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「APEXのチャンピオンになりました」
そうアナウンスが響く。そうだ。今回俺はチャンピオンだ。そしてキルリーダー。ここまで最高な興奮を手に入れることは無い。
「新記録が達成されました」
あの時と似ている。俺が走る源を1度無くしたあの競技の時と。
「おめでとう。チャンピオン。」
後ろから声がする。今回チームで一緒だった「クリプト」だ。
「相棒!ナイスプレイだったぜ!」
そうやって彼に抱きつく。もう慣れたらしい。彼は一言いい抱き返した。
「グッドゲームだ。お前と一緒に出来たからな。」
少し自分の頬が染まる気がした。何故だろうと思いながら、ドロップシップのラウンジで聞く。
「…なぁ、クリプト。」
「どうした?オクタン。」
パソコンに集中している目をこちらに向ける。話はしっかり聞く良い奴だ。
「お前といるとなんか恥ずかしくなっちまうんだ。なんか分からねぇけどよ。」
「……気のせいじゃないか?」
少し間が開き、彼はそう答える。チラリと見えた彼の頬は少し赤く染まっている気がした。
俺と同じように。
「おーい、クリプト〜オクタン〜」
聞き覚えのある声が耳を通り抜ける。ミラージュだ。
「お〜どうしたんだ?ミラージュ。」
「いや、今日さ、パーティに誘われたんだ。だから、お前らも来ないかな〜ってな。」
パーティ。聞こえはいいが、俺には退屈だったあの場所しか思い浮かばない。
「それはどこだ?少し興味がある。」
クリプトが口を開く。そういうものには興味がないと思っていたから驚いてしまった。
「えーっと、シルバ製薬ってとこの一部を…」
俺はそこの場所を聞いた瞬間、ミラージュの言葉を遮って言い放った。
「俺は行かない!」「俺はいい。」
偶然、クリプトを同じことを言った。興味を示していたのに、行かないのか?
「ええっ!?…ああ、そうか。分かった。他の全員は行くらしいからな。お前らは留守番だぞ。」
「分かった。色々話聞かせてくれよ!」
「もちろんだ〜オクタン!」
そう言ってアネキ達の方に戻っていく。その背中は俺らに断られたせいか、少し寂しそうに見えた。
「俺ら留守番だってよ。…せっかくだ。2人で呑まないか?…な〜んてな…へへ。」
冗談混じりでクリプトに話しかける。クリプトは食い気味に俺に応える。
「いいぞ。俺の部屋で呑むか?」
あっさりと答えられ、頬がまた赤く染まる。俺はこいつにどんな感情を抱いてるんだ?
「あ〜…おう。そうさてもらう。」
俺らにはラウンジっていうマッチ前に集まるところがあるが、別に俺らは部屋を持ってる。そこで各々過ごしてる。
「まずシャワー入ろっと…」
俺が腰をあげると、クリプトも立ち上がる。
「俺もそうしよう。…上がったらそのまま俺の部屋な。」
共にシャワーを浴びるのはよくある事だ。いつもはミラージュもいるが、あそこにいたレジェンド達の姿はない。俺とクリプトだけだ。
ますます頬が赤く染まった気がした。知らない感情が頭を巡る。顔が見えてないかとクリプトの方に目をやると、いつの間にか隣にいた。驚きでゲーミングチェアに思いっきり腰が下がる。
「うおっ!?」
ガタン!と音をたてるイスにクリプトは驚く。
「大丈夫か!?オクタン!」
「ああ、怪我はしてないぜ。」
「驚かせてしまってすまない…」
「大丈夫だ。こっちこそすまん。」
「立てるか?」
こちらに手を伸ばす。俺はその手を掴む。
手を一気に包む優しい温かさ。俺はドキドキしていた。なぜ、なぜ、と思いながら。
「さ、行こうか。」
俺の手を引いて歩き出すクリプトに、俺はかろうじて隣を歩いた。