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1 - 遺書 –君のいる地獄を僕は–

♥

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2024年02月07日

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__この世界で僕は生きる価値なんてあるんだろうか。


なんて彼に言えばどんな顔をするんだろう。

もし、僕の体が冷たくなっても抱きしめてくれるんだろうか。


夏の終わり、子供たちの「また明日」の約束の聞こえてくる時間

僕は遺書を書き始めた。

僕にはもう明日しかないんだな。なんて他人事のように思い、ふっと鼻で笑う。

明日この世界とさよならをする僕は、僕が思っていたよりもずっと穏やかにこの物語に終止符を打とうと考えていた。


こんな僕を見て君は「バカだね」なんて言っていつもみたいに明るく笑ってくれるんだろうか。


「こんな時まで思い出すのは君なんだな」

と、何気なく目をやった窓の外を眺めながらつぶやく。


結局誰の興味も引けないままなんだな、

生きた証も誰にも覚えられずに死んでいくんだろうか。

僕のことを覚えていてくれる人はいるんだろうか。

こんな僕でも、君は泣いてくれるんだろうか。


なんて、夜が街を飲み込んでいく様子を見て余計なことを考えてしまう。


「だから夜は嫌いだ。」

なんてぼそっとこぼす。


、、、遺書に書きたいことはたくさんあったはずなのにいざ書き始めると何を書けばいいのかと悩んでしまう。

ただ、僕がさよならを告げるこの世界はどれほど美しい世界なんだろう。

なんて考えながらまたペンを動かし始めた。


できるだけ痛くない方法で眠るように死にたいなぁ、

そんなことを望むなんて贅沢なんだろうか。


、、、さて、あとは何を書こう。書き残しはないだろうか。

また、遺書を書く手が止まってしまう。


久しく会っていない友達も

忘れてしまいたい元恋人も

全部全部この世界に置いて行こう。

身一つで何処か遠くに行ってしまおう。


とにかく僕は死にたいんだ。

変に邪魔なんてしないでくれ。

黙って、1人で死なせてくれ。


「生きていればどうにかなる」

「死んだら何も残らない。」

「生きていれば」「生きていれば」「生きていれば」


生きていれば!!!


うるっせぇんだよてめぇら。

綺麗事吐けばどうにかなるなんて考えてるようなお前ら偽善者に僕の何が分かるんだ。


結局誰かが死ななきゃ変わることなんてないこの世界で

どうせ僕が死んでも何も変わんないんだろう。

僕の最期の抵抗だってきっと誰にも届かない。


もう人を愛する方法すら忘れてしまった僕の「助けて」の言葉も僕じゃない誰かの「助けて」が見つけてもらえるように。

僕がいなくなった世界はどうか少し変わってほしいな。


適当に生きてるような人達が心底羨ましい。

僕も馬鹿になってしまえばもっと楽にこの世界で生きることを許されたんだろうか。

そうすれば、もっと君と生きれたのだろうか。

そしたら、こうやって死ぬことも辞められるんだろうか。


あぁ、そっか。

僕は僕でしかないのか。

僕以外になんてなれやしない。

もう嫌だ、こんなのもうたくさんだ。


夢を持っていたあの頃の僕は未来に希望を持っていたんだろうな。

こんなになってごめんな。


いつの間にか夜が明けて空が明るくなっている。


街全体が寝静まり、まるで世界に僕だけしかいないような感覚になる程静かな街をこの世界の端っこまで歩いていく。

あと一歩、前に踏み出せばこの地獄から抜け出せる。


今日、僕が死んだら僕の死体を抱きしめて、どうか愛してほしい。

君は僕のこの最期の抵抗を笑ってくれるだろうか。


いきたくないんだ。

本当は君の生きているこの世界でもう少し生きていたかった。

でももう無理なんだ。

夜になるたび嫌なことを考えて

朝になれば絶望する。

そんな世界が本当に怖いんだ。


あぁ、愛されたいな、愛していたかった。

君の綺麗だと言ったこの世界を。

君のいるこの世界を。


この瞬間まで君のことを考えてしまう。


どうしよう。涙が止まらない。

僕は死ねない。

死ぬには、あまりにも心臓が五月蝿かった。


だって、死んでしまえば最期君は僕に笑顔を向けてはくれないんだろう。

僕は、君に笑っていてほしいんだ。


五月蝿すぎるこの拍動と

もう聞こえない“SOS”

案外僕は怖がりだ。

だからずっと泣いていた。

死ぬことも、君を置いていくこともできない。

こんな僕でも君は愛してくれるだろうか。

体温のある僕を強く抱きしめて、君は笑ってくれるだろうか。


__僕は遺書を書いていた。


















ーENDー

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