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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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舞い落ちる桜の花弁の下、ゆっくりと校門から入口までを歩いていく。

隣には池流と鍵留が並び、


「なぁ、やっぱり考え直さないか?俺が副部長とかガラじゃないんだが」


と、池流がボヤクが、


「アキラメロン。こないだ、フミフミちゃんと一緒に冒険者資格、取ったんだろう?」


そう。コヤツ、文章先生が顧問に就任するならと冒険者資格を取る事を聞いて、ならば自分もと、俺個人に借金の申し入れをしてきたのである。

以前の借りもあるし、喜んで貸してやりたくはあったが、とりあえず、冒険者プランを聞いた所、大した事は考えていなかった様なので、文章先生と一緒に冒険者ブートキャンプに叩き込んだ上で、再検討、させたのだが……


基礎体力鍛錬をこなし、フミフミちゃんとマンツーマンのレッスンで試験勉強に励み、親御さんの許可を取り、試験合格した上に、明確な方針まで持ってきては、俺が認めない訳にもいかず、餞別と一緒にお金を貸したのである。


「ああ! ……それはそうと、あの|召喚モンスター(インキュバス)は何とかならなかったのか?」


「い、一応はCランクのヤツだから……」


そう、オークションで入札者が出なかった曰く付きを押し付けた訳ではない。

これは餞別……! 友人の旅路に手向ける餞別であって、不良品の在庫処分ではない……!?


「間違ってもフミフミちゃんの前に出せるヤツじゃないんだが、それは……」


「守護(まも)りたい人がいるなら、手段を選ぶのはただの贅沢……だろ?」


微笑みながら、池流の肩をポンと叩く。


|昔の教訓(ヤマダジケン)は僕達に大切な事を教えてくれた。その教えは今も俺達の心の中に根付いている。


「……で? それはそうと、本当に”あの内容で”入部試験はやるのか?」


「生半可な覚悟で来られてもシャーないしな!”俺も”入部試験は一緒に受けるし、文句は出させんよ!」


「まぁ、そもそも入部希望者が居るのかも解らないですぞ!?……言ってて有り得ないとは我ながら思いはするのですぞ……」


「昔の俺と同じで人生一発逆転狙うのや、俺の稼ぎにタカろうとするのは居ないはずがないからな……」


まぁ、それを弾くための”入部試験”なんだけどな!?


「それはそうと、あの子達も今日から来るんだよな!?」


「ああ、若干一名は生徒枠じゃないけどな。始業式の時に分かるだろうけど」


時間は飛んで始業式の新校長の挨拶の途中で、


「新学期が始まるにあたりまして、海外より我が校への転校・編入希望者が多数居りました事を踏まえて、第二学年のクラスが一つ増える事になりました。また、今学期より我が校において試験的な試みとして、え~所謂”召喚モンスター”と呼ばれる方々を生徒として受け入れる事になっております。生徒および教員一同、我が校の校風である、”ヘイキンテキ”を保ち、非常の振舞いに及ばない様に努めて……

また、保険教諭の伯夷乃 緒庭(ハクイノ オバ)さんの補佐として、あちらの天女 宇受乃(あまめ うずの)さんが非常勤でお勤め頂く事になります。男子生徒諸君、保健室の不正利用は控える様にお願いします」


始業式が終わり、教室に戻ると、拳道君が、


「部活の練習中で怪我しちまったら保健室に行ってもおかしくないよな……!」


とか呟いていたので、背後に回ってボソッと、


「ネタバレ:天女 宇受乃イコールエインセル」


と言うと、愕然とした表情で、


「嘘だろ……!?」


とorzした。気の毒だとは思うが、後で知るよりは傷が浅いと思うんだ。他の人?シラネ。


担任らしきエニシングが来てホームルームが始まって、


「お前等落ち着け。えー、校長が言っていたが。このクラスにも所謂”召喚モンスター”の転入生が来ることになった」


「センセー、留学生はー?」


「人数が多すぎるんでそっちは新クラスに纏めて編入……誰だ、隔離とか言った奴。ヘイキンテキを保てていないぞ」


「で、召喚モンスターだが、ぶっちゃけ先生よりも詳しい奴がこのクラスにも居る……というか、小野麗尾、全員お前の召喚モンスターだよな?」


「そーゆー訳で詳しい事はアイツに聞け、先生は答えられん」


おい、教職……!?


「まぁ、前置きはこんなもんで良いだろ、静かにしてろー」


そういって出て行った担任の何某氏が、3人を連れてくる。


オオオオオオオオオオオ……


クラスメイはが僅かに騒めいたが、その後で


「あっ!旦那~、姉さん、ほらあそこあそこ、旦那がいるよ!」


淡姫ちゃんが俺を指差して騒ぎ、


「淡姫、挨拶の場ではしたない真似は……」


と、志子ちゃんが窘め、


続いたジャンヌちゃんがハニカミながら小さく手を振ってくるのを見て、


一斉に俺の方を向いてジッと見て来るのは下手なホラー物より怖いんだが。


事前に打ち合わせていた通りに無難に自己紹介を済ませた3人が席について、HRが終わった直後に女子に囲まれたのを見届けて、


包囲が解かれるまで軽く寝ておこうと、机に伏せたのだが。


「オーッホッホッホッホッホッホ!!!!!ここがあの男のクラスなのね!!!」


フランス語の金切り声がクラスに響き渡る。


「オ・ノーレ・オ! マモルとやら!!!隠れていないで出てきなさい!!!」


突然の事でざわついていたクラスメイトだが、俺の名前らしき言葉が聞こえた事で、一先ずは落ち着いた。


「誰だか知らんがうるせーぞ!!」


ジャンさん譲り(譲ったとは言っていない)の”お上品な”フランス語で応答してやると、


「まぁ、何と野蛮な!?」


言われてますよ、ジャンさん。


「俺が小野麗尾 守だが、海を渡ってキャンキャン騒ぐアンタ様は何処の誰でしょうねぇ?」


「ふぅ……よく聞きなさい!

 私(わたくし)こそは我が祖国フランスが誇るかのAランクギルド聖乙女騎士団の団長にして、聖乙女ジャンヌ・ダルクの生まれ変わり、ジェンヌ・ダノレワですわ~!」


名乗りと共に、背後に控えていた聖乙女騎士団員らしき地味に幸薄そうな女生徒の一人が脚立に昇り、彼女にスポットライトを浴びせ、他数名が手に下げていた籠から花弁をばら撒き、何処からともなく吹いてきた風が程良く花弁を散らしていく。これは……風魔法!?

散った花弁が教室の端に纏められて……ワザマエ!

ビュリホでワンダホなお手並みに見とれていたら、何か勘違いしたのか、


「驚きのあまり、声も出ないようですわね。私達の要求はただ一つですわ。ジャンヌ・ダルクを直ちに返しなさい。今ならまだ」


「ジャンヌちゃ~ん」


「は~い」


「この子、ジャンヌちゃんの生まれ変わりだって言うんだけどさ」


「ほえ~、私、生まれ変わっていたんですねぇ……」


「でも、嘘ですよ、嘘。私、こんな風に胸を大きくする手術なんて受けていませんもん」


ザワッ……

唐突な暴露に騒めくクラスメイトと聖乙女騎士団員達。


「え!?これ、嘘乳?」


「そうですよ、本物はここにあるじゃないですか! (´;ω;`)ウッ…」


「泣かなくてええんやで。オイチャン、ジャンヌちゃんのお胸、嫌いじゃないから」


「マモルさん……」


カーッ、ペッ!と言う音が周りから聞こえた気がするが。


「一寸そこ!人を無視して何イチャついていやがりますの!!!!!」


人を指差さない、フランスではそういうマナーはどうなんだろうか。


「そ、それにこの胸が作り物だとか言い掛かりは!?」


 え~、でも団長の昔の写真ってあんな風じゃなかったよね?


そうそう、ジャンヌ・ダルクの生まれ変わりだって言い始める直前位に急に……


「そこ!おだまり!!!」


「日本国政府が回答した通り、国際法に基づき、冒険者の活動成果物は取得者個人に帰する物だから」


「小難しい事を言っても無駄ですわ!ジャンヌ・ダルクの存在がフランスに帰属する事は歴史上の事実から明らかですわ!」

「とにかく彼女を返しなさい!!!」


「嫌です」


「は?貴方がどこの誰だか知りませんが、これは国家の威信が掛かった」


「ジェンヌ様、ジェンヌ様」


「何ですの!?今私はこの物知らず共に」


「ジャンヌ・ダルクです」

「彼女が、ジャンヌ・ダルクです」


「オ、オホホホホホホホホ。……嘘ですわよね!?」


「いえ、マジです」

「ヤバイですよ、ジェンヌ様」


「オホホホホホホホホホ。今日の所はこれ位にして置いて差し上げますわ~!!!」


ものすごい勢いで冷汗をかきながら、テンプレちっくなセリフを吐いて逃げ出した聖乙女騎士団。


「マモルさん、私、間違ってもあんなのじゃあなかったですから」


「ああ、解っている、解っているさ」


それはともかく外務省(オエライサン)にはチクっておこうと思うのであった。

ある高校生冒険者のAdventurer's Report 転載版

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