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ある日────…
この日は大学が二限で終わり、丁度太齋さんから、今日店来れる?という連絡があり、俺は喜び勇んで太齋さんの元へと向かった。
「いらっしゃい……っあ、ひろくん!今大学終わったとこ?」
「はい、今日は二限だけだったので!それより今日はどうしたんですか?」
「バレンタインもうすぐじゃん?それでちょっとひろくんに相談したいことがあってね」
「バレンタインですか…」
「まあまあ、取り敢えず座りなよ」
店に着いて早々、太齋さんが話を始めた。
「去年はBLでしたけど、今年はまたなにかイベントやるんですか?」
「んー、ひろくんにえっちな格好させたかったけど、さすがに今年は却下かな」
「いやそんなの何がなんでも却下ですよ?恋人になにやらせようとしてんですか全く…」
「冗談だって~こんな可愛い恋人他のヤツに見せるわけないじゃん?」
太齋さんは俺の耳を舐めながらいきなり抱きしめてきた。
「ちょっ、太齋さん!ここ店ですよ……!」
「え~?いいじゃん別に。二人だけなんだし…」
そうこうしているうちに、太齋さんの手は僕の服の中に入ってきたので
その手を軽く捻る。
「痛てて……も、もー分かったって…ひろくんのケチ」
「き、昨日の今日なんですから、我慢してくださいよ」
「えっ、昨日あんなに気持ちよさそうな顔してくれたのに…?」
「大学いたとき、下がうずうずしちゃって大変だったんですよ……っ」
「…ねえ、まさか抜いてきた?」
「…っ、と、トイレで…少し」
「はは、だからさっき入ってきたとき少し耳赤かったんだ?」
「な…っ、そ、そうですよ!もう……太齋さんのせいです」
「ひろくん、俺のせいでそんなえっちになっちゃったんだ?ふふ……嬉し」
「もう…っ、太齋さんなんか知りません」
「あ~ごめんごめん、つい可愛くてさ」
そう言って太齋さんに軽く頭をポンポンっとされた。
「あとさ、ひろくん?」
「なんですか…?」
「ひろくんって未だに俺のこと上の名前で呼ぶよね?」
「えっ?あー、そういえば……」
「でもえっちのときに一回だけ下の名前呼んでたじゃん?」
「えっ…?全然言った覚えないですけど…」
「絶対言ってたって、腰ガクガクさせながらさ」
「そ、そういうことあんま言わないでください…恥ずかしい、から」
「ふふ、可愛い。」
「でも…考えてみれば、途中から上の名前で呼び始めたよね、小中学生ぐらいまでは下の名前で君付けで呼んでくれてたじゃん?」
「いや、なんかそれは大人っぽさに圧倒されてっていうか…?」
「なによりショコラティエとしての太齋敦ってのもありましたから、自然的に?」
「ふーん。でもそれならもう下の名前で呼んでよ。恋人なわけだし」
「っ、そ、そんな急に言われても……」
「ほら、ひろくん早く」
「…しゅん、さん?いや、しゅんくん…??うーん……」
「なんでもいいよ?」
「敦……は、さすがにダメですかね」
「……っ、ひろくん、いい、それめっちゃクる」
「へ?」
「ね、もーいっかい呼んで」
「しゅん…?」
「うん……っ、いいね」
太齋さんは嬉しそうに微笑んで俺の頭を撫でてきた。
なんか子ども扱いされてる気がするな……。
「やっぱ、しゅんくんで」
「ええ、恥ずかしがってる?」
「なんか気恥しいので…今はこれで勘弁してください…っ」
「ふふ、りょーかい。まあ、呼び方はこれで解決として」
「はい?」
「実は今年のバレンタインは店の公式Twitterでどんなイベント開いて欲しいかの募集かけてんだよね。」
「それで今来てるのがこれなんだけど…」
そう言って太齋さんはズボンのポケットからスマホを取りだして
それを操作しTwitterの画面を見せてくれた。
『今年またバレンタインの日にイベントを開催しようと思い、公式アカウントで募集をかけます!!素敵なリクエストお待ちしてます♡#バレンタインデー#チョコレート』と書かれているツイート
「……ってえ?」
そのツイートのリプライを見ると
「店長の太齋さんとデートがしたいです」
「しゅんくん独占権!」
「しゅん様にチョコレート渡すのはアリですか?!」
なんて明らかに太齋さん目当てのリクエストで溢れていた。
「独占権とか絶対だめです…!!」
思い切ってそう発すると
「分かってるって、する気ないよ」と微笑む
「な、ならいいんですけど…っ」
正直、セフレさんのことがあってから太齋さんに対する独占欲が強くなってしまって
太齋さんが僕以外の人とそういうことをするのは絶対嫌だとまで思うようになっていたのだ。
「で、ひろくん。そんな感じで今のところいいのが思いつかなくてさ、なにかアイデアないかな?」
「うーん…」
そう聞かれ、僕は少し考え込んだあと、
「じゃあ、カップル限定に店頭でしか手に入らない特別な特典を用意する…とかどうですか?」
と提案した。
「特別な特典?」
「はい。例えばカップルで来店した人に前に太齋さ…じゃなくて、しゅん、くんが用意してくれたチョコレートオイルを自家製で作って、それを来場者特典みたいにするとか……難しいですかね?」
「いや、大丈夫だよ。むしろ凄くいいアイデアだと思う」
「ほんとですか?よかった……っ」
「うん。ひろくんありがと、さすがだよ!」
そう言って太齋さんは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「えへへ……」
こんな僕でも役に立てたことが嬉しくてつい頬が緩む。
「うちはBLイベントもやったぐらいだし、レズカップルもゲイカップルもOKってことで!」
「それめちゃくちゃいいと思います!色んな人が来てくれそうですね…!」
すると、太齋さんは早速スマホを操作して
当日の予定や特典についての詳細をまとめてツイートし始めた。
「これでよしっと」
太齋さんはそのツイートがTLに流れたのを確認してからスマホをズボンのポケットにしまった。
「まあ、それはそれとして…バレンタインに向けて新作のチョコ作りたいから、またひろくんに味見係として手伝って欲しいんだよね」
「あっはい!いいですけど…前みたいな口移しとか絶対辞めてくださいね?」
なんて釘を打つけれど、太齋さんは
「えー?それを楽しみにしてたのに」
と口を尖らせる。
「ど、どんだけ欲求不満なんですか…っ」
「別にそういうんじゃないよ、ただひろくんとキスしたいだけだし?」
「とっ…とにかく!普通に味見させてください」
「そんなにイヤ?口移し」
「イヤ…ってわけじゃないけど、上手すぎて…変な気分になっちゃいそうで……」
「変な気分って?」
「そっ、それは……言わないとダメですか……?」
「うん。教えて」
太齋さんは僕の目をじっと見つめてそう聞いてくるので仕方なく口を開いた。
「え、っと……その……えっちな気分になるっていうか……」
「……へぇ?ひろくん俺とのキスでそんな気持ちになっちゃうんだ?」
「う……っ、だ、だって……!あんな気持ちいいキスされたら誰だってなるでしょ……!」
そう言ったあとに、僕は思い出したように一人呟いた。
「はっ!それで思い出しましたけどセフレいたぐらいだしそりゃ上手くて当然なのか……っ?だからあの女の人も2股してまで…!」
「いやなんで今更?」
「今更っていうか、あのときも内心色々思ってたんですよ?」
腰に手をあて、拗ねたフリをする僕を見て
太齋さんは苦笑しながら「色々って?聞かせてよ」と言ってくる。
そんなイケ面に不服に思って
全部素直に話してからかってみようと考えて口を開いた。
「しゅんくんと最後までシた人なんだな~とか」
「しゅんくんのモノを舐めて扱って」
「えっ、ちょひろく」
「えっちなキスもたくさんされて」
「何回戦ぐらいしたんだろ?とか」
「ち、ちょっとストップ!!も、もういいから…!」
僕がそう言うと太齋さんは慌ててそれを止めてきた。
「しゅんくんが聞かせてって言ったのに?」
「わかったからもうやめて、ね??」
珍しく慌てる太齋さんに僕はますます面白くなってしまって
「しゅんくんが恥ずかしがってる…レアすぎる」
と挑発的に言ってみた。
すると太齋さんはバツが悪そうに
「恥ずいし、後ろめたいってか…」
「わっ、案外ピュアボーイ」
「ピュアボーイってなにさ」
少し笑ってから太齋さんは続けた。
「……にしてもひろくん全然何も言って来ないから、てっきり気にしてないのかと思ってた」
「いや、正直ものすごく嫉妬はしてましたよ?でも…しゅんくんはちゃんと僕が不安にならないようにしてくれて、その……っ、ちゃんと僕だけを見てくれてるのが伝わってきてたから」
「だから、不安になる必要ないなって安心できたので」と僕は続けた。
そう僕が言うと太齋さんは少し驚いたような顔をしていた。
そしてすぐに優しく微笑んで僕の頭をそっと撫でてくれた。
「そっか…ひろくん、ありがとね。でも…あのときは一時的にでも不安な気持ちにさせてごめんね」
「いえ、僕が勝手に嫉妬して不安になってただけなんで……」
「いや、それでもだよ。俺はさ、ひろくんが思ってる以上にひろくんの事好きだからさ」
「っ、そ、そうですか……っ?」
太齋さんのストレートな言葉に思わず照れる。
すると太齋さんはそんな僕を見て微笑んだあと
「それでまぁ、もっとひろくんとえっちなことしたいな~って」
「いや、言っときますけどしばらくセックス禁止ですから」
「えっごめん、体そんなつらい?」
「そ、そうじゃないですけど……しゅんくんは、元々ノンケなんだし…僕の体見てどう思ったのかなとか、今更考えちゃって」
「もう、ひろくん……っ」
太齋さんはそう呟くと僕を引き寄せて抱きしめたあと、耳元で
「俺はひろくんの全部が好きなんだよ。性格もすぐ反応する体も…だから安心して?」
と囁いた。
その声と吐息がくすぐったくて僕は思わず身震いする。
そして太齋さんの背中に腕を回した。
「っ、はい…でも、慣れるまでは週2とかにしてほしいなって…」
「さすがに毎日はしないよ?」
「あ、ああ…あと……っ」
「なに?」
太齋さんは僕の頬に手を当てながら優しい声で聞いてくる。
「その、えっと……」
「うん」
「……また、SMプレイしたい、です……っ」
僕が勇気をだしてそう言うと、太齋さんは少し驚いた顔をしたあとに「もちろんだよ」と言って微笑んでくれた。
こうして結局またSMプレイの約束をしてしまってるあたり
僕はやっぱりMなのかもしれない。
いや、それは太齋さんがいけないんだ
だってあんなえっちなことされたら誰だってドMになっちゃうでしょ……!
なんて心の中で言い訳していると
太齋さんはそんな僕の心を見透かすように
「ひろってほんと…」と囁いてから軽くキスをしてきた。