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俺は、無機質な扉を開けた。
中は真っ白で、何もない部屋だった。
窓から差し込む日光が眩しく、思わず目を閉じる。次に目を開けたら、そこには一つのベッドが見えた。
青空を背景に、茶色い髪が風に揺られ靡く。いつものような白と紫の、あの服ではなく真っ白な、精神患者用の服へと変わってしまっている。
「……ショッピ」
そう呼べば、ショッピはゆっくりとこっちに視線を移した。
我々国幹部、ショッピは今回の戦争の生存者の一人だ。今は精神病棟で治療を受けている。戦争が終わった後、ここへ寄る機会がなかった。ので、ショッピと会うのは約一ヶ月ぶりとなる。
「……」
「久しぶりやね。……元気にしとった?」
そう聞くも、返事が返ってくることはない。
空な目は虚無を見つめて、まるで中身の入っていない抜け殻と話している気分になる。それでも、頬にほんのりついた赤みが人間らしさを唯一感じた。
「……ショッピ、…」
「……鬱、……せんせ…………久しぶりっすね(笑)」
ショッピはそう答えた。俺は驚くも、話はできるらしいので椅子に座りしばらくここにいることにした。
「……調子は…どお?」
「…………良くも悪くも、……って感じっすね、……ただ、少し困っていることがあって……」
「おぉ、なんや。言うてみ?」
ショッピくんは少し困ったような表情をし、俯いた。
「……声が、……聞こえるんです」
「声……?」
ショッピくんは窓の外の、広大に広がる青空と草原を見つめ、言った。
「……名前を、呼ばれるんすよ。……ショッピ、……って…頭おかしなりそうで………大先生、どうすればいいっすか?」
助けを求めるような視線で、俺を見る。
幻聴……か。戦後の人間にはよくある症状だが、……確かに、ショッピは初めての戦争にしてはかなり重いトラウマを負ってしまった。
精神負担が重いショッピくんにできることは、医療的に言えば安静に寝て、精神を安定させる。只、俺個人として言うのなら。
「……ショッピくんは、今後どうしたいって思うん?」
「……できるなら、……俺はもう一度、…みんなとご飯が食べたい……です。………」
そうだよなぁ。
「……そっか。……そうやねぇ」
俺も、できることなら、そうしたいよ。
あのメンバーで、笑って、また一緒に居たいよなぁ。
「……それは、叶わんのや。……もう、もうアイツらはおらん。……だからショッピくん、もう抱えることはせんといて。もう過ぎたこと、ショッピくんがそんなに思い詰める理由はないんよ」
「……っじゃあ!…俺に、どうしろと……っ、目の前で同期殺されて、先輩も俺のせいで死んで、…………思い詰めるなって、無責任っすよ……っ!忘れるわけがないやろ………もう出ていってください、もう居らんといて……。」
「……忘れるな、とは言わんよ。……ショッピが今できること、俺に言わせるんやったら、また前みたいに軍に復帰するだけ。……もう戦えとは言わんよ。軍にいるだけでいいんや、書類仕事はあるかもやけど……殺しは、せんくてもいい。……だから、ショッピくん。そんな自分を追い詰めんといて…。……チーノが泣くで(笑)」
ショッピくんは返事をすることはなく、俺はしばらく粘ったもののもう少しでここへ来て二時間が経とうとしているので俺は大人しく帰ることにした。
ただ、質疑応答ができることから回復が進んでいるのは目に見える。少し安心した。
「はよ、ゾムんとこ戻らなきゃな……(笑)」
オレンジ色の空をバックに、俺は本拠地へ戻った。
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