テラーノベル
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続きです
窓の外では、神野の夜が嘘だったかのように、夏の終わりの穏やかな陽光が降り注いでいた。
意識が浮上するたびに、全身を駆け巡る鈍い痛みが「生きている」ことを永久に突きつけてくる。
永久 「、、っ、ぁ、」
掠れた吐息がこぼれる。 右腕は肩から指先まで分厚いギプスに固定され、
脇腹には内臓の損傷を抑えるための処置が施されていた。 自由落下による衝撃。
あの時、地面に叩きつけられる瞬間に感じたのは、恐怖よりも
「これでようやく、矛盾した自分を終わらせられる」という妙な諦めだった。
(なのに、、なんで、天井を見てるんだよ)
ゆっくりと視線を動かす。 パイプ椅子に座り、腕を組みながら、鋭い眼光を向けていたのは
幼馴染でも、ましてや見知らぬ看護師でもなかった。
相澤 「、、目覚めたか。意外と早かったな」
担任の相澤消太だった。 相澤はいつも以上に隈が深く、
そのヒーローコスチュームはボロボロになったままだ。彼もまた、
あの凄絶な現場から一睡もせずにここへ駆けつけ、彼女を見守っていたのだと察せられた。
だが、髭はそられていた。
永久 「、せんせ、。なんで、ここに、、勝己は、出久は、、?」
相澤 「爆豪も緑谷も無事だ。轟たちもな。お前が作ったあの『砂じん嵐』と、
捨て身の落下がなければ、全員が無傷で戻れた保証はなかった」
相澤は淡々と事実を述べる。 永久は顔を歪め、視線を逸らした。
永久 「感謝される筋合いはない。私はただ、気に入った連中が
私の目の前で、ヴィランに捕まるのが癪だっただけだ。ヒーロー面して、助けに行ったわけじゃない」
相澤 「そうか。だが、その結果としてお前の体はボロボロだ。
右腕は複雑骨折、内臓にも微細な破裂がある。死んでもおかしくない」
相澤は席を立ち、サイドテーブルに水のペットボトルを置いた。
相澤 「敵愛。お前はヒーローが嫌いだと公言し、強い信念を持つヴィランに惹かれている。
だが、あの夜、お前を最後まで守ろうと足掻いたのは英雄であり、
お前の安否に血相を変えて廊下を走り回っていたのは、あそこの『爆破野郎』だ」
相澤が顎で指したのは、ドアの向こう側、隣の病室だった。
相澤 「爆豪は、お前の手術が終わるまで一歩も動かなかった。
俺が個性を無理やり消して、隣のベッドに放り込むまではな。
お前が何を嫌おうが自由だが、お前のその命が、
どれほどの『熱』に支えられて繋がったのかだけは忘れるな」
永久 「あいつ、本当に馬鹿だ」
永久の声が震える。 ヒーローなんて大嫌いだ。欺瞞に満ち、表面だけを繕う連中が大嫌いだ。
けれど、命を削って自分を守ったオールマイトの背中と、
隣の部も自を案じているであろう幼馴染の存在が、
彼女の冷え切った心に、これまでにない熱を灯していた。
バタン、と静かにドアが閉まる。 一人残された病室で、永久は窓の外を見上げた。
永久 「、、っ、、」
ギプスに隠れた右手が、微かに震える。 彼女の幼馴染は、あまりにも真っ直ぐで、
あまりにも残酷に「ヒーロー」を体現していた。
相澤が部屋を去り、静寂が戻ったのも束の間だった。
隣の病室との仕切り壁を突き破らんばかりの勢いで、ガランッ!と派手な音を立ててドアが跳ね飛ばされる。
爆豪 「おい、クソ永久ァ!! 起きてんだろ、あぁ!?」
顔や腕に痛々しい包帯を巻きながらも、
その眼光だけは神野の戦火よりなお激しく燃え上がらせた爆豪勝己がそこにいた。
怒りで沸騰しているのか、あるいは別の感情によるものか、その顔は耳の付け根まで真っ赤に染まっている。
永久 「、、勝己。うるさい、病室。、、あと、顔ひどいよ」
爆豪 「うっせぇ死ね!! 誰のせいでこんなツラになってると思ってんだクソが!
勝手に落ちやがって! てめぇ、あの時何つった!? どの口が叩いてんだよ!!」
爆豪は、永久のベッド脇まで詰め寄った。
その距離は、互いの呼吸が触れ合うほどに近い。爆豪の瞳には、怒りだけではない、
もっとドロドロとした「恐怖」の残滓が揺れていた。
永久は、包帯に隠れた彼の必死な表情を見つめ、不意に視線を落とす。
永久 「あんたが、ヴィランに連れていかれるの見てられなかっただけ。
私は、自分の意志がない奴が大嫌いだから。あんたは、あそこにいるべき人間じゃない」
爆豪 「分かってんだよそんなことは! 俺が言ってんのは、てめぇが自分を投げ捨てたことだ!!」
爆豪の大きな手が、震えながら永久の無事な方の肩を掴んだ。
爆豪 「俺が、、ヒーローを目指す俺が、幼馴染一人守れねぇで、何がNo.1だ、、!
てめぇをあんな地面に転がして、ヘラヘラ笑ってられると思ってんのかよ!!」
怒声は、最後には悲鳴に近い響きを帯びていた。 永久は、肩に伝わる彼の震えに、
胸の奥が締め付けられるのを感じた。鈍感な彼は気づいていないだろう。
これが、彼女にとってどれほど「残酷な救い」になっているかを。
永久 「、、バカ勝己。ヒーローなんて、やっぱり大嫌いだよ。
お節介で、押し付けがましくて。、、でも」
永久は自由な方の手を伸ばし、爆豪の腕を弱々しく、けれど確かに掴み返した。
永久 「ありがと。助けてくれて」
爆豪 「っ、チッ!! 礼なんか要らねぇんだよクソが!」
爆豪は顔を背けたが、掴まれた腕を振り払うことはしなかった。
夕暮れに近い陽光が、不器用すぎる二人の影を病室の床に長く伸ばしていた。
数日後。 リカバリーガールの個性もあるが、驚異的な回復力を見せた永久の退院の日。
ギプスは外れたものの、まだ右腕にはサポーターが巻かれ、体温調節機能も完全には戻っていない。
それでも、彼女は雄英の寮へと入る準備を整えていた。
永久 「忘れ物、ないよね、、」
誰もいなくなった個室を見回し、最後にサイドテーブルの引き出しを確認する。
そこには、今朝、看護師が「あなた宛てに届いていたわよ」と持ってきた一通の手紙があった。
消印はなく、差出人の名前もない。ただ、裏面には黒い煤のような汚れが付着していた。
永久は無表情に封を切り、中にある無骨な便箋を取り出した。
書かれていたのは、短く、殴り書きのような言葉。
『お嬢へ
神野じゃ、とんだ邪魔が入ったな。 けど、お前のあの「復讐への勧誘」って言葉、
ありゃ、俺たちの側の人間が吐くセリフだ。 ヒーローごっこはもう十分だろ、
永久ちゃん。 まだ勧誘は生きてるぜ。 お前を「道具」じゃなく「意志」として扱う場所は、
青臭い学園じゃなく、俺たちの隣だ。
お前が欲しい。お前といたい、
お前となら分かり合える。お願い、話したいんだ、
ヴィランにはまだならなくていいから、話そうぜ?
〇〇市〇〇区〇〇ビル3階。
〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇〇
またな。5号、6号、7号より。』
読み終えた瞬間、永久の手の中で便箋がパチリと音を立てて凍りついた。 荼毘の低い声が、耳の奥で再生される。
永久 「ほんと、しつこいんだから。ヴィランって連中は」
永久は手紙を握りつぶし、ゴミ箱へと放り込んだ。 けれど、その口元には、
隠しきれない微かな笑みが浮かんでいた。 ヒーローを憎み、ヴィランに惹かれ、
それでも爆豪という「光」を捨てきれない。
永久 「、、勧誘、ね。いつか私が、あんたたちを
冷たい風を纏いながら、彼女は病室を後にした。 その背中は、以前の無気力なものとは違い、
自らの意志で歩む強さを帯びていた。
ガチャ
相澤 「お、、もう準備終わったのか、」
永久 「、、まぁね。早く寮連れてけ、」
相澤 「あぁ、、なぁ」
永久 「あ?」
相澤 「盆休みなんだから親の墓参りぐらい行きなさいよ、」
永久 「、、行くか、、」
相澤 「今貸してる家の荷物は全部寮に移動でいいよな」
永久 「うん、丁寧に扱ってよね、特にゲーム部屋」
相澤 「どうだろうな、お前のテストが悪いから破壊しちゃうかもな」
永久 「おい、」
相澤 「とにかく早く行け、」
永久 「あいあい、、」
永久 「数珠、、、買うか、あと、花と線香、」
はい、どうでしたか~~
3454文字!終わります。
コメント
10件
5号6号7号で笑っちゃった、! 手紙書いたのは荼毘だけじゃないってことかな〜? 誰だろ、、トガちゃん、荼毘、あと1人、、死柄木? 回復力すご〜✨ 相澤先生、やっぱ良い先生だよ。知ってたけど。 永久ちゃん、闇でも光でもないところに引き摺り込んじゃえー!! 続き楽しみに待ってる!!
やっぱ無理よねww まぁ今回も良かったよ!続き楽しみにしとるね〜!
最高によかったです♪ 親と仲直り?できてよかった〜! 続き楽しみです♪