いつの間にか照明をおとしていた部屋。さっき丁寧に着せてくれた服はすっかり乱されていた。
臆することなく指をすすめる彼。
「ぅ…んん」
つぷ、と中に彼の長い指が入ってくるのが分かる。カクンと指を折って腹の方を軽く押し上げるようにして動かされて息が漏れる。
あの時以来の慣れない感覚。
「痛い?」
「ううん」
好きにしていいと伝えたのにこちらを気遣う彼。例えこっちが拒絶しても文字通り手も足も出ないからいくらでも強引にことを押し進められるだろうにそうはしない。
怒っていない?
いや、さっきは確かに怒っていた。でも自分はおかしいと泣いて懺悔するように話していた。
酷くされると身構えていたけれど。まだ前戯だからだろうか。でも雑にするのが前提ならこんなに丁寧にしないと思うけれど。
昼とは逆で今度は俺が小柳の目を見られなくなっていた。
「あッ……」
いいところに当たって声が出てしまう。それを見て彼が続けざまそこに触れてくる。
戸惑った。ぎゅっと目を閉じて唇を噛むように耐えるような時間がくると思っていたのにその瞬間は今だに来ない。
それどころかさっきの彼の表情の複雑さは氷が溶けるようにして徐々になくなっていく。残ったのは愛おしそうに触れ合おうとする彼。
「こやなぎ…ねぇ、 キスして。お願い」
ぞわぞわと上ってくる快感に耐えかねて顔色を窺いつつねだれば彼は柔く口付けてくれた。
混乱した。じゃあ、あの言葉は一体何だったのか。当て付けじゃないのか。でも、そうじゃないならどういう意味で言ったのか分からない。
優しいけれども深いキスにまた心が波立つのを感じた。
お願い、さっきの感情のまま好きにして。雑に扱われたって構わないから。受け入れるから。
心の中で贖罪を望んだ。
長い前戯の後、孔にゆっくりとモノを挿入した。
「はぁっ……んん…」
ずぷ、と彼の中にモノを全ておさめると彼は腰をくねらせた。足が本来存在すべきところにないため、思っていたよりも深く入り込んでいった。
彼は平常を装っているらしいが、怖がっているのが些細な動作や目線で分かっていた。
とろとろに熱くなった内側が気持ち良い。
モノを奥に押しつけるようにして腰を止め、仰向けになっている彼の首の後ろに腕をまわした。
「あの日から誰かに抱かれたりした?」
あまりにも柔くまとわりついてくる熱いそれ。聞けば彼は首を横に振る。頬を赤く染めていて、額にはしっとり汗が滲んでいる。額から頬に指を滑らせ、汗で顔にくっつく彼の長い髪をかき上げる。
「嘘ついてない?」
「うん、なん…で」
「……久々って感じじゃなさそうだから」
素直にそう言えば彼は顔を逸らした。見れば耳まで赤くしている。嘘じゃなさそうだ。
「……動かないの?」
「うん。まだ」
恐る恐るといったように聞いてくる彼。
体に負担がかからないように、激しくしなくとも快感を拾いやすくなるやり方。
形を覚えさせるため、まだ動きは開始せずに腰を押し付けたまま静止。さっき星導に着せた服のボタンを全部外してはだけさせる。
自分の服は全部脱いでベットの端の方に放った。
露わになった平らで薄い腹。その下腹を手のひらでゆっくり押してみる。あの時と同じように。
「ひぅっ……んんッ」
彼は小さく声をあげた。
「これ、ね。前もこうしたの覚えてる?」
チラ、と一瞬目が合ってすぐに逸らされた。
手のひらに重さを乗せていき、トン、トンと力を加えたり加えなかったりしてみる。
「あッ……」
艶のある声と締め付けてうねる中の感覚に目を細めた。体は覚えているらしい。反応を見ながら次第に動きを早めていく。
「うぅあッ…んんッ……」
顔を真っ赤にして声を我慢しようと必死な彼が健気で可愛くて愛おしくて額にキスを落とした。目を合わせようとしないのは、震えているのは、快感のせいだけじゃないのが分かる。
「あッ…ぁッ…」
以前の姿ではないけれど鬱くしいその媚態に欲を煽られる。やっぱり自分はおかしい。おかしくなってしまったのかもしれない。怯えながらも今の状況を受け入れるしかない体の欠けた彼に欲情してしまうなんて。
理解されないだろうが、本当に彼をただただ愛そうとした結果がこれだ。
「はぁッ…うぅあッ…ぁッ」
痙攣したように震える腰を撫でつけながら手の平で中を刺激するように下腹を押す。壊してしまわないように優しく。
ねぇ、お願い。怯えないで。そんなことすぐには無理だろうけれども。
心の中で希う。
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