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エースside
あれから、俺なりに精一杯考えた。
寺家を気にかけろと言われたからじゃない、寺家くんの為やない。俺、俺のため。
俺がしんどいから。頭の中が寺家くんばっかて、イライラしてモヤモヤしてどうしようもない。
スッキリしたいから、寺家くんを飯に誘い出した。
「あれ…」
「店、閉まってるやん。」
個室がある行きつけの店は臨時休業だった。
怯えた目をした寺家くんを、頑張って連れ出した結果がこれや。
「違うとこ行く?」
「え、ああ、でも週末やから何処も混んでますね。」
「やな」
「どっか探します…」
寺家くんの気持ちが冷めない内に、俺は急いでスマホの画面を開く。
「なぁ、角、あそこ行かへん?」
「へ?」
寺家くんの指が示す方向を見れば、そこにはどこか懐かしさを感じるネオンの光。少し古びたラブホテルが建っている。
「え、何言って…」
寺家くんの心が読めなくて、俺はただ狼狽える。
「角、知ってたんやろ?」
「寺家くん?」
「俺がお偉いさんや先輩と寝てるって。」
「俺は…」
知らんよ、そんなん。
だって、信じたくなかった、そんなこと。
信じてたのに、なんで本人から聞かされなあかんねん。
「軽蔑してる?」
「そりゃ、しますよ。」
「お前はほんま正直やなぁ。」
「俺と寝たいんすか?」
「うん」
「なんで?俺と寝たって仕事増えませんよ。」
頭に血が上って、つい突き放すような言い方をしてしまう。
「俺なぁ、好きやってん。」
「は…」
「角のこと、好きやねん。」
この人は 何を言っているのだろうか。
今、好きって言った?俺を?
「え、な、」
パニックになっている俺に、寺家くんはまるで他人事のように笑っている。
「まぁ、忘れて、今のことは。」
「…」
「色んなヤツに抱かれたからさぁ、汚れすぎたかなって、心も身体も。」
「なんでそんな、」
なんでそんなこと言うんですか。寺家くんは、出会った頃からずっと綺麗なままですよ。
そう言いたかったのに、言葉が出てこない。
「…やから、お前に抱かれたら、帳消しになるかなって。今までのこと。」
「なるわけないでしょ。」
「そやなぁ。」
俯いた寺家くんは、どこか寂しそうで、疲れたようにも見える。
その姿に、なぜかたまらなく劣情を覚えた。
「俺が寺家くんを抱いたら、もう今までみたいなこと辞めてくれますか?」
「…え?」
「他のやつらに、自分を売るようなマネしませんか?」
最初に誘ってきたのは寺家くんなのに、大きな目で何度も瞬きをして、信じられないとでも言う表情でこちらを見ている。
寺家くん、俺ら、もう後戻りなんて出来ませんよ。