(実況中継)
「田村が一旦、バッターボックスを離れました。そして、バッティングコーチの平田がサインを出し、田村は了解しました。今のサインは何を意味するのでしょうか? ここでフォアボールとなれば、ホームランキングはパイレーツのバークランドと並び本塁打数が同じになりますが、田村の最後の打席だったので勝負をしてほしかったですね、川籐さん」
「まあ、この状況では残念ですが、仕方がありませんね」と川籐が辛そうな表情で応じました。
「野口は、第1球目、2球目と明らかにボールを高めに外し、2ボールとしました。そして、3球目もボールです。残り1球となりました」
大阪ドーム内、ほとんどの観客が総立ちになり、「勝負しろ!」「野口、逃げるな!」と一部の観客が大声で叫んでいます。
しかし、キャッチャーは立ったままで、野口がセットポジションから、第4球目を投げました。
「田村はまだ諦めず打つ構えです。そして、野口が第4球目を投げました。ボールは田村の胸の高さ近くへ、フォアボール、 いや、田村はバットを大きく振りました。打球はセンター方向へ飛んでいます。センターはバックしていますが、捕球できません。3塁ランナーがゆっくりホームへ、1点が入りました。センターがボールを追いかけるのを見て、クルーズの代走、亀山が二塁から三塁、そして、ホームへ入り同点になりました。田村は3塁でストップか? 3塁コーチ、平田がぐるぐると手を回しています。ボールがセンターからショートへ返球され、バックホームへ、田村はヘッドスライディングしました。キャッチャーがワンバウンドで捕り、田村の足元へタッチ。判定は? 主審は右手でアウトのポーズ。同点に終わりました。非常に残念です」
すると、川藤が「今、監督が飛び出してきましたよ」と伝えた。
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