桃赤
(一度短編集に投稿したものです。
一部変更あり)
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赤side
目が覚める。
何故か分からないけれど、なにもしたくない。
ぼ~っと天井を見つめる。
スマホを手にとって時刻を確認するともう17時を回っていた。
起きなきゃとおもい体を起こす。
目に入ったのは真っ暗な画面のパソコン。
なにもできていないことが苦しくて
さっさと部屋を出る。
リビングへ行くと机の上には台本が書いてある紙やそのメモがあった。
昨日は寝ずに編集や台本作成をしようとしたけれど結局は集中できなくて寝たんだった。
こんな俺が嫌で、みんなに申し訳なくて、機材や台本を見るのが苦しくて、
家を出ようとした。
が、外はもう暗いし寒いだろう。
なにか上から着よう。
そう思うが薄いカーディガンしかない。
なんだか部屋に行く気力もないのでそれのみで家を出る。
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案の定、外は寒くて俺の体は一気に冷えた。
それが俺の気持ちを表しているみたいでなんだか心地よかった。
どこに行こうか考えながら適当に歩いていると、ふと公園が目に入った。
明るい時間なら小学生が沢山いるのに、17時半となると流石にもういない。
周りには学校帰りの中学生や高校生。その中にはカップルがいたり。
他にも犬の散歩をしている人もいる。
人生楽しんでそうだなぁなんて思いながら公園のベンチに座る。
俺だって今の人生を楽しんでいるはずなのに。
もうそろそろ雪が降ってもおかしくないのになぁ…
そんなことを思いながら暗くなっていく空を見上げる。
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頬に何かが落ちてきてひんやりとした感覚で目が覚めた。
公園のベンチで眠っていたようだ。
先程よりも暗くなり、手の指先は冷たくなり少し痛い。
辺りを見渡すとまだあまり積もってはいないものの、白い粉が降ってきていた。
雪も降ってるし、もう帰ろう。
そう思ったのに、動きたくない。動けない。
ここにいても寒くて無駄な時間が過ぎて行くだけなのに。
なかなか動けずにいると
【赤~、通話誘ってるんだけど無理そ~?】
【あれ、もしかして外?】
メンバーの桃くんがメッセージを送ってきた。
どうやら通話アプリで通話しようと誘っていたらしい。
別のアプリだが文字を見ると声が聞きたくなったので通話をかける。
赤『もしもし、』
桃『もしも~し』
赤『…、桃くん…いま、…どこ、?』
桃『…家だけど…』
『赤は?』
赤『…』
『こ~えん…』
桃『雪降ってるけど…寒くないの、?』
赤『……さむぃ…』
桃『寒いんかい…じゃ、そこから移動すんなよ~?』
赤『ぁい…』
低くて温かくて、優しいあの声が大好き。
白い雪が降ってる景色はどこか儚くて、落ち着く。
でも、寒くて苦しくて、帰りたいのに帰りたくない。
もうなにもかもわからなくなり、目からは涙が溢れる。
どれくらい経ったのか、
桃くんが来ていないということはまだあまり経ってはいないはず。
ずっと、涙が止まらない。
どうしよう、桃くんが来るのに。
そう焦っているとしゃりしゃりと雪を踏み、誰かがこちらへ来る音がした。
顔を上げると寒さで顔を真っ赤にして安心した表情を浮かべる桃くんだった。
桃『赤…っ…!』
赤『桃くっ…早いよ…っ笑…』
桃『だって心配だったし…、』
赤『…笑』
桃『…はい、これ着て?』
赤『ありがとっ…、』
桃くんから渡された上着は
去年俺が 『これめっちゃいいね』と褒めたやつだった。
そのことを覚えててくれたから持ってきてくれたのかなと思うと嬉しくなった。
桃『…うちくる?』
赤『もう少しだけでいいからここに居たい…』
桃『、風邪ひくなよ~…』
赤『もう周り白いね…』
桃『冬だなぁ…』
暗い公園に2人、桃くんが買ってきてくれたあたたかい缶コーヒーを手に
俺は地面に敷かれた雪へと視線を落とす。
そんな俺とは真逆で桃くんは雪の降る空を見上げていた。
桃『今日なにしてたん?』
赤『ん~…昨日寝れてなくて、今日昼から寝てた…』
桃『まじかよ…すげぇな』
『俺は昨日の企画がきつすぎて速攻寝たわ…笑』
赤『…笑、たしかにきつかったね…笑』
桃『作業してたん?』
赤『うん、…でも進まなかったんだよね…』
『集中できなくて…、』
桃『そ~なん…ま、今日くらい休んだら?』
赤『…』
桃『俺ん家来たら休むしかないだろ?笑』
赤『まぁ…そうだね、笑』
桃『もうそろそろ寒すぎて俺の限界が来そうだわ笑』
赤『じゃあ桃くんち行く~…!』
他愛のない話をして、それから桃くんの家へ行く。
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赤『お邪魔しま~す…』
桃『は~い』
桃『はいこれ。風呂入ってきな~』
赤『服…桃くんの、?』
桃『小さいんじゃないんだから着れるだろ?え、やだ?』
赤『んふ笑い~よ、やったぁ…』
桃『嬉しいんかい!笑』
赤『じゃあお先~』
俺達のグッズのパーカーと桃くんのだぼっとしたズボンを受け取り風呂場へ向かう。
なぜ俺色のパーカーを持っているのか気になったが、
桃くんなら全色買ってそうだなと納得しておいた。
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桃くん家のお風呂は流石としか言いようがないほど綺麗だった。
整頓されていて、使いやすい。
ぽちゃんとお湯に浸かる。
心も温まる。
まるで桃くんと話したときみたいに。
赤『…笑』
なんだか新鮮で嬉しくて、笑みが溢れる。
つい長風呂をしてしまったので急いで浴室を出る。
桃くんの服を着てみると、いつも感じる桃くんの匂いがして落ち着く。
…これ赤色なんだけどなぁ…。
細かいことは気にせずに桃くんのところへ行く。
赤『ごめんっ、長風呂しちゃった…笑』
桃『赤が長風呂とかイメージなさすぎるんだけど笑』
赤『いつもシャワーだけだから気持ちよくてさ笑』
桃『じゃあ俺入ってくるから自由に過ごしといて~』
赤『はぁ~い』
一人になった途端、心がスッと冷たくなっていく。
この感情が、なぜだかわからない。
大きくて高級そうなソファでぼ~っとしていると、
桃くんが少し濡れている髪でこちらへ来た。
桃『ん、どうした?』
赤『なんも……、』
桃くんは俺の目の前でしゃがみこんで俺の頬に手を当てる。
桃『なんもないって顔してねぇだろ。』
その手が温かくて、俺を見る視線は真剣で、優しい。
でも、優しくされることが少し怖くて、足元に視線を移す。
すると桃くんから借りた服に模様が描かれていく。
一粒、また一粒と涙が溢れる。
桃『誹謗中傷って辛いよな、怖いよな。』
赤『へ…、』
桃『誹謗中傷だけじゃない。』
『今までのことも全て。』
『よく頑張ったな。』
赤『っ、…』
桃『俺さ、…笑』
『赤に恩返ししなきゃいけないことがあるんだわ、笑』
赤『え、?』
笑いながら話す桃くんへ視線を戻す。
すると笑っていると思っていた桃くんは涙ぐんでいた。
桃『ちょ、なんで急に見んだよ…!笑』
赤『ぇ、あ…』
桃『…笑』
桃『俺、赤と出会ってなかったらどうなってたかわかんない 』
『赤は俺の人生を変えてくれた。』
『ありがとう。』
こんなにちゃんとありがとうなんて言われることがなかったから、
なんだかすごく、救われた気がした。
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カーテンの隙間から朝日が差す。
隣で寝ていた桃くんは既に起きてリビングのほうにいるようで、俺も起き上がった。
昨日のことが嘘みたいにすっきりしている。
これも全部桃くんのおかげだな、と思いながらるんるんでリビングの方へ行く。
桃『赤、おはよ』
赤『おはよ~!』
桃『元気だなぁ~笑 』
赤『め~っちゃすっきり起きれた~!』
桃『よかったじゃん笑』
赤『ね、あとでゲームしよっ!』
桃『お、ボッコボコにしてやんよ笑』
赤『かかってこいや!笑』
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『雪の降る夜は冷たくてあたたかい。』
𝐸𝑁𝐷𓂃𓈒𓏸◌
コメント
4件
り~にゃさんの桃赤大好きです🥹💕
やっぱ桃赤っていいですね、、なんか書き方めちゃ好きです((語彙力なくてごめんなさい笑笑