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朝の電車は、いつも同じ匂いがする。
少し湿った空気と、誰かのシャンプーの香り。
私は今日も、ドアの近くに立っていた。
そして、少しだけ視線を上げる。
_いた。
いつもと同じ車両の、いつもと同じ位置。
片耳にイヤホンをつけて、目を伏せている。
名前も知らないのに、毎朝見てしまう人。
(今日もいた)
それだけで少し安心する。
電車が揺れるたび、少しだけ近づく距離に、 胸が高鳴る。
変だよね、こんなの。
私は吊り革を握り直して、また少しだけ、彼を見た。
そのとき。
ふっと、目があった気がした。
気のせい、そう思ったのに。
咄嗟に目を伏せて、おずおずとまた顔を上げる。
視線が交わった。
_いつもより心臓がうるさい気がするのは、気のせいだろうか。
いいや、きっと気のせいだ。
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タカハシ
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