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<赤奈side>
――私立冬星学院東京校。
数々の有名企業社長のご子息や政治家のご令嬢が通われる、漫画かよってツッコミたくなるくらいの金持ち学院だ。
そんな夢みたいな学校の上澄みの上澄み、生徒会。
これまた漫画みたいだけど顔良し頭良しスポーツ良しのスーパーエリートが君臨している。
え?私はお嬢様なのかって?
残念だけど、私こと夏城赤奈は超ド庶民で、生徒会に勝てるのは握力くらいしかない。
じゃあなんでこんな超金持ち高校にいるのかというと、それは語れば長くなるので後ほど。
「あーあ、私も普通の青春したかった〜」
うちは庶民の中でも貧乏寄りで、弟の学費を貯めるために放課後はバイトをかけもちしている。
登校前にランニングがてら新聞配達、昼休みはこっそり造花の内職、放課後はファミレスのウェイトレス、休みの日は空手教室のバイト。
スポ根漫画みたいにインターハイ目指して一致団結!とか友達と帰り道で買い食いとかカラオケとかしてみたかった……まぁ金持ち校じゃどの道ムリか……。
「今日もバイトか……」
なんてブルーな気分で渡り廊下を歩いているときだった。
「きゃ〜っ、冬星様危ない!」
「へっ?」
女子生徒の悲鳴に目を向けると、男子生徒の頭上に大きな影がぐらついていた。
補修中だった初代学長のガラス像が落ちかけている。
「わっ、わっ、そこの人、危ない!」
――ガシャーン。
思わずとっさに体が反応して、男子生徒の前へと飛び出でる。
反射的に落ちてくる銅像を殴り飛ばし、危なかった男子生徒を突き飛ばし、私はその場にすっ転んだ。
「ったぁ〜……あわぁぁぁぁ!」
幸い転んだのは芝生の上でガラス片も刺さらなかったけど、ガラス像は見事に粉々。
ただのガラスではなく、高級水晶を使った学院の宝である像だ。
水晶玉のようにつるつるだったハゲ頭も見事にひび割れてしまっている。
「大丈夫? 怪我はない?」
意気消沈して芝生に突っ伏している私に手を差し伸べたのは――。
「せ、生徒会長……!」
冬星の天使、奇跡の王子、神の傑作。
とてつもない二つ名を総なめする生徒会長、冬星蒼。
冬星学院理事長の息子にして勉学・スポーツ万能、華道や茶道もこなす超絶爽やかイケメンエリート!
「危ないところだったよ、ありがとう。一応手当をしたいから保健室に行こうか。歩ける?」
「いえ、結構ですっ!見ての通り擦り傷のひとつもありませんから!」
「うちの大事な生徒に何かあったら申し訳がないよ、念の為に行こう」
「ひぇぇ〜」
半ば強引に手を引かれ、保健室へと連れていかれる。
周りの女の子のまなざしが怖いよ………。