《ky視点》
もしも、寿命の時間と引き換えに願いを1つ叶えると言われたら貴方は何を望む?
俺は、もし寿命が60年だとして、その半分の30年を代償にもう半分の30年を”彼”と 両想いで過ごしたい。
実際、俺はそう願った。
そして、それは実際に叶った。
俺は、彼とすぐに幸せな生活を送った。
彼とは毎日笑って、食って、寝てを繰り返す日々で、楽しいもの。
そして、毎日一緒に居られる素敵な日々だ。
彼の知らなかった一面や、俺のことを知ってくれた期間。
俺は順風満帆過ぎる生活を送った。
けれど、たまに俺の頭は彼の心理が支配した。
彼は、俺の身勝手でこんな心を持っていて、こんな日常を送っている。
本当に俺のことを想っているわけではない。と何度も思った。
彼は自分の意思のつもりでも、実際はそうではない。
そう、実際には…
以前とは異なる考えで生きている。つまり、彼は記憶がほぼないのではないか。
その考えがずっとつきまとって、思考から逃げてくれない。
はぁ…と1つ溜め息を漏らす。
本当はしたいことだとか、色々あっただろうに… 俺のせいで30年、俺の恋人として拘束してしまう。
本来なら、有意義に寿命を使えたのだろうな。
そして、再度、 思い残しもなくあの世へ行ける……。
なんなら、もうとっくにしたいことなど済んでいたのかもしれない。
けれどもう、思い残しのない状態で果てることはできない。
俺のせいで生き返ってしまったのだから…
彼は、願いを叶える時にはもうこの世で息をしていなかった。
会話もできず、目を合わせることさえできなかった。
俺は彼をずっと好きでいた。
夢まで見て想い続けていた彼と俺はお別れするのはどうしても耐えられなかった。
だから、たまたま居たという訳のわからぬ者にもすがって彼の命を延ばして、俺と同じ時を過ごせるよう、叶えてもらった。
だから彼は蘇った。
この状態のままで…
彼は今、俺の家で楽しそうにYouTubeを観ている。
そんな姿を横目に愛おしさと儚さを感じて後悔を心に滞在させていた。
この生活を望んだはずなのに、俺は…
お前のことを俺の手で幸せにしたいと思っていたのに…
これでは、ただのエゴイストだ。
……まぁ、最初からそうだったのかもしれないけど
俺はこんなにもバカだったんだ。
彼は1度○んだ人間だ。
だから俺が知る前の友達や、家族、その他諸々の人達と会わせることはできない。
勿論、gcさんや、rtさん達もそうだ。
会わせるとなると彼が○んだ事実と、以前の記憶も戻ってしまう畏れがある。
こんな時までも彼のためではなく、俺の為の選択を取った。
もし、会ったとしても、彼らは俺を何か攻めて苦しい顔をするのだろうけど。
表情に出ていたのか彼が俺に視線を向けたと思うと心配の声をかけてきた。
困らせぬように笑顔で返事を返すが、腑に落ちない表情で収まってしまう。
何でもない…なんて、嘘だとあからさまであるのにそれ以上の返しができなかった。
ピ~ンポーン!
その時、玄関から音がする。
俺は彼から離れて部屋に居るよう伝えてドアを開けに向かった。
ky「は~い…」
言及から逃げられてよかったと内心ホッとしながらドアを開ける。
目の前にはgcさんが立っていた。
俺は驚いて少し後退りすると
gc『なぁ…キヨ……』
俺の目をまっすぐ見て
gc『今日帰りの足なくて送るか泊めてくれない?』
機嫌がよさそうな顔で罰が悪そうな声色で言った。
ky「いや、無理だよ」「rtさんにでも泊めてもらえば…」
rt『俺も逃して帰れなくなっちゃったから泊めてくれない?』
gcさんの後ろからヒョコッとrtさんが顔を見せた。
渋る俺だが、帰す言い訳が見つからない。
usに会わせるわけにはいかないから早く帰って欲しいのにどうすればいいか分からなかった。
ただ帰れとだけ声を出す。
rt『てか、最近キヨくん付き合い悪くない?』『今日もだけど、前は泊めてくれたのに…』
何か隠し事があるんだろとばかりの視線が2人から送られる。
グサグサと鋭い視線が刺さり、 焦る俺は目が泳いでしまった。
見破られて、2人は帰ってくれない。
言い合いの末、折れたのは…
us『キヨ、もう話し終わった?』
gc・rt『『ん?うっしーの声…?』』
終わった…
彼らに声を聞かせてしまった。
冷や汗をダラダラと流して絶望を感じた。
これ以上、彼らに言い訳できる道筋はない。
取り敢えず、彼らが通れないようにドアを塞いでいた俺は、2人の手によって端に流されてしまう。
勝手に入っていく2人。
汗をからだ中に流しながら止める言葉をかける。
追ってリビングに入ると2人はusに抱きついていた。
正確には、rtが抱きついて、gcさんは後ろで涙を流していた。
状況が読み込めず、困惑しながらポンポンとrtの背中を叩くus。
usは俺と視線が合うと助けを求めるように眉を潜めて言葉を投げてきた。
はぁ…もう、これまでか……
でも、これが正しい結末なのかな……
思い残しがないといえば嘘だが、今までを思うと十分すぎる時間を貰えた。
俺は脆い覚悟を決めて、彼に全てを話した。
勿論、2人に対しての説明も含めて。
話を終えると、3人とも、ポカンとした顔で俺の顔を見てきた。
こうなるのも無理のない話だと、俺は1人顔を歪ませて、硬い顔をした。
3人と視線を合わせることが辛くて体ごと反対を向く。
誰か、何か罵倒をするのなら早く済ませてほしい。
この空気が嫌いで、この場から逃げ出したい気持ちが溢れる。
余りに長い時間で、手や、口から血が流れそうなほど力をいれて耐えていた。
その俺の背中を誰かがぎゅっ…と抱き締めた。
よく聞きなれたあの低音が俺に話しかける。
『なんで生き返らせたの…!』
…っ…だよな……
『…って怒りたかったところだけど、ありがとう』
勢いのあった声が柔らかな声色へと変わる。
それから語られる感謝の言葉。
それらは俺の感情に深く入り込み、涙を誘惑する。
gc『俺、知らなかった…kyがusのことすきだって…』
gcさん、rtと続いて言葉をかけられる。
rt『ほんまに、何してんねん!』『usやって元々望んどらんかったんやぞ!?』
rtさんは怒った声で不機嫌に言葉を鋭く投げてくる。
usは止めに入ったが、gcさんはまあまあと逆にusを止めていた。
rt『ほんまに…っ…居なくなって悲しなるんはusだけじゃないからな!?』『お前が居なくなったって……っ!』『アホ!バカ!クソヤロウ!!kyくんなんか嫌いになってやるんやから!』
涙を顔いっぱいに溢れさせながら俺の背中をポカポカ殴ってくるrt。
彼の俺の心を察した故の暴言、涙、行動にまたボロボロ溢れ出て声を出して泣き始めた。
合唱が起こるように2人からも嗚咽が聞こえてくる。
スッと心の全てが解き放たれたように白くなった気がした。
散々泣いて落ち着いたころ、目元が赤く腫れた状態で顔を見合わせる。
usは笑顔で見てくれて、
残りの寿命も共に生きてくれると言ってくれる。
ky「ほんと”に…っ…い”い”のッ?」
ガラガラの声が出た。
usはギュッと俺に抱きついてきてくれる。
この行動で俺の心はまたギュンッと暖かさに包まれて枯れたはずの涙が溢れた。
それから、たまに4人で遊んだりして以前のように共に過ごすことができるようになった。
もう会うことのできていない人達も居るが、彼は今の生活に満足してくれていた。
自分の悩みが負荷をかけなくなって、少し晴れた心持ちで過ごせている。
彼が受け入れてくれてよかった。
2人もそのままの関係を維持してくれて感謝してもしきれない。
後残りの30年、俺にできる精一杯を捧げよう。
彼らに悔いを残させないために。
《us視点》
ある日、目を覚ましたら俺の家ではなかった。見慣れぬ間取りに、壁。何処も覚えがなくて困惑した。
そこへkyが入って来て、俺と目が合うと嬉しそうな顔で上ずった声色の話しかけをしてきた。
どうやら俺は生き返ったらしかった。
俺は生前…と言えばいいのか、蘇る前は平凡な生活をしていたのを覚えている。
仕事という仕事ではない職に就き、不安定な収入で生活はしていたが、大好きな動物と触れあい、好きなゲームができる生活だった。
友達とも活動して、楽しくゲームをしていた。
この目の前のkyもその内の1人。
そして、俺がずっと想っている人だった。
俺より先を行く若い彼がYouTuberになる前から気になっていて恋心で見ている人だ。
そんな彼がなぜこの部屋に居るのだろう。
様子を伺うように彼を見ていると、照れたように笑って困った声を出した。
体調や機嫌などが聞かれる。
何故こんなことを質問されるのか理解できなかったが、全て良いと答える。
俺は今の状況が理解したくてkyに逆に質問をする。
彼は一瞬迷った素振りをしたが、付き合っている。と言った。
そして、同棲しているらしかった。
ここは、夢の中なのだろうか。
それとも天国での幻想なのか。
あまりに記憶との齟齬がありすぎて現実味がなかった。
だから取り敢えず夢だと仮定して、彼との生活を十分噛み締めよう。そう思った。
その日から彼と不自由なく生活を送ることができた。
家の外へ出たり、チャイムに出ることはできなかったが、それも夢の保護の為なのだろうと勝手に解釈して楽しい日々を送った。
ある日、kyが重い空気を出していることに気づいた。
迷わず尋ねるも、何でもない。と何かある時の返しをされてしまった。
更に尋ねたかったが、その表情とチャイムによって阻まれてしまった。
部屋で待機をして、彼が呼びに来るのを待つ。
どれほど経ったのだろう。時間もわからないが、あまりに長かったので我慢できずに飛び出すと…
kyの焦った声と誰かの声が聞こえた。
誰かはドタドタと家に上がってきて、こちらに向かってきているのが分かる。
そこへ現れたのはrtとgcさんだった。
2人とも目を見開いて一瞬固まったが、すぐにrtが抱きついてきた。
よくわからない状況に困惑して身動きがとれなくなる。
後からkyが入ってきて目が合うとどうなっているのかと説明を求めて、助けてと要求する。
けれど、kyは焦った顔を重い表情に変えて意を決したような目をした。
眉は上がり、見つめる瞳も鋭くなっている。
【省略】※ポカンまで
説明を受けて、現実だと知らされたが 割とショックは受けておらず、寧ろ内心喜んでいた。
彼がずっと誰か想い人がいることは知っていた。だからこそ、俺ではないと悟って目を背けるように耐えてきた。
それが俺であったなんてとても喜ばしいことこの上ない。
俺は笑顔で彼を見つめて、力を込める彼の背後で抱き締めた。
ビクッと肩を揺らして困惑する彼の声が漏れる。
俺は思うままに全てを伝えた。
彼の顔が見えない以上、推察でしか感情を読み取れなかったが、悪い気がしていないのは確かだった。
更に頬が光ったのが見えて、その後にgcrtの言葉が続く。
泣き終えて、皆と目が合うと先ほどまでの重い空気はそれほど感じなかった。
涙で埋め尽くした彼の目は赤く染まって先ほどのような鋭さはなく、丸く見える。
そんな彼が愛おしくて、 俺は再度彼の懐に入り込み、抱き締める。
彼の温もりと、心音の心地よさを感じながら感情を素直に伝える。
また涙を伝わせる彼の涙を拭いて、是の答えを返す。
また返される彼の言葉に心がホワンと暖まって、 2人も暖かい言葉をくれたことで更に心が温もりで埋まっていった。
また4人向き合って笑い合うと以前のように、遊ぶ仲へと戻る。
止まったはずの涙が込み上げてくる。
あぁ…この空気も好きだ。
俺の全てに彼や彼らの存在は大きいのだと実感してしまう。
ぐっと震える声を堪え、 皆と声で会話をした。
後残り30年を悔いを残さず、今まで以上に有意義に送ろう。そう、心に誓って
くしゃくしゃの顔で彼らと笑い合いあった。
ー天界ー
神🍁「あぁ…おつかれさんどうだった?今日の視察?」
神🍀「今日は、1人蘇らせてきたよ」「両想いとして生き返らせてほしいって頼まれたけど、もう両想いだった」
神🍁「なのに頼んだのか?変な人間だな…駄賃は?」
神🍀「30年」
神🍁「そんなに!?すげぇな……」
神🍀「残り30年で何が楽しいのかね」
神🍁「まぁ、貰えただけいいだろ、今宵は宴だぜ、早く集会に行こう」
神🍀「そうだな」
コメント
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最後の天界とか要らないんじゃないかと最後まで迷ってた。 文章力的にはつけたほうが理解してもらえるのかな…dotchigaiitomou?