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買い物を終えて外に出ると、夜風が頬をなでた。
袋を片手に持った悠真の歩幅に、咲は自然と合わせる。
「……重くないですか?」
思わず声をかけると、悠真は横目で笑った。
「大丈夫。妹ちゃんは、手ぶらでいいんだよ」
その言い方に胸が熱くなる。
だけど、心のどこかで「妹として扱われてるだけ」とも思ってしまう。
――裾を掴んだあの瞬間。
悠真が一瞬黙り込んだ顔を、咲は思い出していた。
***
悠真もまた、横を歩く咲をちらりと見やった。
(……あんな顔、いつからするようになったんだろ)
ただの「妹ちゃん」だと思っていたはずなのに。
今はどうしても、その枠に収めきれなくなっている自分に気づいていた。