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途方に暮れ、ふらりふらりと人影一つもない道を歩いていた。


今日はいろいろあった。

中国と痴話喧嘩をしてしまったし、フランスにお菓子を沢山買わされた。

それに日本にも会えていない。



🇺🇸はぁぁ…



正直泣きそうなのは黙っておこう。

泣くなんてダサくて無理だからな。



ーーしかしそう思った俺の決意は、速くも砕けそうになった。

視界に入った人物を見て、情け無く俺の目から涙が溢れてきそうになった。



気付けば俺はそいつに向かって走っていた。

見失う前にそいつに辿り着かないといけない。



🇺🇸日本。



俺はそいつの名前を呼ぶ。


ーピタリ。とそいつは足を止めた。

もう逃がさない。いや…逃げないでくれ。



🇺🇸日本。




俺はもう一度名前を呼ぶ。


ゆっくり、ゆっくりと、俺を振り返ったそいつは何とも言えない、どこか悲しそうな顔をしていた。



ああ、俺は本当に日本に申し訳ないで済む話じゃない事をしたな。


日本のその顔を見てズキリと胸が軋む。


俺は日本の笑顔が好きだってのに。



俺は一歩、また一歩と日本に近づく。



そんな近づいてくる俺に、日本は目を泳がしている。



…うん、今からでも俺から離れたいよな。

でも無理だ。それはもう出来ない。




俺は日本に近づき、ギュッと強く抱きしめた。

日本はビクリと肩を振るわす。


そんな日本からフワッとロシアの匂いがしたのは何故だろうか。



🇺🇸すまない…日本。本当に…謝って済む話じゃねぇけど…


俺は日本の肩に顔を埋めながらそう言った。

そんな俺の目からは、我慢が出来ずに止めどなく涙が溢れている。


日本は何も答えない。

ただ、微かに呼吸音が聞こえる。



🇺🇸なぁ…何か言ってくれ…じゃないと俺、もう辛すぎるって…



言い訳にしか聞こえない事を俺は口にした。

馬鹿か俺。一番辛いのは日本だってのに。



🇯🇵…



逃げたかった。

けれど、逃げれなかった。足が動かなかったから。

きっとそれは小さいけれど、アメリカさんにまだ希望を抱いていたからかもしれない。


ふと、私の片方の肩が濡れている事に気づく。

…アメリカさん、もしかして泣いているんですか?


何ですかそれ。私だって泣きたい。貴方よりずっと…けれどやっぱり泣けないのは生きすぎたせいだ。


私はゆっくりとアメリカさんの背中に腕を回し、優しく背中をさする。



🇯🇵大丈夫〜大丈夫ですよ。とりあえず泣き止んで。


私は赤子をあやす感じでそう言った。



🇺🇸嫌だ。俺はお前の本音を聞くまで泣き止まない。



ガバッと、アメリカさんが顔を起こしてそうハッキリとした口調で答えた。

頬には涙がつたっている。



🇺🇸お願いだ日本。お願いだから、本音を伝えてくれ…今まで我慢させた分全部…



最後は声が小さく懇願するように、消える様に言われた。



子供のお願い。




私はここでもアメリカさんを子供のように見てしまった。



本当は遠慮して何も言わずに立ち去ろうと決めていた。

でも…でも『もしも』と言う希望を抱く感情に駆られ、私は怒るようにアメリカさんに言った。



🇯🇵私は…!ずっと、我慢をしていたんですよ…!貴方が私との約束を破ったりしても、構ってくれなくても。ずっとずっと!仕方ない話だって…!


気付けば私も泣いていた。

アメリカさん程ではないけれど、一滴一滴、あついものが頬をつたっているのが分かる。


そんな私を、アメリカさんはもう一度抱きしめる。


アメリカさんは小さく何度も頷いていた。




🇺🇸お前を泣かせるなんて、俺は本当に馬鹿野郎だ…。












🇺🇸…なぁ、図々しい話かもしれねぇけど。



暫く経って互いに落ち着きを取り戻した頃、アメリカさんがポツリと口を開いた。



🇺🇸俺さ、今度こそお前と幸せに生きたい。これからはお前と絶対にいる。お前に今度こそ辛い思いをさせない…だからチャンスをくれ。



アメリカさんは優しく私の手をとる。







🇺🇸俺と付き合ってください。





真っ直ぐと私の目を見つめ、手をギュッと強く握られる。

その目は不覚にも本当の事を言っているように見えた。




🇯🇵…





良いだろうか?もう一度。

もう一度この言葉に任せても。


私もアメリカさんの事がまだ好きだ。

だから…この言葉をもうだけ信じてみたい。





🇯🇵はい。






私はアメリカさんの手を握り返した。














🇷🇺…まあ、何か思っていた感じの流れじゃなかったが、元に戻れたのなら安心だ。

🇯🇵はい、私自身もこうなるとは思わなかったです。


私がそう言うと、ロシアさんは呆れたように、でも良かったなと笑ってくれた。



今日は週末。

私はロシアさんといつものお店に来ていた。




🇷🇺いや…にしても驚いたぞ。あの日家に帰って来たらアメリカまでいたからな。しかも凄く睨んできたし。

🇯🇵あー…あはは…。






そんな話をしているとプルル…と、着信音が鳴る。






🇯🇵あ…。

🇷🇺出てやれ。



私はロシアさんに促されるまま、スマホを耳に近づける。





(よ、日本!これから一緒にデートしないか?俺〇〇の所にいるからさ!)





そこからは私の恋人の元気な声が聞こえて来た。





私はロシアさんの方を見やる。

ロシアさんは行ってやれとクィッと首を横に振る。





🇯🇵はい!





私はガタッと立ち上がり、ロシアさんに礼を言ってお店を出た。





🇷🇺…あれはもう大丈夫だな。










空を見上げれば雲一つない晴天。


それはまるで、一度切れた繋がりがもう一度繋がった事を祝福してくれているように思えた。








『終』

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