テラーノベル
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配信が終わり、できおこは自室で静かにキーボードを叩いていた。彼は企画の録画データをチェックし、メンバーごとの発言や反応を詳細に記録していた。彼の「真面目さ」は、ニート部の混沌とした企画を裏で支える、土台のような「自分らしさ」だった。
しかし、この真面目さが、彼の「困り事」でもあった。
(俺の真面目さは、この場所で本当に必要なのだろうか?)
他のメンバーは、ひまじんのように嘘で笑いを取り、陰キャ転生のように煽りで場を盛り上げる。彼らの「自分らしさ」は光り輝いていた。一方、できおこは裏方の調整や、真面目な解説役がほとんどだ。
「俺の真面目さは、地味で退屈だ。もっと目立つ『個性』を持たないと、この居場所を失うかもしれない」
そんな彼の内面の不安を、一人の男が打ち破った。
ボイスチャットに突然、DDの悪意に満ちた笑い声が響いた。「ケケケ!できおこ!お前、まだそんな地味な作業やってんのかよ!お前の座右の銘はなんだ?『御殿場の農耕民族』だろ?早く画面の外で畑でも耕してろよ!」
DDの座右の銘は「他人の不幸は蜜の味」。彼の「自分らしさ」は、誰かをいじり、不満を爆発させる過激さにあった。できおこにとって、その煽りはいつも心に刺さった。
「DD、俺は企画を円滑に進めるのが役目だ。お前の言う通り、目立たないが…」できおこは冷静に返そうとした。
「役目?クソ食らえだ!お前の役割なんて誰も気にしてねぇよ!もっと自分のやりたいようにやれ! 俺みたいに、もっとクソガキになれよ!」
その言葉に、できおこは一瞬、怒りを覚えた。だが、すぐに気づいた。DDは「過激さ」という鎧をかぶっているが、彼の本質は「自分らしく生きること」を誰よりも肯定していること。DDは、できおこが「真面目さ」という鎧を脱ぎ捨て、もっと自由に振る舞うことを望んでいる。
(DDの『他人の不幸は蜜の味』は、誰かに無理をさせないための新しい『見方』なのかもしれない)
彼が真面目に働きすぎた結果、陰キャ転生のように潰れてしまうこと。それこそが、DDが本当に嫌がる**「不幸」**なのではないか?
できおこは、静かに笑った。
「DD、お前には負けないさ。俺の『真面目さ』は、お前の『クソガキ』を超える。なぜなら、俺の真面目さが、お前たちが安心して暴れられる『畑』を作っているんだからな」
彼の言葉に、DDは初めて言葉を詰まらせた。「…なんだよ、その地味な返答は」
だが、その声には、どこか満足感が滲んでいた。
できおこは、自分の「困り事」であった「地味さ」を、「全員を支える土台」という新しい「見方」で捉え直した。彼の真面目さは、過激な個性が集まるニート部を崩壊させないための、必要不可欠な「味方」なのだ。
そして、DDの過激な煽りもまた、「真面目すぎないでいい」という、できおこへの愛情溢れる「味方」だった。二人は、対極の「自分らしさ」を持ちながら、ニート部という居場所で、お互いを必要とし合っていることを知った。
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