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「エピローグ」 星のない夜に
戦いから数日後。
月殿城は人々の手によって修復が始まり、瓦礫の山だった街にも再び笑い声が戻りつつあった。
あなたは市場の外れ、小さな丘に立っていた。
その手には、戦いで砕けた星槍の欠片。
今はもう光らないそれを、静かに胸に抱く。
丘の下から、ラシードの声が響いた。
「おい! こんなとこで黄昏てないで、こっち手伝え!」
彼は相変わらずの笑顔だが、その表情には確かな安堵が宿っている。
リュミエールは孤児院の子どもたちに読み聞かせをしていた。
彼女の声は穏やかで、あの日の戦場の緊張が嘘のようだった。
カイラスは城の防衛計画を見直している。
もう誰かの命令で動くことはない。
彼は自らの意思で、この島を守る剣となったのだ。
夜、港町では灯籠流しが行われた。
戦いで失われた命への祈りと、これからの平和への願いを込め、人々は灯りを海へ流す。
あなたも灯籠を一つ、そっと水面に浮かべた。
月明かりの下、波に揺れる灯籠が遠くへ消えていく。
光はもう星ではない。
けれど、その温もりは確かに、あなたの胸に生きていた。
その時、海の向こうに小さな光が瞬いた。
まるで「次の道が待っている」と告げるように――。
あなたは振り返り、仲間たちを見た。
ラシードが剣を肩に担ぎ、リュミエールが微笑み、カイラスが頷く。
「行こうか。まだ、俺たちの旅は終わっちゃいない」
港を離れる船の帆が、夜風を受けて膨らむ。
空には星はなかったが、甲板の上には、かつてそれを武器に変えた者たちが立っていた。
――そして、新しい物語が始まる。