テラーノベル
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周囲を巨大な円状の城壁に囲まれた大都市・王都テストラ
10万人以上がこの都市で暮らしている。
中央に王城を置き、八方に大街道が伸び
大街道には、同心円を描く様に道路が幾重にも広がっていた。
煉瓦・石材・木材など様々な素材で作られた建物がひしめき合い
所々煙突から煙が登る。
機械仕掛けの馬車や人が多く行き交う大通りを、ひとりの少女が歩く
顔を見れば、年の頃は16、7歳位だろうか
しかし同じ年頃の娘と比べれば、やや小柄な少女が
身の丈の半分以上はある大きな布袋を抱え
石畳で整備されたオシャレな街道を、鼻歌混じりで歩いていた。
あどけなさは残るが、よく見れば顔立ちは整い
腰程まで伸びた空の様に澄んだ蒼の髪が風に靡く。
上機嫌で歩いている、その少女の出で立ちは、
技師用の腰巻付き厚手の皮スカート
少女の手には大きすぎる手袋とブーツ
そして頭には、大きなゴーグル付きの帽子
一見、現場仕事をする様な少女には思えないが
その身なりから、新米の技師である事は、誰の目からも十分に見て取れた。
「ふんふ~ん♪ 私は可憐なレディ~になるのよ~♪」
流行歌のワンフレーズを口ずさみながら、分厚くて体に合わない技師服をまとい大荷物を抱えて翔ける。
その様子からは、残念ながら可憐さは全く感じられない
ドシャァ!
そして少女は、盛大にこけた。
買い物袋の中身を己の正面にぶちまけながら。
街道を行き交う人々は、そんな彼女を横眼に、思わず微笑みを浮かべる。
少女は慌てて、散らかした袋の中身を掻き集め
赤くした顔を更に真っ赤にしてその場から走り去った。
+o。。o+゚☆゚+o。。o++o。。o+゚☆゚+o。。o+
私の名前はセルヴィ・マクナイト
冒険者目指して魔技師見習いをしています。
ちょっとかっこ悪い登場となってしまいました…
気を取り直して!
魔技師とは魔具を作ったり直したりする技師・職人の事です。
ぇ、魔具って何かって?
この世界にはマナが満ちていて、人は皆マナの力を取り込み、魔法へと変換・行使します。
主に炎・水・風・雷の4つの属性に分かれ
その素養はほぼ皆に産まれ付き素養として備わっています。
ただ魔法と言っても、神話の神々の様な天地を砕く力がある訳でも
おとぎ話の様な、どんな奇跡も起こしてくれる様な、都合の良い物ではありません。
せいぜいランタンや釜戸に火をともしたり、僅かな水を産み出したり
簡単な風の流れを作ったりする程度の事で
あれば少し便利程度の、ほとんどの人が当たり前に使えるごく普通の力。
とてもそれだけで凶悪な魔物と戦ったりする事は出来ません。
そのため、昔の人は魔物の恐怖に怯えながら、隠れる様に細々と暮らしていたそうです。
しかし数百年前に大きな変化が訪れました。
それが魔具という魔法の力で動く機械の誕生です。
炎の魔法の何倍にも増幅して剣にまとわせたり
風の力を圧縮して魔物を切り裂く刃としたり
水の力で龍の息吹すら打ち消す盾を産み出したり
魔具の誕生により人は魔物を退ける力を手に入れ、その生活圏を拡大していきました。
結果今では戦うための武器だけでなく
町に水を流したり、部屋を暖めたり、馬車を引く動力であったり
生活や産業・日用品に至るまで魔具は欠かせない物となっています。
ちなみに何故冒険者を目指しているのに魔技師見習いをしているかというと
実は私、超レアな属性無しなのです!
…って全然偉そうに言う事じゃないのですけどね…(汗
皆産まれ付き、4つの属性のいずれかを持ってる、って言いましたけど
それは【ほぼ】で、極めてまれに何の属性も持たず
#ファンタジー/SF
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一切の魔法を使えずに産まれる人も居ます。
私もその一人ですね。
魔法が使えなければマナを動力とする、魔具を動かす事は出来ません。
魔具を使う事が出来なければ、魔物との戦闘等の危険が伴う冒険者には致命的です。
しかし魔技師としての技術スキルと知識があれば
魔具を使えない私でも冒険者になる事が出来ます!
かくして、何故私がこんな大都会に居るかと言うと
もともと私はここから馬車で三日ほどの田舎の小さな村で暮らしていました。
そこで私は、独学で勉強したり
『昔は都会でブイブイ言わせてた』という、
胡散臭い噂の、でも腕は確かな
村で唯一の魔技師であり、私の育ての父でもある
ドミルさんと言う方の修理屋さんでお手伝いをさせて頂いていたのですが…
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<ありし日の、ドミルの修理屋にて>
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キン!…キン!…キン!
様々な工具類が壁中に掛けられた工房の中で
一人の男が背中を丸めて黙々と手元の作業を行う。
「おいセルヴィ、お前さんいつまでここに居るつもりだ?」
60は越えるだろうか、白髪に白髭を蓄えた初老の男が
おもむろに手を動かしながら、少女へ背中越しに声をかける。
「ぇ?いつまでって…閉店時間までは居るつもりですよ?残業ですか?」
すぐ後ろで細かな歯車等の機械部品を磨き、整理していた彼女は
突然かけられた質問に頭に?マークを浮かべ答える。
「そうじゃない、いつまでこんな寂れた村で
日用品のガラクタ修理なんかしとるんだって聞いとるんじゃ」
「何てこと言うんですかっ!ガラクタなんかじゃありません!
生活魔具だって、一つ一つ当時の技術者の人達が必死に考えて
心血を注いで産み出された努力の結晶ですよ!」
「そうじゃなくてじゃな…、そういう所は嫌いじゃないが、お前さん、何時か冒険者になって遺跡に潜りたいんだろう?」
作業の手を止め、振り返り、改めて男が彼女を見据える。
「そうですよ、だから一日も早く一人前の魔技師になって…」
「ならこんな寂れた所でいつまでも
チンタラやってる暇なんか無いはずじゃ」
「チ、チンタラなんかやってません!
ドミルさんからはまだまだ毎日一杯勉強させて貰ってます!」
「だからそんなんじゃ全然足りとらん言うとるのじゃ!
お前は明日、村を出なさい。
王都の弟子にゃもう伝えてある。
そっちで死ぬ気でやってみれ!」
「ふぇ…!?」
ドン‼
あっけに取られているとドミルが目の前に紹介状の入った封筒を叩きつけ、立ち去り勝手口のドアに手を掛けた
「ちょ、ちょっと!そんな突然っ!」
「無茶だろうが何だろうが、死ぬ気でやらなきゃ何にも出来んわい
まぁ頑張って来るんじゃな、カッカッカッ!!」
乱暴に閉められたドアの向こうで、豪快な笑い声が遠ざかって行く
「そんな事言われても急すぎますよーーっ!」
一人少女の悲鳴が、夕暮れ差す、草原の小さな修理屋にこだました。
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そんなこんなで私は、大都会の街並みを一人
大袋抱えて走っているのであります。
「はぁ…はぁ…しかし流石はドミルさんの一番弟子…容赦ないですね…」
息を切らしながら買い物を指示した者への恨み言を呟く。
セルヴィが衆人の前で痴態を晒したのは自業自得、完全な逆恨みであるが。
彼女の言う通り、新たな師匠は非常に厳しかった。
今、彼女は師ドミルの弟子、彼女の兄弟子カイドという男の店
【三日月亭】で魔技師見習いをしている。
兄弟子は、女であろうと小柄であろうと
肉体的にハードな仕事も容赦なく振り割った
まだ見習いという事で作業場に入る機会は余り与えられず
彼女の主な仕事は買い出し、納品、依頼の窓口担当、炊事・掃除・洗濯等雑務全般であった。
『何事にも全力で当たれ、今出来る事に全てを出し切れ
技術・体力・知識・容姿、持てる物は全て使え』
と言うのが彼のモットーだった。
「でも腕は確かですし、間違った事は言ってませんよね
今の私に出来る事を精一杯頑張りましょう!(`・ω・´)」
街道のど真ん中でガッツポーズを決めたレディは
周囲の視線に気付き、再び顔を真っ赤にして走り去るのであった。
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