
「よし脱げ」
『なんて?』
こうして時は最初に戻る_
物語の内容と誤字脱字を少し修正しました🙏
内容はあまり変わってませんがご確認お願いします🥺